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LOVE SONG (何気ない恋の歌)  作者: 池端竜之介
7/8

卒業

 3月に珍しく、雪が降っていた。

薄っすらと、校庭に積もっていた。

梅の花は、すでに散っていた。


雄輝は、制服のボタンを外した。

今日で、もう着ることはなかった。

もっとも、もう着たくもなかった。

ただ、自宅の近くにあった高校だから、進学したにすぎなかった。

どんな、3年間を過ごしてきたんだろう。

いまとなっては、あまり思いだしたくもない。


ときどき、ライプして、曲を作っていた。

そんな、思い出と一緒に、裕子との思いもあふれてきた。


年上の女性を好きになってはいけないのか?

中学生は、恋をしてはいけないのか。

大人たちの思惑と、超えてはいけない一線を越えたことで、裕子は雄輝から離れっていった。


あの時の雄輝に、それを理解しろといっても無理だったろう。


校門を出ると、下級生が待ち構えていた。

手紙をいくつか受け取ったが、読むことはないと思う。


雄輝は、自宅に戻ると、ギターケースを持って外に出た。

今日は、いくつかのバンドと一緒に卒業ライブの予定だった。


会場につくと、佐々木はすでに来ていた。

ヘルプで、ドラムとベースとキイボードの子が来ていた。

YAMAHADX7のシンセの設定している女の子が顔を上げた。

静香だった。

静香は手を上げた。

雄輝は、


「ごめんな、忙しいときに」


といった。


 「ううん、私もここを離れるし、たぶん帰ってくることはないと思うから丁度いいわ」


と静香は明るくいって、ドラムのシンバルの位置を調整している男性を向いた。


その男性は、憲幸だった。

憲幸は照れたように下を向いて、スティックを握ってタムタムの叩いた。


佐々木が、


「いくか、そろそろ」


といった。


前座のビートの聞いた、ベースラインが鳴り響ていた。


雄輝は、ギターをケースから出して、軽く調弦した。

今日は、ミディアムの弦を張っていた。

ピックもミディアムだ。

シルバーの弦が光っていた。


舞台のライトが消されて、雄輝たちは楽器のセッティングを素早くした。

会場には、案の定学生たちであふれていた。

何人かは、見知ったやつだ。


設定を終わると、ドラムのステックがカウントを刻んだ。

佐々木のディストーションの聞いた演奏が始まった。

追いかけるように、ストリングス系のシンセがメロディーラインを刻んだ。

雄輝はギターネックでコードを握りなおすと、8ビートのストロークをピックではじいた。


観客から声が上がった。

オープニングには、ふさわして軽快な曲だ。

つかみは上々だった。


続いて、ミディアムテンポのカバー曲で会場は盛り上がっていた。

最近のヒット曲だ。

たぶん、今の雄輝たちしか歌えない曲だ。


曲が終わって、いよいよラストになった。

佐々木が、


「今日は、みんな来てくれてありがとう、最後にオリジナルの曲で終わりたいと思います」


といって、雄輝の肩を叩いた。

雄輝は、ギターカボをはめた。


軽くCのコードをストロークをした。

電子ビアノの柔らかい音がコード進行をしている。

ギターのデレイの効いたメロディーラインが流れていく。


雄輝は、マイクに向かって語り掛けるように声を出した。



 

  一人の人が幸せにできるのが、一人だけだとしたら


  僕は、迷わずに君を選ぶ


  変わらない気持ちはないと知ってはいるけれども


  それでも、信じていたい


  誰もが、楽な生き方を選らんで進むのだとしたら


  あえて、逆に生きよう



  何かをするために生きているのだとしたら、それを探すことが大切だと

  

  僕は信じて生きていきたい。


  諦めていくことで、大人になるのだとしたら

  

  したり顔で、語る大人にはなりたくない


  たとえ負けても、そこから逃げない人でありたい




  間違いを犯したとしても、言い訳はしたくない


  誰かのせいにしたくはない


  間違ったとしても、きっと答えにたどり着く


  そう信じて進むことはただしい


  止まらずに進んでいく後に、道ができる


  その道は誰かの道ではない



  一緒に歩いてくれる人が君だとしたら、僕はどんな困難にでも


  笑って立ち向かうことができる


  だって、そこに生きる意味があると信じれるから


  二人なら乗り越えられる未来がある


  過去は変えられないけど、未来は変えられる



  僕は誓う、いまこの時の自分の気持ちに正直に生きていたい


  そして、純粋に君にそばにいてほしいと願う

 


 雄輝は、初めてEからの曲を書いた。

それは、自分の思いだけでなく、みんなの思いだった。

そして、ただ一人の人のためだけに歌っていた。

                      


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