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第45話:神宮寺麻里

――フェリシテの件が騒ぎを大きくしている。


SNSやチャットはその話題でもちきりだと聞く。

もちろん、私はDeepFuture AI日本法人の代表として、あくまで五井物産からすれば、「社外」の立場に過ぎない。


でも――だからこそ、見えるものがある。


GAIALINQは、今や五井物産の未来を背負う戦略案件だ。

直也はその看板であり、あの若さで最高執行責任者を務める存在は、国際的に見ても極めて希少だ。

そんな彼を、アパレル部門のトラブルに巻き込むなんて愚の骨頂。


……正直、私は嫌な予感がしていた。

「じゃあ直也を担ぎ出せばいい」――そう考える短絡的な幹部が必ず出てくる。

彼の人気と華やかさを利用して、フェリシテのギャル社長を“落とせ”と。

そんな愚かな算段を思いつく連中が。


だから、先に手を打った。


私は、五井物産のIT統括取締役に「お願い」をした。

「GAIALINQは五井物産の看板中の看板。直也を不必要なトラブルに巻き込むのは、国際的にも大きなリスクになる」と。

DeepFuture AI日本法人代表として、対外的な視点から冷静に指摘したのだ。


社外の立場だからこそ言える。

「世界的テック企業から見ても、GAIALINQは最優先に保護すべき案件」――そういう圧力を、外から与える。


そしてその意向は、IT統括役員を通じて社長にも伝わったと聞いた。


※※※


後日、その動きを知った亜紀と玲奈は、少し驚いた顔をしていた。

「……麻里さん、頼もしいですね」

「こういう時には、“ステークスホルダー”の看板は、正直助かります」


彼女たちがそう言ってくれるのは、素直に嬉しい。

私だって、直也を守りたい気持ちは同じだから。


「じゃあ、今度三人だけで『ガールズトーク』飲み会でもしましょうか」

そんな話題が自然に出て、笑い合えた。


私たちは立場も違う。

社内と社外、キャリアの道筋もバラバラだ。

それでも――「直也を余計な火種から守る」という一点で、しっかりと団結できている。


その結束を感じた瞬間、私は少しだけ肩の力を抜けた気がした。


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