孵化せし捕食者
ピシッ、パキパキ、と音を立てて割れていく大きな卵。
その内側からは先ほどから見えている獰猛な捕食者の眼だけでなく、まるで刃物のように鋭く尖った牙や爪が見え隠れしており、一刻も早く外に出たいとばかりにそれらを狭い殻の中で振り回す〝何か〟の姿が次第に明らかとなっていく。
そして次の瞬間、一際大きな破砕音が響いたかと思えば。
『クエェエエエエエエエエエエエエッ!!』
「「「!?」」」
けたたましい鳴き声を上げつつ卵から飛び出したのは。
(竜種か? にしちゃあ小せぇが)
竜のような牙、竜のような爪、竜のような尻尾、竜のような鱗を生やしていながら、それを竜種と呼ぶにはあまりに小さな──と言ってもスタークと同じくらいの大きさではあるが──体躯しか持たない、蜥蜴に近い爬虫種の魔物であり。
(別に強そうにも見えねぇのに、何でやたら得意げなんだ?)
すばしっこそうではあるし、それなりの凶暴性も秘めていそうではあるが、だからといって如何にも切り札めいた感じでスタークとの戦闘へ参加させるには役不足感が否めない。
「『そんなのが切り札なのか?』って顔してるわね」
「あぁ、撤回はしねぇぞ」
「別にいいわよ、その通りだもの──」
そんなスタークの猜疑心を見抜いたからなのか、この状況が一度目ではないからなのか、いずれにせよケイトリンの言葉は図星だったようだがスタークにとってはどうでもいい。
しかし、ケイトリンにも動揺は見られない。
やはり以前にもこんな事があったのだろう。
そして、その時もきっと──。
「──今は、ね! 征きなさい、〝古超卵〟!!」
『ギャアァアアアアスッ!!』
「……?」
古超卵、そう名付けた魔導接合個体の魔物とともに自分たちを侮った者を喰らってきたのだろう事までは分かったが。
(遅っっっっせぇ……何がしてぇんだマジで……)
……あまりに、あまりに動きが遅い。
どこからどう仕掛けられてもあっさり迎撃可能なほどに。
とはいえ、それはあくまでもスターク基準。
並の武人や冒険者よりはずっと速いし、もしもこの場に立っていたのがフェアトなら捕捉はほぼ不可能だっただろう。
『りゅう、りゅあぁ』
(わーってるよ)
しかし、それでも油断は禁物。
絶対に逃してはいけない敵を相手にしている以上、万が一さえ危惧せねばという忠告の意を込めた鳴き声を上げるパイクに口煩い親への対応に近い返しをしつつ、矛を構えた後。
「ま、どうせ最後は殺すんだが……せっかくだしな──」
おそらく好機と判断したのだろう、ちょうどスタークの背後に回っていた古超卵が『グバッ』と大きく牙を剥いて飛びかかったのも束の間、一瞬たりともその姿を見失う事のなかったスタークが軽く振るったように見える矛の薙ぎ払いで。
『──グ、エェェ……ッ?』
「……ッ!!」
「見せてみろよ、テメェがそいつを誇る理由を」
古超卵の小さな身体は、見るも無惨に両断された。




