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閑話:江戸川、太宰、カフカの大学生時代の話

平和。


日本で一番の頭脳が集うと言われる、その名を日本で知らないものはいない大学の経済学部経済学科に在籍していたのはのちの超有名刑事、江戸川彰、当時大学三年生、教養学科を卒業したばかりでであった。まあみなさんこの時点で彼がどのような大学へ入学したかはお察しがついていると思うが、その辺りは口をつぐんでほしい。

親を楽させたいために、官僚になり安定した収入を得る。これが江戸川の目標であり、この血がにじむ努力をして大学に入学した理由である。

現在、単位を安定しており、試験もトップに食い込むほどの成績を維持していた。そうかなり順調に大学生活が続いていたある日の話である。


次の講義に向けた準備をしている時、同じ経済学科の先輩に声をかけられた。


「・・・・私に執筆依頼ですか?」


「ああ、江戸川君、経済学科でも成績いいし、いい文章書くって聞いから。あとこれ、イエール大学との連帯でもあるんだ。お願いさせてくれないかな?経済学についての小論文みたいな感じでいいから。」


心の中で勉強する時間が少なくなるとつぶやいたが、イエールか。

書くだけでもポイント稼ぎになるし、そんなに有名な大学との連帯なら、協力して損はないだろう。

どうせ、この人たちも俺が金のために飢えていることがよくわかっているのだろう。


「経済学に関係することなら別に良いですが、連帯といってもイエール大学と何かつながりはありましたっけ?」

「いやあ、ただの交流だよ。ここの大学とイエールの学生から選抜で執筆者を選んでそれを本にまとめるだけ。何回かやってるけど今回は力入れてやるから、学部から一人ずつ選んでね。それで江戸川君が適任じゃないかなって。」

「それはそれは光栄です。では、詳細だけもらうので書くことにしましょう。」


―――――――


アメリカの中でも指折りの名門私立大学。イエーラに在籍するのはかつて犯罪心理学科で母国語が日本語ながらもトップの成績をとるも裏で数え切れないほど問題行為を起こしてきた太宰暦であった。今や日本中を震撼させている連続殺人鬼は心理学部の中では異国から来た天才ワルとして名をはせていて、その時の愛称は人気漫画の中の登場人物から取り出した『レイエ』であった。


「ねえ、レイエ。」

「どしたん?リアナ。」


自分と同じく犯罪心理学科在籍の遊び人、リアナが話しかけてくる。

へそ出しの服に短パンというラフなスタイルがいかにもギャルっぽい。


「あのさ、なんかジャパンの有名な大学との連帯で各学部から5000字以内の論文書いて欲しいっぽいんだけど、レイエ書いてくんない?一応去年主席だったでしょ?」


頬をつついてきて、お願いするとは思えない態度でせがんでくる。


「うーん、リアナのお願いじゃ断りにくいけど、あいにく来週から試験だったよね。流石に俺奨学金取られちゃやばいから、勉強しなくちゃなあ。」

「ええ!いいじゃん!書いてくれればポイント稼ぎになるって教授言ってたよん。」

「そんなこと言っていいのかよ。まあいいぜ。だけど今日は遊びには行かねえからな。」

「えー残念。でもいいや、サンキュー♡」


―――――――――

数か月後。

三百ページを超える二つの大学の各学部から選抜された生徒が書いた論文が発表された。

最も、全員素晴らしい論文を書いていたのだが、その中でもある二人の論文はほか名門大学の教授が目をつけるほど素晴らしかったという。

マルクス経済学の矛盾点について記した江戸川彰の論文、ストックホルム症候群について記した太宰暦の論文だった。

その論文は初期は無料配布される予定だったが、あまりにも人気になってしまったため、数週間後には有料になっていた。

とはいえこれを書いた二人はどちらも相手の論文は読んだものの、専門外なため著者の名を憶えるということはなかった。

これから二人の関係性がどちらの人生も大きく狂わせることも知らずに。


―――――――


話は進み四年後の話である。

イエーラ大学犯罪心理学科に太宰暦の姿はもうなく、代わりにのちのFBI捜査官兼セラピストのヴィクトリア・カフカが入学してきた。そして販売してあったあの論文を今読んでいる最中である。


「・・な、なんだこの素晴らしい論文はっ!」

「声大きいカフカ。」


食堂で二人の女学生の声が響く。


「経済学はあまりわからないが、この文章力といい、マルクス経済学をしっかり理解しているのはよくわかる!それにこのコヨミというやつ!ストックホルム症候群についてここまで奥深く書けるなんて!さすがイエーラ!やはりエリートしかいないのは確かだな!」


「はあ、全くこの女は・・・。」


「江戸川彰、太宰暦・・・・すごい、すごすぎる・・・・・。」

「どうせ一年後には忘れているでしょうね。」


いくら忘れたとしても、江戸川彰、太宰暦、ヴィクトリア・カフカ、この法の淵に立たされた限りなくエキセントリックな関係性を持つ者たちが初めて各々の名を知った瞬間だった。


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