奮闘
「今だ、かかれー!」
「皆、務めを果たすのだ!抜剣!」
外から怒号と剣戟が聞こえてきた、何者かに襲われたようだ
「怪我は」
「あ、だ、大丈夫です、ありがとうございますアラン様・・・」
「こっちも問題ない」
腕の中で庇ったエマリーさんの無事を確認
レオン様とエリザベス様もご無事のようだ。
座席の下から剣を取り出すアランとレオン
「レオン様、私は外に出ますのでお願いします」
「無理はするなよ」
「護衛騎士が殆ど対処すると思いますが、馬車に取り付かれては面白くないので専守防衛ですよ」
「すまん、頼む」
「私が外に出たら鍵を閉めて下さい」
「ああ」
襲撃を受けたというのに落ち着いたやり取りをするレオンとアランに違和感を感じたが
恐怖が先立って言葉が上手く出なかったエリザベス
なんとか口から出たのは、
「アラン様お気を付けて」
「ええ、では」
近所を散歩してきますとばかりに気さくな笑顔で応え、アランは外へ出て行った。
「大丈夫ですよお嬢様、私も微力ながらお護り致します」
「出番が無いにこしたことは無いけどね、アレだけ派手な音がしたから城から応援もすぐに来るはずだ」
エマリーはブーツに備え付けていた短刀を取り出しエリザベスを安心させるように言った。
レオンも片手に剣を握り、空いた手でエリザベスの震える手を優しく包んだ。
「さて、と・・・」
アランは努めて冷静に周囲を見渡す
予想通り護衛騎士が賊と対峙していた、が・・・
「数が多いな」
王家の馬車、しかも王子と公爵令嬢を乗せているので護衛は多めに居たがそれでも賊の方が多い
騎士一人で三人相手取るのも居る
逆に言えば一人で三人相手しても保つ程度の練度
一人一人は大した事がない
「死ねぇぇーーっ!」
近くの路地からアランに向かって剣を振る男
「・・・」
アランはサラリと受け流すと足を引っ掛けた
やはり練度が低いのか簡単に男は前のめりで転んだ
「ぐあっ、てめぇぶっこ、」
背中から斬られないように剣を振り回し、すかさず立ち上がろうとする男だったが何故か立てなかった
「あ?」
見れば、足から血が出ている
大したことない、かすり傷だ、しかし・・・
アランは柔和な表情から一転、一切の感情もない様子で言い放つ
「もう貴方は二度と立てませんよ腱を断ちましたから」
「は?」
ヒュン
「ぐあっ」
風を切る音がした、カランと男は剣を落とす
「大人しくしてて下さいね、王族の馬車を襲って無事で済むとも思ってないでしょう?」
「なっ、」
「?」
アランの言葉を聞いた賊が顔色を変えた
動揺した男は聞き逃せない一言をいう
「話が違う!王族だなんて聞いてねえぞ!!」