死ぬ瞬間まで
思い出した瞬間には、地下室に縛られていた。
地下室と言っても、あの最悪の方の地下室だ。
硬い床に座らされ、大きな手錠で固く締められていた。
足も鎖で繋がれ、この地下室をほんのちょっと動けるぐらいしか間隔はなかった。
どうやら、アレから1日経ったらしい、でもまだ口の中が血の味でいっぱいだ。
「アキラさん・・・。起きましたか。
早速ですが、お遊びの時間ですよ。」
太宰が手袋と拷問器具をずらっと用意し、俺の前で仁王立ちする。
拷問椅子に、金属バット、電流を流すための機械やら、俺を苦しませるための道具がずらっと並んでいる。
「なんのためにやんだよ・・・・。本当に・・・。
遊びか?それとも俺、何か気に食わないことでもしたか?」
そういうと、太宰は細い目をしてこちらに歩み寄り、俺の顎を上げる。
「そんなつまらないことではありませんよ、私とあなたが、一生楽しく暮らせるための・・・・。ちょっとした教育です。」
あーあ、アキラさん。
早くも精神が壊れかけてるな・・・・。
もちろん、夢野に言わせたことは全て嘘である。。
俺が彼女を洗脳し、俺が呼んだら、彼にそう言うようプログラムしただけの話。
彼が巻き込まれた事件を知ったのは、自分なりのリサーチだ。
一応元刑事だったから、そう言う世間に葬られた事件を探ることは容易い
それより・・・・何で遊ぼっかな・・・・。
「アキラさんは、拷問椅子のような刃物系と電気で痛みつけるやつ、どっちが好きですか?」
「いや・・・・。やめてください・・・・。」
「ふふっ。どの口が言ってるんですか?
今まであなたも散々加害者を苦しめてきたでしょう・・・・。
いくらクソ野郎どもだとしても、人権はある・・・。
あなたはそれを犯した。だからあなたも罰を受けるべき。
ツケが回ってきたんですよ。
とっとと諦めたらどうです?」
「・・ツケ・・・?」
江戸川の唯一の価値である犯人(屑ども)への拷問を全否定した挙句、彼の精神をグッチャグチャにした太宰は随分と優越に浸っているような顔をしていた。
その裏腹、江戸川は昨日からの集中攻撃で弱りに弱り、完全に生気を失った。
声も蚊の鳴き声の如く、弱々しかった。
「ええ、そうです・・・・。ああ、アキラさん。いけない・・・・。
大事なものを打つのを忘れていた!」
拷問部屋のキャビネットから一本の注射器を取り出し、紫色の薬を中に入れる。
「これね、筋肉や免疫を完全に動けなくするための薬なんですけど、逃げられるのも嫌だし、あなたが病気にかかって苦しんでいる姿を見るのも一興なので、打っちゃいますね。」
注射器を持って近づく太宰に対して、江戸川は必死に逃げようとしていた。
だが、鎖のせいで全く動けない。
「ウサギのように逃げ回るあなたも可愛い。
でも、完全に精神を破壊されて、死の直前に立っているあなたの方が・・・私は好みです。」
太宰は江戸川を完全に抑えつけ、腕に注射器を打った。
その瞬間、江戸川の体に熱が走る。
灼熱の中にいるようで、江戸川にはもがいて暑さを解放しようとすることしかできなかった。
気を抜くと失神する、だが一回でも失神すれば太宰にどんな仕打ちを受けるかわからないと、江戸川は心底怯えていた。
「いやっっっっ・・・・・いっっったい・・・・あつい・・・・熱いよ・・・・。
誰かっっっっっ。俺を・・・・たすけてっっっ。
母さん・・・・樋口さん・・・・・。」
言葉にならない叫び声で15分ほど江戸川は悶絶していた。
すると、急に筋肉の力が抜けた。抜けたというより、脳は反応しているのに、体がピクリとも動かない状態だった。
叫ぶことはできるが、悶絶することはできない。
できるとしたら電流でも入れられてピクピクと海老のように跳ねることができるぐらいだった。
とにかく、全てにおいて力が出せない。
動く手段としたら、この全身痛ましい状態で自身の体重全てを筋肉もなしに動かすことだけだった。
「さて・・・・。
準備運動もこれぐらいで・・・。
本当に芋虫みたいで可愛いですよ、今のアキラさん。」
「うっっっ、太宰・・・・。」
「そうだ。せっかくこんな姿勢になってるんだ・・・。いいこと思いついた。
アキラさん、私の靴、舐めてくれません?」
近くの椅子に座り、太宰が江戸川の顔の近くに靴を置く。
江戸川は目を丸くして太宰の方を見る。
「いいから、舐めてください。
でなきゃ・・・・
どうなるか・・・・?ねっ?」
「太宰・・・・・。」
「ああ、ちなみにこれ、警視庁に生配信中ですからね〜。
ここで舐めたら、帰れても、もう警視庁の門は通れませんね。」
ふふっと笑う太宰の横には確かにビデオカメラがあった。




