第27話:新堂亜紀
――その日、直也くんから相談を受けた。
「……保奈美の友達たちが、“カラオケパーティで会わせてほしい”ってせっついているらしいんです」
思わず、口をあんぐりと開けてしまった。
いやいやいや、世界規模プロジェクトの最高執行責任者に、女子高生のカラオケパーティ? 冗談でしょ。
「……直也くん。それは絶対ダメ。断ればいいじゃない。スキャンダル扱いとかされる可能性だってあるし」
私が呆れ混じりに言うと、彼は苦笑して首を振った。
「無碍にすれば、保奈美が板挟みになるだけですから。それなら、逆に“若い世代の意見を取り込む交流機会”に変えてしまった方がいいんじゃないかと思って」
そう言う彼の真剣な顔を見て――あぁ、この人はほんとに保奈美ちゃんには甘いな、と思うのと同時に、やっぱりすごいな、とも思った。
普通なら“そんなの無理”で切り捨てる話を、どうすれば意味あるものにできるか考えるのだから。
※※※
実は既に、直也くんは保奈美の担任に相談を入れていた。
さすが、段取りが早い。
担任の先生からの返答はこうだった。
――教師も同席する形で、公共ホールやスタジオといった“きちんとした場所”で行うのであれば大歓迎。
生徒にとって、社会で活躍する先輩から直接学べるなら、十分に教育的意味がある。
「学校側は、むしろ“大賛成”なんですよ」
直也くんが少し照れくさそうに笑った。
そこで彼がふと思い出したように言う。
「……あ、そういえば担任の先生からも“VeryVeryにサインください”って頼まれました」
私と玲奈と麻里は同時に固まった。
「……そいつ絶対女だな」私。
「……絶対女教師ね」玲奈。
「……困ったものね」麻里。
三人同時に顔を見合わせて、ため息。
ほんとにもう、どこに行っても直也くん人気が止まらない。
※※※
とはいえ――現実的にどう運営するか、慎重に考える必要がある。
「学校の教室とか体育館じゃ無理よね。セキュリティも含めて心配」玲奈。
「かといって、完全なライブ会場だと大げさすぎる。……中規模のスタジオが一番現実的かな」麻里。
私は腕を組みながら考えた。
「大崎のライブハウス、あそこならキャパも照明も十分よ。五井物産の広報経由で押さえればコスト的にも全然対応できるし、公式イベントにできる」
「GAIALINQの“若い世代交流イベント”って銘打てば、広報的にも映えますね」玲奈が補足する。
「そうね。直也の“カラオケ参加”も、教育的な意味合いで正当化できる」麻里も頷いた。
――これなら、保奈美ちゃんの立場も守れる。
単なる「お兄さんを連れてきて」じゃなく、学校・企業・広報の三方よしの『意味のあるイベント』にできる。
私は心の中で、少しだけ安堵した。
やっぱり直也くんは保奈美ちゃんに対してだけは甘い。でも、その甘さを無駄にしないように形にするのが、私たちの役目なんだと思った。




