エピローグ
玄関を出ると、青空が広がっていた。
桜の花びらが、道路に落ちていた。
雄輝の後ろから、
「待ってよ」
と裕子の声が聞こえた。
振り向くと、アパートの玄関の鍵をかけていた。
「化粧が長いんだよ」
「女の化粧は、男の戦闘服と同じなの、これ一つでうまくいくこともあるのよ」
「どうでもいいけれども、体だけは気をつけてくれよ」
と雄輝は、裕子のお腹を見た。
安定期に入ったとは言え、生まれてくるまでは心配なのだ。
「雄輝に似て、意外と頑丈なのよ、この子は」
といって、裕子は左手でお腹を撫ぜた。
その指には、プラチナの指輪が光っていた。
決して、平坦な道のりではなかったけれども、いまここに確かな幸せがあった。
雄輝と裕子は二人並んで、バス停まで歩き出した。
「今週の土曜だっけ、憲幸さんと静香の結婚式」
「そうよ、でも二人だけで挙げるって言ってたわ」
「まだ、両親とうまくいってないんだ」
「仕方ないわ、兄と妹結婚なんてどう周りに説明するのよ」
「たしかにそうだな」
「大丈夫よ、困難を乗り越えると女は強くなるわ」
「裕子みたいにか」
「そうよ、そして母親になるともっと強くなるのよ」
といって裕子は、雄輝の右手に抱き着いた。
雄輝は照れて
「それは、困るな、ただでさえ、姉さん女房で尻に敷かれてるのに」
「大丈夫よ、私たちには一緒に歩いてきた道が後ろを向けばずっと続いているから」
裕子の頭の上に、桜の花びらがひらひらと落ちてきた。
雄輝は、それを優しく取って、吹いてきた風に飛ばした。
桜の花びらは、空に高く舞った。
短めに、書いてみました。
なんとなく卒業の季節が来ると、胸が痛くなることがありますね。
でも、今回はみんなハッピーエンドです。




