断片資料|幼い約束
【村の南東方面の民家より発見された日記より】
八月十二日
今でも思い出す。
清音ちゃんと初めて会ったのは、五歳の時。
わたしは村長の家に、母さんと一緒に行った。
母さんは掃除の手伝い。わたしは庭で遊んでいいって言われた。
そこに、清音ちゃんがいた。
縁側に座って、真っ赤な実を食べてた。
「あゆみちゃん?」
清音ちゃんが言った。
初めて会ったのに、わたしの名前を知ってた。
「これ、食べる?」
差し出された手の上には、ぐにゃりと柔らかい、赤い肉のような実。
わたしは怖くて首を振った。
清音ちゃんは悲しそうに笑った。
「そう。美味しいのに。お腹が空かなくなるのに」
それから、わたしたちは親友になった。
村の子たちは皆、清音ちゃんを怖がってたけど、わたしは平気だった。
清音ちゃんは、誰よりも優しかった。
(中略)
十歳の夏。
川のほとりで、清音ちゃんがこう言った。
「あゆみ、ずっと一緒におってくれよる?」
「うん。約束するよ」
「よかった。なら、あなたには“目”をあげない」
あの時は、言葉の意味がわからなかった。
ただ、清音ちゃんの指が冷たくて、氷みたいだったことだけを覚えている。
あの約束、清音ちゃんはまだ覚えてるかな。
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