後編
続きです。
切るところ間違えたので短いです。
こんな日々がずっと続けばいい…
いつしかそう願うことが増えていた。けれど、神にわたしの願いは届かなかったらしい。
その日も報告のために叔父と共に王宮を訪れていたのだが、領地で魔物の暴走が起こったと連絡があり事態の鎮静の為、わたしは叔父と一緒に領地に戻ることになった。
「どうか気を付けて。…私にも何かできることがあればいいのに」
殿下はそう悔しそうに言った。
「いいえ、そのお気持ちだけで充分です。後はわたし達にお任せください」
「わかった…。だが騒動が終われば、必ず私のもとに来て「ただいま」を言って欲しい」
最近、いつも殿下は任務の度にわたしに「ただいま」を言いに来るように言った。どんなに時間が掛かっても良いから必ずわたしに直接言って欲しいと。
だからわたしはいつもの様に「わかりました」と答えて領地に向かった。
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「はぁっ…はぁっ…」
体が重い…。まるで鉛みたいだ…
重い体を引きずりながら、わたしはあの場所を目指した。わたしが通った後には赤い筋ができている…。
どれ程歩いただろうか…。気づけば目の前にわたしの花園が見えた。どうやら着いたらしい…。
「やっと…終わる…」
ずっと待ち望んでいた事なのに、その事が少し悲しいと思った。脳裏に浮かぶのは彼との約束で守れないことが申し訳なかった…。
着いた安心からか、体から力が抜けてしまい足がもつれて倒れてしまった。いくら花の中とはいえある程度の衝撃を覚悟したのだが、それは一向に訪れなかった。それは倒れたわたしを彼が受け止めたからだった。居るはずのないその人にわたしは驚いた…
「…殿下?…っ何故ここに…?」
「あなたならきっとこの場所に来るだろうと思って…」
そう言って彼は私を抱きしめた。抱きしめられる直前に見た殿下の顔はひどく歪んでいて、まるで今すぐにでも泣き出しそうな顔で笑っていた。
「っ!は、放してください!このままでは殿下まで汚れてしまいます」
わたしは殿下を引き離そうとしたけれど腕に力が入らなかった。
わたしは汚い、穢れているから触らないでほしい…。そう言ったのに殿下は益々わたしを抱きしめる腕に力を込めた。
「君は汚くなんかない。穢れてもいないよ…。あなたはきれいだ。」
殿下はとても優しい声でそう言った。
彼の言葉に胸が熱くなった。わたしみたいな血にまみれた存在は花達しか受け入れてくれないと思っていた。そんなわたしを殿下は受け入れてくれるの…?
わたし達は花園の中心にいた。殿下はそこに座って、わたしの頭を膝の上に乗せていた。わたしは指を動かすのでさえひどく億劫で、不敬だと思いながらもそのままでいた。
彼はわたしの髪を優しく撫でながら、ふと思い出したように「おかえり」と言った。
「ただいま…戻りました…」
ああ、わたしは彼との約束を破らずに済んだのだ…
その事にひどく安堵したわたしは知らないうちに涙を零していた。
いつの頃からか出なくなってしまったけれど、わたしはまだ涙を流せたらしい。
殿下はわたしの涙を指ですくい、わたしの返事に微笑んだ。
なんだか安心したらひどく眠くなってきた…
眠ってしまう前にわたしは殿下にこれだけは伝えなけばと思った。
花は何も言わないけれど、何も言ってくれない。だから最後はきっと誰とも話すことなく終わると思っていた。けれど、殿下が来てくれた。彼はわたしをきれいだと言ってくれた。抱きしめてくれた。話をしてくれた。…それがどれ程嬉しかったことか。
だからわたしは彼に伝えた、「ありがとうございました」と。
「…ユーリ様。あなたに会えて良かった…」
薄れゆく意識の中…彼がわたしの名前を呼んで、私も会えて良かったと言ってくれた気がした。
わたしの意識は深い深い闇の底に沈んでいく。
ああ、わたしはなんて幸せなのだろう…
自分にもっと表現力があればもっと良くなったんじゃないかと思いました。
力不足です。
「花園」には作中に出てくる意味以外に「死」の意味があります。
花園に魅せられたという事は死に囚われたという事で、花園を造るという行為は死への憧れからです。




