↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【にくゑ】ある田舎の村が焼失するまでの全記録。【禁断の因習村百合ホラー】  作者: カクナノゾム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/106

林田美穂 図書館の夢

「本棚が何階分もあってね、見渡す限り本ばっかり。古い本も新しい本も、きっと何でもあるとよ」


 言葉を重ねると、健太の表情が少し和らいだ。

 それでも彼の目はどこか曇っている。


「美穂が読んでくれると……すごく分かる。文字はもう、にじんでしまうのに」


 その声が胸に沁みた。

 美穂は、彼が自分の言葉を必要としてくれていることに、やるせないほどの喜びを覚えた。


 そして同時に、健太が小さく頷きながら「美穂のおかげで、本の世界がまだ見える」と呟いたことに、胸が熱くなった。


「この村を出て、もっと色んな本を一緒に読むとよ」


 自分でも驚くくらい真っ直ぐに言葉が出た。

 夢を語る声は震えていたけれど、嘘ではなかった。

 健太はしばらく黙っていた。

 そしてぽつりと口を開く。


「この村は……やっぱり何かおかしい」


 美穂の胸がざわめく。

 誰にも口にできなかった気持ちを、同じように抱いていたのだと知った瞬間、目の奥が熱くなる。


「健太もそう思う?」

「うん……でも」


 彼は視線を落とし、あゆみの方角を見た。

 そこにはいないのに、まるで気配を探すように。


「でも、この村を出たら、あゆみには会えなくなるけん……」


 その言葉に、美穂の胸が締めつけられた。

 やるせなさと切なさがいっぺんに込み上げ、笑顔で隠すしかなかった。


「……それでも、私は一緒に行きたいとよ。健太となら、どこでも」


 声に出した途端、胸が震えた。

 言葉は届かないと知りながら、それでも願わずにいられなかった。


 昼休みの鐘が鳴ると同時に、二人は弁当箱を片づけた。

 パンフレットを鞄にしまい、名残惜しさを胸に抱えながら立ち上がる。


 風が少し冷たくなってきて、木の葉がさらさらと揺れていた。


「……戻ろうか」

「うん」


 健太の返事は静かだった。

 その横顔を見て、美穂はまた胸が痛む。彼の視線の先には、自分ではない誰かがいる気がしてならなかった。


 廊下を歩いて教室に戻ると、空気が妙に張り詰めていた。

 梓と清音が机をはさんで向かい合っていて、その横にあゆみが立っている。


 三人とも表情を変えず、けれど互いのあいだに見えない糸が張られているようだった。

 笑っているようにも見えるし、にらみ合っているようにも見える。


 美穂には、そのどちらなのか分からなかった。

 思わず健太と顔を見合わせる。


 何かを尋ねようとしたが、声が喉で止まった。

 教室に漂う空気が重すぎて、言葉を出せば弾かれてしまいそうだった。


 静かな緊張の中で、美穂はただ自分の席に腰を下ろした。


 机の中のパンフレットの感触だけが、かろうじて現実につながっているように思えた。


 § § §


【筆者後書き】


この章は、意図せず恋の話が集まりました。

美穂の想い、あゆみの想い、清音の想い。

それぞれの形で、誰かを愛している。

なんでしょう? この話を書いていると頭が……

 ここまでのご愛読、ありがとうございます。

 少しでも先が気になるな、と思われましたらお気軽にブックマークしてくださいね!


 そして、面白い! と思われましたら是非☆☆☆☆☆で応援してください!

 ランキングが上がれば、より多くの人に届きます。

 貴方の応援で、どうかこの物語を広げて頂けると!!


 コメント、レビューなども大歓迎です。

 大長編ですが、追いかけて頂いて後悔はさせませんよ!

 全話投稿済みなので、どうか最後までお楽しみ下さいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。