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第十二話 中世:6

数時間後。ゴブリンや魔石バッタと何度か戦闘し、死体から作成した経験の魔石を使ってレベルアップするが目標の20に届く前に街に到着する。出来ればここでレベル20にしておきたかったが冒険者登録が優先だ。登録しないで魔物を狩ったりすると罰則等はないが金も貰えないので損だ。ちなみにハメリア──現在地、つまり街の名前だ。一応ダグラス領──に入る際、身分証明書がないためマリーが持ってきた死体を魔石に変えてそれと引き換えにマリーに通行料を含め金をいくらか貰ってそれで支払った。


それはともかく問題がある。それはライアンとマリーの二人に気づかれないように冒険者登録する必要がある。さほど重要ではないがあれだけ大見得張って冒険者じゃありませんでしたじゃ意味ないしな。

ライアンは武具の手入れで武器屋にいるが問題はマリーだ。マリーは俺の一子相伝の魔法を少しでも多く見ようとしている為に俺から離れない。実際にはそんなものではなく見るだけ無駄だと伝えてやりたいがそれを証明するにはメニューコマンドの存在から説明しなければならず、そちらの方が面倒だ。あの手段でいくか。


「マリー、今一番使われている魔法の属性は何だ?」

「師匠、何故そんなことを?」

「魔法には流行り廃りがある。その現状を知る為だ」

「どれも同じくらいじゃが、強いていうなら今の学園の生徒の中で特に見るのは火じゃ」

「どのくらいの割合だ?」

「3割くらいじゃな」

「本当にそうなのか? 怪しいな」

「師匠、儂を疑っているのか?」

「課題だ。31人以上の魔法の属性の使用データを集めて統計にして来い!」

「お、鬼じゃ。統計学なんて数学研究者しかやらぬのじゃ」

マリーがそう言って渋々俺と別れる。現実では中学、高校でデータ、大学で統計学習う以上、数学者じゃなくとも出来るって感覚なんだよな。


そう言えば冒険者ギルドってどこだ? くそっ、セーブしてマリーに聞いて置けばよかった。場所だけ聞いたら後はロードして先ほどのようにお別れする。今度からそうしないとな……やっちまったもんは仕方ない。こういう時こそマップ機能の出番だ。マップ検索で『冒険者ギルド』と検索し、その場所に向かう。その前にセーブ、セーブと。

『セーブ処理が完了しました』




「ようこそハメリア支部冒険者ギルドへ」

冒険者ギルドに着くと渋い親父声がカウンターに響く。カウンターにいるのは二人。一人はガラの悪そうな中年親父だが民度が低いと思われるこの世界で挨拶をした男だ。第一印象はかなり良い。挨拶しなかったらヤクザか盗賊かのどちらかと思ってしまう人相なだけに余計にな。

もう一人は痩せ細った青年男性。無愛想そのものだが他の冒険者は挨拶をしたおっさんが余程怖いのか或いは絡まれたくないのか、こちらの青年が対応して忙しそうにそれを捌いている。

どちらにするべきか迷っていると、セーブ&ロードのことを思いだし何か不都合なことが起きてもやり直せることを思い出して、強面のおっさんに聞くことにした。

「すまないが、冒険者の登録をしたいんだがこちらでも出来るかね?」

「もちろん出来ますよ。私の方で手続きを致しますか?」

「よろしく頼む」

おっさんが引き出しの中からカードらしきものと羽根ペンを取り出した。

「お名前は?」

「ショージ」

俺が名前を告げるとおっさんのペンからカードに名前が刻まれ、カードを渡された。

「ショージ様。冒険者登録の方が終わりましたのでこのカードをお渡し致します」

「ありがとう」

たったそれだけかよ。しかも手数料や登録料が無料!? すげえな。これなら誰だって冒険者になれるな。

「……っ! それでは冒険者について説明します。冒険者は直接依頼人あるいはギルドが仲介したものから依頼を受け、それをこなす職業です。また冒険者には上から順にA、B、C、D、Eの五つのランクがあり、A級に近づくほど依頼の難易度が上がりますがその分だけ報酬も増加します。それぞれ昇格に必要な条件を満たした場合、昇格することが出来ます」

話を聞く限りマリーが相当凄腕の冒険者だとわかるが、これまで読んできたファンタジーものがファンタジーし過ぎたのと、マリーの格好がアレなだけにとてもそうには見えないけどな。ホブゴブリンを無傷で倒せるのは状況次第じゃC級でもいそうだし、一番難しそうなワイバーンにしたって槍を投げて頭を貫けば楽勝だ。一番難易度が低い世界ってここなんじゃないのか? この世界にゾンビキメラがいたらこの世界が終わりそうな気がするんだが、大丈夫なのか?


「なおショージ様は冒険者登録したばかりですのでE級冒険者です。E級冒険者が冒険者ギルドが仲介した依頼を5回こなすことでD級冒険者に昇格出来ます。ここまでわからないことはありますか?」

「いくつか質問がある」

「何でしょうか?」

「魔物を狩った場合、死体をどのように処分したらいい?」

「魔物の死体は基本的に放置しても構いませんが現在冒険者達の間で専門のお店に死体を持ち込んでそれを売ってお金を稼いでいますので荷物がかさばらないのであれば持っていくことをオススメします」

かさばる? ハッハッハッ。このメニューコマンドの力を使えばどんな荷物もかさばることなく移動させることだって出来るんだぜ!

「もう一つ質問だ。依頼の中には魔物を狩るものもあるはずだ。魔物を狩った証拠として死体をまるごとギルドに納めれば良いのか?」

「いえ、一部だけを納めて頂ければ結構です」

「最後の質問だ。護衛の依頼をした場合、依頼者が護衛するルートを変更しようとしたらそれは止めた方がいいのか?」

これはさっきのライアンの依頼──俺は目が覚めたらあそこにいただけなので受けていない──で起こったケースだ。こういう対処法をしっかりと教わっておかないと面倒だからな。

「原則、護衛ルートを変更しないようにして止めて下さい。護衛ルートを変更する場合はその依頼のレベル以上の魔物が現れ、冒険者や依頼者に命の危険が迫った場合などやむを得ない事情でしか変更出来ません」

だとしたら判断を間違っていたのはライアンの方か? いやギルドの基準で言うとライアンの判断は正しかった。何せその魔物が依頼人達を襲うどころか、依頼人達に気づかれる前にイレギュラーたる俺が倒してしまったんだから何事も問題はないはずだ。

「わかった。もしわからないことがあったらその度に確認させてもらうがかまわないな?」

「はい。どうぞよろしくお願いいたします。それでは早速ご依頼をなされますか?」

「いや、待たせている奴がいるからまた後にしておこう。そいつを放って置くわけにはいかないが紹介しようとしてくれたことに感謝する」

ちなみに待たせている奴とはマリーのことではなくライアンだ。マリーを待たせている訳じゃなく、待っている側だからな。

「いえ当たり前のことですよ。それではショージ様、またのお越しを」

おっさんに気に入られ、冒険者ギルドから去る。あのおっさん、本当に冒険者ギルドの職員か? 接客態度があまりにも良すぎる。なんと言うか妙だ。あの言動を見るからに元冒険者ではなくどこかの超一流ホテル、いや宿屋の接客をやっていたに違いない。見た目がヤクザになったから首にされたんだろうな。偏見だけど。




ライアンのいる武器屋に着くと予想通り、ライアンがいた為に声をかけることにした。

「ようライアン。武具の方はもういいのか?」

「まあな。今回は襲ってきた魔物が多かったがショージのおかげで少し手入れをするだけでよかった」

「そんなによかったのか?」

「この剣は元々切れ味が落ちにくいし、しょっちゅう修理に出す鎧もショージが助けてくれたおかげで返り血だけで済んだ。それを拭くだけでほぼ完璧な状態だ」

「おいおい俺のことを紹介してくれるって約束だろ。ライアンのねーちゃん」

そう言って現れたのは小柄な髭親父。ファンタジーに出てくるドワーフをかなりリアルにしたような見た目だ。


「そう慌てるな。ショージ紹介するぞ。武器屋の親父ことガトラだ。この剣もガトラに制作してもらった」

「ガトラだ。うちの店をよろしく」

「あの剣を制作したのか?」

「まあな。そういうのは鍛冶屋が専門なんだが余りにも注文量が多いと稀に武器屋でも作るように鍛冶屋から依頼が来るのさ」

「俺の槍も製作して貰いたい……と言いたいが金がないからな。払うのは出来上がったらでもいいか?」

「おうとも。そのくらいなら構わねえよ。これまで使っていたショージの兄ちゃんの槍はどんなものなんだ?」

「これだ」

それまで使っていた槍を差し出すとガトラが驚愕に満ちた顔をしていた。


「こりゃ驚いた……なまくらでもなければ業物って訳でもない。まさしくキングオブスタンダードと呼ぶべき代物だ」

「なんだそりゃ?」

「実力相応の武器ってのは弱すぎても強すぎても駄目なんだ。実力の割に武器が弱すぎたら自分の力を発揮する云々以前に死ぬし、逆に強すぎたら気が強くなって無茶をしでかす。ただの量産品なら初心者から中級者までしか扱えないが、この槍はそれがない。初心者から上級者まで全ての人間が実力に合わせた動きをしてくれる所謂、原点にして頂点。それがこの槍だ。これこそが鍛冶屋の目指す究極の武器といってもいいくらいだ」

「そんなものを使っていたのかショージ……だがガトラ、ショージは槍の動きが素人にも関わらず私よりも遥かに速く魔物を倒していたぞ?」

「だから言っただろう。実力に合わせた動きをしてくれるって。槍術そのものが実力とは限らねえんだ。槍術が素人なのにそれだけの実力があるってことは速く動けるものがいいな」

ガトラがそういって出したのが竹槍だった。竹ってこの世界にあるのかよ……

「おい、ガトラ。私の面子を潰す気か?」

「じ、冗談だよ。冗談。そもそもこんな槍で魔物を倒せる訳ないじゃないか」

「………………」

「えっ、何その無言。もしかして本当にやれるの? オジサンスゲー気になんだけど」

「オークを無傷で倒したと話した時点で察しろガトラ」

「そ、そういえばそうだったな。まあとりあえず地下に練習場があるから、そこでこの三本を振ってみてくれ」

ガトラに三本の槍を渡され、ガトラとライアンとともに地下の練習場に向かう。ここなら確かに誰の迷惑もかけないわな。


「よく、あんな動きでオークを無傷で倒せたな……はっきり言ってめちゃくちゃだ」

そこまでいうか。現代日本の一般人が道場とかそういう施設にでもいかない限り、武術を習う機会は体育のみで、それも剣道や柔道だけだ。

「いっておくが俺は槍でオークを倒した訳じゃなく石でオークの頭をぶち抜き、殺したんだぞ」

「……もしやホブゴブリンもそれで殺したのか?」

「そんなところだ。魔法よりもこっちの方がより速く、より正確に殺せるからな」

俺はレベルアップによって得た馬鹿力を使って、槍を数十m離れた的に当てる。槍は的を綺麗に貫通した。

「すげえな……後で弁償してもらうからな」

「ええっ!?」

「今のはショージが悪い。壊したものは弁償する。それが大人の常識だ」

異世界ファンタジーをテーマにしたラノベなら「そのパワーにあった良い槍を作ってやるよ」くらいのことを言いそうだったんだが、現実はそうもいかないか。

「で、何をすればいい?」

「素人に任せられる仕事は武具磨きだ。上にあるもん全て磨いてこい」

「めんどくさっ」

「その代わりと言ってはあれだ。武具磨きしたらお前にあった槍を作ってやるよ」

「そうか。よろしく頼む」

俺は、近くにあった汚れ落としの為の布を持ち武具を磨き始める。武器は柄や持ち手を中心に、防具は隙間を中心に丁寧に汚れを落とす。確かに武器は刃とか、その部分は大切なのかもしれない。しかし武器や防具はあくまでも持ち主を助ける為の道具でしかない。槍の柄がぬるぬるしていたり、全身鎧の関節が動かなかったりしたらまともに力なんて出せる訳もない。つまりだ。持つ場所にこそ武具の価値はある。これを疎かにするやつほど俺は弱いと思っている。




「ところでライアン。これからお前はどうするんだ?」

武器屋にあった武具を磨き2時間経過するとようやく終わり、ライアンに話しかけた。

「私か? 宿で寝ようかと思う。依頼をしようにももう遅いしな」

まだ午後3時過ぎだぞ? いや、スペインだとシエスタ──お昼寝タイムのこと。某ラノベに出てくるメイドの名前ではない──の習慣があるから勤務時間は日本とは違ってかなり短い。昼寝をしない分活動時間が短くなって就寝時間が長くなっているのか?

「俺は依頼をあと一つくらいやってから宿に泊まる。何か用があったらマリーに伝えておいてくれ」

「あまり遅くなるなよ?」

ライアンが宿屋に向かい、それを見送る。遅くなるなと言われても遅い時間の基準がズレているからわからないんだよな。

それではまた一週間後にお会いしましょう!

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