これはただの独占欲なんだから、人一人二人殺したって何の罪もないよね?
連絡先は警視庁のホームページに書いてあるからそこを取る。
警視庁刑事部第一課太宰暦警部としての声だったら、話は通じるだろう。
目の前には血とあざだらけで拘束されたアキラさん。
嘔吐した後もあるし、これだったらアキラさんが今悲惨な状況にいて生きるのもままならないということを伝えることができるだろう。
こうするのには意味がある。
警視庁の捜索があまりにも杜撰だったということを知ったから。今日の奏の家の警備を見てようやくわかった。
もっともっと全力でアキラさんを取り戻してほしい。
そして捕まえられない無力さを存分に感じてほしい。
そう、それだけだ。
逆電波もできないようになっているし、回線は複雑になるよう仕込んでいる。
これなら、完璧だ。
スマホで警視庁への連絡を開始する。さっきの一件で警視庁もてんてこ舞だろうけどもっと焦らせるのもオツなものだ。
警視庁では捜査本部が建てられているようだけど、あんまり進展もないしなあ。
それに警視総監、アキラさんのこの状況を見てどんな反応をするかなあ?
早速電話かけよっか・・・・。
どんな反応するか楽しみだなあ。
「はい、問い合わせ部です。お名前を聞かせてもらっていいですか?」
「太宰暦です。」
ーーーーーーーーーー
「お久しぶりですね!与謝野警視!」
今まで太宰の口から聞いたことのないような明るい声が画面越しから聞こえる。
五分前問い合わせセンターに太宰から直々に電話が届き、いたずらだと思ったものの一応第一課の刑事に繋いだところ、間違い無く太宰の声だと。決めては警察手帳に記された自分の番号を彼がスラスラと言ったことだった。
もちろん太宰から連絡がかかってきたことに捜査本部は今までにないほど騒がしくなり、与謝野はとんでも無く化け物じみた疲れ顔をしていたが、これも仕事・・・・いやアキラの安否のためなので、電話は捜査本部を指揮している与謝野に繋がれた。
「お前っっ。」
「そう怒らないでくださいよ。どうです? 私の姉の家族が殺害されたことについては話が通っていますか?」
「ああ、知らないわけねえだろ。」
「ふうん、その言い方はなぜ私があの人たちを殺したかわかったような口ぶりですねえ。」
「うるせえんだよ、クソ野郎。」
与謝野の辛辣な言葉が画面から聞こえる。相当イラついているようだ。
「ふふふふふふっ、相変わらず口が悪いですねえ。与謝野女史」
「お前なあ、太宰。彼を誘拐した理由はなんだ?
金か?」
こんな質問、後もう少しで吹き出してしまうところだった。
久しぶりに刑事から呼ばれた自分の名前、何かしらと感情深いものが心臓の奥から込み上がってきて、その笑いは面白さというより懐かしさというより、なんともいえないもの恥ずかしさだった。
「ハハハハハハハっ!いいえ、そんなわけないじゃないですか!身代金なんぞ要りません。」
「じゃあなぜだっ!」
警察も付くづく馬鹿だなあと心の中で呟きながら、渋々その質問に答えてあげることにした。警視庁に何も情報がいないというのもつまらない、動機というのは事件解決の中で一番大事なものの一つであり、知らないともちろん捜査も続かない。今や自分もネットニュースのトップ画面に連日載るような事件の犯人である。知らぬものはいない、今回の舞鶴一家殺人事件でもっと名が知れ渡ることになるだろう。動機ぐらい世間に知れ渡っても悪い思いはしないだろう。もしばれたとしても、逃げ口は大量にある。
「フフッ、答えないこともありませんね。いいでしょう。
私、アキラさんのことが単純に好きなんです。だから独り占めしたくって・・・・独占欲というのでしょうか。自分の感情を叶わせるためには人一人二人の人生を狂わせてもなんの問題もないですよねえ。
ああそれにこの環境を邪魔する人は親戚だろうが、同僚だろうが誰でも殺せます!」
心から込み上げてくる怒りとはこのことを言うのか。もし太宰が目の前にいるとしたら、何があろうと殺したい。胸を焦がすような憤慨が声にも表情にも表れる。
激憤慷慨。
偏担扼腕。
言葉に言い表せないような苦しみと憤慨と悔しさが口の中を苦くする。
「ん?静かですね。
まあいいでしょう。では、警視総監と代わっていただけるでしょうか?
アキラさんの事について少しお話が。」
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