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続・聖剣、解体しちゃいました  作者: 心裡
長い冬休み編
40/41

やっぱりこういう最後になる

「はあ、はあ、はあ。」


 青い髪をなびかせ、腰に携えた光輝く剣がまるで一筋の閃光のように見える速さで、ルクレス・オークレアはワーガルへと向かっていた。

 万が一のために王都を防衛するようにと厳命する国王に右ストレートを食らわせて、近衛兵をなぎ倒して来たため、少し時間がかかっていた。

 ワーガルには友がいる。

 彼らを見捨てることなどルクレスにはできなかった。

 第一、ワーガルで魔王を迎撃することが戦力面でも一番確実であった。

 そのため、ルクレスは人生で一番の速度で走っていた。


 なによりも、早馬でもたらされた一枚の紙のためにも。


 ―――――――


「で、できた! ついにできた!」

「おお! さすがセリナだ!」

「お父さん、ありがとう!」

「ははは。そんなことより、早くその槍を届けてやらないと。」

「そ、そうだった。急がないと。」


 白銀の槍を片手に、セリナ・エルスは駆け出す。

 弟や仲間が戦う戦場へと。


【グングニル】

 攻撃力 8000

 防御力 8000

 光属性

 重量削減(極大)

 全ステータス強化(極大)

 状態異常耐性(極大)

 自動回復(極大)

 切れ味保持(永久)

 速度上昇(極大)

 魔法耐性(極大)

 耐久性(永久)


 ―――――――


「ガハハハ! どうした人間よ、もう終わりか?」


 魔王の前ではアベルとコウキが肩で息をしていた。

 決め手に欠く攻防を続けていると、当然体力が失われていく。

 それが強者相手ならなおさらである。

 すでに二人の体力は限界に来ていた。

 だが、魔王は顔色一つ変えない。

 ……いや、顔色はもともと悪いのだが。


「ジョゼさんも、ミアちゃんもやりますね。僕がここまで手を焼いたのは初めてですよ。」

「そりゃ、どうも。」

「はあ、はあ。コート先輩は相変わらず涼しそうな顔ですね。」

「まあ、一応魔族だからね。ただの人間よりは基礎的な力はあるからね。」

「くっ、伯母上はまだなのか……。」


 コートは巧みに二人の攻撃を受け流していた。

 かつて、貴族学校で女性の人気を集めていた顔に一つの汗もかいていない。

 こちらもそろそろ終わりが見えていた。


 ―――――――


「はあ、はあ、はあ。」


 急がなきゃ。

 せっかく完成したんだから、この槍で魔王を倒してもらわないと。

 その思いで戦場まで走る。

 周りを騎士団のみんなに守ってもらいながら。

 そんなとき、横を一筋の光が通り過ぎていった。


「え、今のなに?」


 そう思っていると、光が戻ってきた。


「セ、セリナ殿!」

「ルクレスさん! 来てくれたんですね!」

「当たり前だ! なにせこれを使われたからな!」


 そういうと、ルクレスさんは一枚の紙を私に見せる。


「それは、私が出した英雄呼び出し券!」

「ああ。これを使われた以上、来ないわけにはいかぬ。父上を殴ってでも来たぞ。」


 そういってルクレスさんは胸を張る。


「なんていうか、ルクレスさんって、最高ですね!」

「お、そうだろう。そうだろう。」

「では、行きましょうか!」

「うむ! 騎士団の皆はここで戻るといい。セリナ殿は私が責任をもって連れていく。」

「わかりました。ご武運を。」


 私はルクレスさんと共に、駆け出した。

 ルクレスさんに背中を押してもらいながら、足がちぎれるかと思うようなスピードで駆け出した。

 そして、遂に戦場へとたどり着いた。


「あ、あれが魔王ですね!」

「ああ、そうだ。アベル殿達が劣勢みたいだな。私は加勢するから、セリナ殿はコウキ殿に槍を渡してやるんだ、いいな?」

「って、ちょ、ちょっと待ってください! きゅ、急に背中から手を離さないでください! バ、バランスが!」


 支えてくれていたルクレスさんの腕が背中からなくなったことで、バランスを崩した私はそのまま、前のめりに転倒する。

 そして、そのとき握りしめた槍を投げてしまった。


 ズゴーーーーーンンンン!


 物凄い轟音を立てて槍が空気を引き裂きながら飛んでいく。

 それはまるで槍投げの選手が投擲したかのように奇麗な回転で、魔王目掛けて飛んでいく。

 ―――――――


「ぐはっ!」

「アベルさん!」

「だ、大丈夫だ。これくらい。」


 遂に魔王の攻撃が当たり始めていた。


「いつまで耐えられるかな。」

「ああ、そうだな。けど、もう耐える必要もなさそうだ。」

「なに?」


 咄嗟に轟音のする方に魔王が振り返る。

 が、その行為が命取りであった。


 ブスッ!


 奇麗に魔王の眉間に槍が突き刺さる。

 それもただの槍ではない。

 白銀に輝く聖槍である。


 みるみるうちに魔王の体は燃えていき、そして消えた。


「え、は? え? 何がおこったの?」

「隙あり!」

「ぐへっ!」


 混乱するコートに対して、ルクレスが聖剣を一振り。

 真っ二つにしてしまう。

 23年前と同様、なんともあっけない最後であった。


 ―――――――


「おい、姉ちゃん。大丈夫か?」

 コウキが倒れた私を起こしてくれる。


「う、うーん。コウキありがとう。って、魔王は? 槍は? どうなったの……って、うぎゃぁぁぁぁ! な、なんでコート先輩が真っ二つになってるの! あぁ……。」

「おい! 姉ちゃん! しっかりしろって。」

「ああ、ごめん。気を失いかけてた。」

「魔王なら姉ちゃんが投げた槍で死んだよ。」

「ええ……。」

「あと、コート先輩は魔族の生き残りで魔王を復活させた張本人だそうだ。」

「あ、ミア。無事だったのね。ちょっと待って。衝撃の事実が多すぎて頭が付いて行ってない。」

「その……、セリナ殿。」

「ルクレスさんまでなんですか?」

「衝撃の事実を増やすようで申し訳ないのだが、ステータス画面を見てみるといい。」

「え、いいですけど。」


 氏名:セリナ・エルス

 職業:英雄(ランク24)

 スキル:魔法

     自動回復

     遠近攻撃

     高速移動

     精神耐性

     鍛冶

     鑑定


「もう、どうにでもして。」

「おい姉ちゃん!」


 そこで私の記憶は一旦終わっている。


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