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真夏は書きかけの物品帳を見せた。

 納戸に詰め込まれている贈り物の数々に、呆れと感心を浮かべつつ、真夏はそれらを書きとめることからはじめた。どんなものがあるのかを記しておけば、処理をするとき役に立つ。品をごまかし運ぶ者が出ないとも限らない。品はそれぞれ種類ごとにわけて保管されているので、物品帳を書くことは難しくなさそうだ。


 誰か手伝いのものがいるかもしれないと思っていたが、これならば自分一人でもできるだろう。屋敷は今、色々な意味で混乱している。こういうものの処理や差配をするのには、自分が一番の適任者だろう。


(俺は部外者だ)


 真夏は家柄の確かな、久我家と家格を比べても遜色のない大伴家の者。もともと家人として雇われたのではなく、好奇心から紛れ込んだ者だ。久我の家がどうにかなったからといって、次の仕事を探さなければ飢えてしまう、という心配はない。だからこそ、自分の身の安全と姫の行く末の不安にはさまれることなく、外側からの視線で行動ができる。


 朔の父の失脚を知らせてきた今出川実篤の言っていたように、無位無官であったから、この場に居合わせることができた。だからこそできる、姫を守る術がある。


(俺が今、成すべきことはそれだ)


 思考の身軽な立場である真夏が、率先して屋敷の差配を行い、姫の当面の暮らしを支える。それこそが真夏がおこなえる、ささやかだが堅実な彼女を救う最良の手だてだ。


 贈り物それぞれを詳しくしたためる真夏は、さやさやと近付いてくる衣擦れの音を聞いた。振り向けば、芙蓉が薄い笑みを浮かべて立っている。作業を止めた真夏は、体ごと彼女に向いた。


「何をなされているのです」


 芙蓉の笑みに、底の知れない得体の無さがあった。彼女に話しかけられるのは初めてだ。舟遊びで朔を腕に抱きとめた時も、芙蓉は真夏に話しかけてはいない。


 ほんの少しの警戒を持ちつつ、真夏は書きかけの物品帳を見せた。


「これらは姫にとって不必要のもの。父君が失脚なされたとなれば、当面の暮らしの金子は、こちらで用意をしなければならないでしょう。物品帳を作っておけば、これらを金子に換えるとき、役に立つ」


 芙蓉は得体の知れない笑みを浮かべたまま、真夏を見ている。その目の奥に、疑心が光っていた。


 自分は信用をされていない。

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