23年ぶり3回目
共和国のとある町の地下では今まさにこの世界を揺るがす存在が復活しようとしていた。
「はっ!」
フードを被った男が最後の詠唱を終え、力を籠める。
すると、描かれた魔法陣が赤黒く明滅し、その中心から少しづつ、人影のようなものが現れる。
その人影が完全に姿を現したのを確認するとフードの男は話しかける。
「魔王様、復活おめでとうございます。」
「ほう。まさか人間がこの魔王を復活させるような日が来るとはな。」
「いえいえ。人間との交配で大分と血は薄くなっていますが、私は魔族ですよ。」
「ふむ。確かに。そなたのその魔量。人間にしては異常だ。なるほど、かつての生き残りの末裔か。」
「はっ。」
フードの男は魔王に跪いて返事をする。
「ところで、前回わしが倒されて何年が経つ。100年か、500年か、1000年か?」
「23年でございます。」
「は?」
「ですから23年でございます。」
「いやいやいや。え、うそだよね? え? マジなの?」
「マジでございます。」
「じゃあ、あのトンデモ鍛冶屋とか勇者の末裔のハチャメチャ娘やトングのおっさんとか生きてるんじゃないのか?」
「生きております。」
「なんでそんな時代に復活させたんだよ! いいか! ある程度の魔力と儀式があれば復活はできるとしても、やられるのは普通に痛いし苦しいんだよ! わかるか!?」
「落ち着いてください。」
「そうだ。いいことを思いついたぞ。奴らが全員寿命でくたばるまでわしは眠りにつくから、時が来たら起こしてくれ。それがいい。そうしよう。では、頼んだぞ。」
そういうと、魔王は自分が寝るための結界を張る作業を始める。
「お待ちください、魔王様!」
「ええい! うるさい!」
「感じませんか? 23年前にはなかった人々の恨みなどの憎悪の念を。」
それを聞いた魔王の動きが止まる。
「ほう。確かに。前回の復活のときは復活してすぐはまともに戦うこともできなかったが、今は結界を張ることができるレベルで力があふれている。」
「ええ。実は魔王様が復活する少し前に人間界で戦争があったのです。おかげで魔王様の復活はとても順調でした。」
「はははは。人間とはなんとも愚かなものか。わしがいなくなると欲望のために戦争を始め、それが結果としてまた魔王様を復活させる。それもより強力な復活を。」
魔王はこれでもかと大声で笑う。
「それだけではございません。」
「ほう。」
「王国では、トウキ製品が禁止されておりまして、かつてとことなり弱体化しております。」
「なんと! 自ら無防備となったのか!」
「もちろん正規軍はトウキ製の武器ですが、物量で攻めれば問題ありません。」
「そうかそうか。」
「それに前回は、聖剣が完成する前にケリをつけるべく、急いで魔王様自身が出陣してやられてしまいましたが、今回はその必要もありません。」
「じっくりモンスターによって人間が弱って、魔王様の力が完全に復活してから、決着をつければよろしいかと。」
「そなた、さえておるのう!」
「ありがとうございます。」
フードの男は深々と頭を下げる。
「して、そなた名はなんと申すのだ。すっかり聞くのを忘れておったわ。」
「私は……。」




