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奴隷の国  作者: 猫人鳥
4章

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515/1451

515 忽然

フィール視点です。

 ハイボーアはカイとフェルルで、それ以外の魔物は私という担当で、ダンジョンをさらに奥へと進んでいった。

 ハイカウンとも契約して、ミルクもとれるようにしたので、今後は買い物へ行くのもかなり減らせられると思う。


「そろそろ帰りましょうか」

「はい。先にカイと魔物達を送りますね」

「そうね。カイ、皆にその鉱石の事を説明しておいてね」

「かしこまりました」


 今回契約したのは、ハイヘェンターが15体と、ハイカウンが5体だ。

 人を転移させるより、魔物を転移させる方が簡単だとはいえ、流石に人4人と魔物20体を一度には送れないので、先にカイと魔物だけを送る事にした。


「あ、でもその鉱石は頂戴」

「えっと、これですか?」

「えぇ。この子と契約した鉱石だから」


 アキナ様はずっと足を怪我していたハイヘェンターを抱きしめておられる。

 鉱石をカイから受け取られたということは、このハイヘェンターだけは後から転移させたいという事だろう。


「送るわね、≪テレポート≫!」


 カイとハイカウンを5体、ハイヘェンターを14体、拠点の島へと送った。


「おい、もし今その鉱石を受け取らずにいたら、そのハイヘェンターはどうなっていたんだ?」

「あらあら、フェルルは面白い事を気にするのね。主人である鉱石が忽然といなくなってしまうんだから、ハイヘェンターは大パニックだったと思うわよ」


 アキナ様にとって今のフェルルの質問は面白かったようで、アキナ様は楽しそうに答えておられる。

 その様子に冷たさは一切なく、フェルルもアキナ様が博識で、疑問を解決して下さると分かっているから聞いたという感じだ。

 ダンジョンへ来る前からは考えられないな……

 人類種への恨みは深いし、まだアキナ様を信用したという訳ではないだろうけど、急に斬りかかって来たりする事はもうないと思ってよさそうだ。


「大パニックって、暴れて攻撃しだすのか?」

「いいえ。邪気は抑えられているから、攻撃をしてくる事はないわ。主人を求めて走り出したりはするでしょうけどね」

「なんだ、それだけか」

「それだけって事はないわ。主人への最短距離を走るのよ? そこに、どれだけの障害物があったとしても……」

「泳げないのに海に落ちて死ぬって事か?」

「そういう事もあるでしょうし、魔物避けの結界とかに当たる事もあるわね」


 各国を覆う魔物避けの結界は、魔物から守る障壁となっているだけでなく、魔物が近寄って来たくなくなるような魔力が流れている。

 ホス車に使うベルも、魔物が嫌う音をだして近寄って来ないようにしているらしいし、魔物に感情はなくとも近づいて来ないようには出来る。

 でも、パニックで混乱している魔物にそんなものは関係ない。

 構わず突っ込んでしまうんだろう……


「それって、もっと大きい魔物だったら……」

「そうね。そこにあったものは全て壊されてしまうでしょうね」


 今私はハイヘェンターで考えていたけど、他の魔物の可能性だってあるんだ……

 そう考えると本当に恐ろしい。

 大きな魔物が、結界が張ってある事も気にしないで突っ込んでくるなんて……


「あの、アキナ様? 魔物を敢えて混乱させて、あちこちを出鱈目に走らせたら、結界が張ってあることに気付かれてしまうのではありませんか? 何もないところで魔物が壁に当たる事になるんですよね?」

「大丈夫よ。何かを隠すための結界には、幻覚魔法が使われているからね。相当弱い結界じゃない限り、魔物が結界にぶつかった光景は自動的に違う光景に見えるはずよ」

「そうなんですね……」

「それに、魔物はそうそうパニックにはならないわ。近くに主人がいなくとも、主人の帰りを待ってその場に留まるか、進める限りで主人に近づくだけよ」

「……よかったです」


 もしかしたら、ハンター達にウィザルド国の場所が知られてしまうのではないかと心配したけど、その心配は必要なかったみたいだ。

 

「≪テレポート≫でも使えば、急に主人が消えた事によるパニックを起こしてしまうかもしれないけど、そんな事はそうそう起こせないから。だからそんなに怯えなくていいわよ、フェルル」

「別に怯えてなんていない」

「そう? 怖くて恐怖に震えてるって顔してるわよ?」

「誰がだっ!」


 不安で恐れていたのは私なのに、アキナ様はフェルルをからかわれている……

 折角良くなってきたと思っても、すぐまたこれだ。

 

「そういえばアキナ様。そのハイヘェンターの怪我って、治す方法はないんですか?」

「え? あ、この子? 今まさに治しているのよ」


 大きな喧嘩になってしまう前に、なんとか話を逸らすことに成功した。

 元々後で聞こうと思っていたから丁度よかったな。

 でも、今治してるというのは……?


「アキナ様が、魔法を使われているのですか?」

「そうじゃなくて、魔物にとっての栄養源は邪気だから。邪気の漂う空間にいれば、どんどん回復していくって事よ」

「そうだったんですね。だからその子の転移を後回しにされたんですね」

「えぇ。少しでも長くいた方がいいかと思ってね」


 アキナ様は、抱えるハイヘェンターを見ながら優しく笑われている。

 その様子に、フェルルも怒る気は失せたみたいだ。


「他に治す方法はないんですか? 魔物使いの人とかは、どうやって魔物を回復させているのでしょうか?」

「え? 普通に……あ、ウィザルド国は魔石を使わないんだったわね」

「魔石で治せられるんですか?」

「魔石はもともと、邪気と魔力の集合体だからね。自分の魔力は使わず、魔石の魔力だけを利用した回復魔法なら、魔物を苦しめることなく回復させる事は可能よ」

「なるほど……」


 ウィザルド国では、魔石は魔力が宿っただけのただの石だと思われていた。

 だから怪我をした魔物には、どうしてあげる事も出来なかった。

 感情がないとはいえ、ずっと自分のために頑張ってくれた魔物なんだと泣いていた、牧場のおじさんを思い出してしまうな……

 魔物の怪我を回復させられるとさえ知っていたら、きっと違っていたのに……


 外界と隔離されている魔神種には、本当に知らない知識ばかりだ……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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