エピローグ☆哀しい鳥
バラバラバラバラ……。
太平洋の真ん中。上空からは一面の海しか見えない。ヘリで移動している。
「さて、ここいらで始末をつけるか」
荒巻博士が合図すると、警備兵たちがひよりの装着しているパラシュートを取り外し始めた。
「何をするつもりなんだ?!」
修一がひよりに近づこうとすると銃口を向けられた。
「ハッチをあけたまえ」
ごおお。風が吹き上げてくる。
「101。飛び降りなさい」
「なっ!?だめだあ!!」
「修一くんを助けたいだろう?さあ、飛び降りるんだ!」
ひよりは躊躇していたが、グッと歯を噛みしめると、開いているハッチから海上へ飛び降りた。
「ひより!」
修一はすぐ後を追って自分も飛び降りた。
空中でひよりをキャッチして、修一のパラシュートを開く。
ヘリから銃が二人めがけて乱射された。しぼむパラシュート。きりもみで落ちてゆく二人。
「どちらにせよ、溺れて死ぬだけだ」
荒巻博士はヘリのハッチを閉めて、去っていった。
「ひより、ひより……」
揺すってもひよりはぐったりとして動かなかった。修一も流れ弾があたって、自分でももう長くないとわかった。海水が容赦なく二人をもみくちゃにする。
『修一!!!もうすぐ上島開発研究所の船がそこへ行くから!!!死んじゃだめ!』
鳥が旋回していて、美佐子の声が届いた。
「美佐子……。すまない。今まであった出来事はデータにして上島所長に託してくれるか?」
『テレビ局に持っていくわ!』
「そうだな、それでもいいかな……ぐぼっ」
『修一!修一!!!!』
ひよりをしっかり抱きしめて、修一は海中へ沈んでいった。
遺体はあがらなかった。
後日その海域に訪れた美佐子は白い花束を投げて、祈った。
「修一、ひどいよ私を置いてゆくなんて」
美佐子の涙が海の水と混ざった。
世間では、西方研究所の人体実験騒ぎでもちきりだった。荒巻博士には処分がくだされるだろう。それでも、修一とひよりはかえってこない。