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にくゑ【ある世界が終焉を迎えるまでの道程。そして――】終焉の探偵  作者: カクナノゾム
第一部 にくゑ

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断片|井戸のそばで

 【メモ帳より】


 村に来て三日目。雨が降っていた。

 学校の帰り、村の外れの井戸のそばで、清音を見かけた。


 制服の白いシャツ。でも足元は泥だらけで、じっと井戸の底を見つめていた。


「何してるの?」

 声をかけると、彼女はゆっくりとこちらを向いた。

 その瞳は、深くて暗い水溜りみたいだった。


「神様を呼んでるの」

 彼女は鈴を転がすような声で言った。

「でも、今日は返事がないみたい」


 それから、帰り道に井戸のそばで立ち話をするようになった。

 清音は時々、不思議な歌を歌ってくれる。


「いちに、にくゑが落とし肉」

「さんし、静かな夜の後」

「ごろく、喜んで次の子を」


 数え歌みたい。意味なんて、今はまだわからない。

 ただ、そのメロディが心地よくて、私は隣でずっと聴いている。


 ある日、清音が私の手を取って言った。

「梓ちゃん、あなたは私を助けてくれる?」


 私は訳もわからず「うん」と頷いた。

 その時、清音が見せた一瞬の笑顔。


 あれが、この村で見た中で一番綺麗なものだと思う。


(欄外に、後から書き足したらしい鉛筆書き)

 ――あとで気づいた。あの歌は、洞窟の板に彫られていた歌と、同じ節だった。

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