第二次黒滝城攻め その二
栃尾城に、兵達が満ち溢れんばかりに集まってきている。
古志郡の兵達を集めたわけだが、前回よりも兵の数が増えている。
これはどうしたことなのだろう?
前回の勝利を鑑みて、勝ち馬に乗ろうとしている者達が集まって来たのかもしれない。
まあ、それならそれで構いわしないけれど。
兵の数が多ければ、それだけで驚異となる。
無論、無策でぶつかるような愚は犯すまいと思うが、それでもただそのままぶつかるだけでも、十分に力を発揮するだろう。
それに、相手方にも威圧感を与える事が出来る。
浮き足立つ相手に対して、士気が高いこちらとなれば勝利は揺るぐことはあるまい。
「準備はいいわね?それじゃ、出陣!」
「「「おおー!!」」」
私の号令に従って、兵達がぞろぞろと進み出す。
統制も何もあったもんじゃない。
所謂、寄せ集めのようだ。
いずれは合同訓練何かをして、部隊間の意思の疎通を図るようにしなくては。
今回はともかく、より強大な相手と相対する時には致命傷にもなりかねない。
一つの生き物のように動くことがやはり理想よね。
黒滝城が近くなると、布陣して夜に備える。
決戦は翌日の朝からになるだろう。
主だった将達を本陣に集めると、軍義を開始する。
「それで、今回はどうしようか?」
「前回と同じで良いのでは無いですか?」
「いやいや、それはいかん!まだ、それほど日も経っておらんというのに謀叛をしでかすのだ。何らかの考えあっての事だろうよ。」
「と、いうのならばどうします?」
「いや、どうしたものだろうか?」
「小川殿、それでは答えになっておりませんぞ。」
「やはり、前回同様に正面から乗り込む部隊と、搦め手を突く部隊とに分ける以外には無いのでは?」
小川殿が反論するも、その反論に内容が伴わない事から鮎川殿にあっさりと否定される。
確かに、前回と同じに攻めるのが正攻法よね。
前回は、一番槍の手柄は黒川殿が持っていったのよね。
それで、前の時には参戦していなかった小川殿が反応したのかもしれないわね。
前回と同じように攻めるとしても、最前線の将も同じにするなんて私は言って無いんだけどね。
さて、どう配置しようかと案じていると手を上げ発言を求める者がいた。
「どうしたの、中条殿。」
「一度、黒田秀忠殿と話をさせてはもらえませぬか?」
「それはどういう?」
「謀叛に及んだ理由と、こちらに降るつもりがあるか話を聞きたいのです。今ならばまだ戦にはなっておらず、また本当に謀叛に及んだのか、真意が分かるはずです。」
「叛意は明らかでは無いのか?」
「故にそれを調べる為にも向かうのですよ、黒川殿。」
「うーん、確かに槍を合わせる前に一度話を聞いておいても良いかもしれないわね。それじゃ、明日朝一番にでも聞いて来て。」
「かしこまりました。」
中条殿の提案に乗ることにした。
相手の考えが分かれば、そこを直すことで分かり合えるかもしれない。
若干手遅れな気もするけど、やるだけやってみても悪くは無い。
唯一の懸念は中条殿の身の安全なんだけど、まあ大丈夫よね。
自分からやりたいって言ってきた訳だし。
「それじゃ、誰が一番初めに行くか決めるわよ!」
「「「はいっ!」」」
手を上げ、自分がとアピールするのは前回同様、揚北衆の四人に加え、小川殿と竹俣殿の今回の戦に参戦した二人。
本当に脳筋ばかりね。
どれだけ前線に立ちたいのよ。
まあ、バカな男って嫌いじゃないけど。
こういうときだけは、定満のように後ろでどっかりとしていてほしいわね。
第一、討ち取られるような目にあったらどうするのだろう。
武勇を誇るのもいいが、命あっての物種。
くれぐれも命を粗末にするような事は自重してほしいものだ。
さて、どう決めるかというと、何故か前回と同じくじゃんけんによるものとなった。
それでいいのかと思うが、不満が出ないというのならそれでいいか。
じゃんけんの結果、先人は鮎川殿になった。
知ってか知らずか、勝利のブイサインをしている。
ああ、チョキで勝ったのね。
そして、搦め手から攻めるのは景家となった。
あなたも参加していたのね。
どのような布陣で攻めるか決まった所で、私達はそれぞれの陣幕にまで戻っていく。
そして、翌朝。
特に夜襲も無く日が昇った。
「それでは行って参ります。」
「大丈夫だと思うけど、くれぐれも気を付けて。」
「はっ!お気持ちありがたく、では。」
そうして、黒滝城に向けて中条殿が移動していった。
さて、私達はいつでも戦える準備をしておかないとね。
あ、五十話目となりました。
投稿してから気付くアホさ加減が何とも・・・
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