第28話:宮本玲奈
――企画が形になった。
最初は、ただの「カラオケパーティ」なんて冗談半分の話だった。
でも直也が保奈美ちゃんの立場を守ろうと真剣に考え、そこから私たち三人が現実的に調整を始めた。
学校側は、教育的意義があるならと大賛成。
五井物産の広報も「若い世代との交流イベント」という形なら積極的に支援すると言ってくれた。
こうして、舞台は大崎のライブハウスに決まった。
キャパは二百席ほど。
音響も照明もプロ仕様で、きちんとスタッフを配置すればセキュリティも確保できる。
学習機会としても十分、そして生徒たちが「ライブ体験」を得られるという意味でも価値がある。
※※※
打ち合わせの中で、私は念を押した。
「これは“GAIALINQの若い世代交流イベント”です。そこがブレたら、単なる身内のカラオケ大会になります」
広報も頷いてくれた。
「分かっています。最後に“折角ライブハウスなので”と銘打って、軽くカラオケ要素を入れる形にしましょう。それなら、楽しい締めになる」
麻里も補足する。
「直也が最初からガッツリ歌うんじゃなく、あくまで生徒主体。直也は“飛び入りゲスト”として少し参加する程度ね」
その線引きが重要だ。
直也に過剰な負担をかけないこと。
そして、生徒たちにきちんとした体験を提供すること。
※※※
準備は順調に進んだ。
広報は告知資料を整え、学校側には参加希望者を募集してもらった。
教師も数名同席することになり、安心感は増した。
当日の進行もリハーサル済みだ。
冒頭は直也の簡単な講演とQ&A。
次にGAIALINQの活動を紹介する短い映像。
その後は生徒たちによるカジュアルなトークセッション。
そして最後に――「折角のライブハウスなので」という流れで、カラオケ的な余興。
直也の参加はあくまでサプライズ。
最初から告知しなければ、生徒たちの期待も過度に膨らまない。
※※※
――そして、当日。
大崎のライブハウス前は、放課後の制服姿の生徒たちでにぎわっていた。
学校側が引率をしているので混乱はなく、整然と列が作られている。
「……本当にやるんだな」
舞台袖で直也が小さく呟いた。
私は軽く笑って返した。
「大丈夫。全部段取りは整えたわ。あとは楽しんでもらうだけ」
保奈美ちゃんの顔もどこか緊張している。
でも、これでようやく――無茶な“カラオケパーティ要求”が、きちんと形のあるイベントに昇華された。
幕が上がる瞬間を待ちながら、私は胸の奥で小さく息を整えた。
――さあ、いよいよ本番だ。




