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春日山城救出

栃尾城にて兵を興し、急ぎ春日山城に向かう。

制圧した古志郡より兵を出す。

私が始めに来たときよりも、かなり兵数が増えている。

それもそうか。

平定した中郡に、揚北衆が治める下郡。

元いた兵達と併せても、かなりの数が見込めるだろう。

それに、新たに私のというか長尾家の麾下に加わった将達。

彼らの働きにも期待したいところだ。

下郡を制圧する際に、反抗する連中を討ち倒す時には動いてもらったが、私が直接指揮するには至っていない。

何しろ書類仕事に追われていたからだ。

それもあってか、私が頭に立つとあって士気は高い。


私にとっては実家のようなものだし、現在も兄上の住まう場所でもある。

城がどのようになっているか。

気にならない訳がない。

難攻不落との呼び声も高いが、いかんせん指揮すべき兄上は、私の預かる栃尾城に来てしまっている。

城代を一時的に任された者がいるだろうが、どの程度まで信用できるか分からない。

何せ、兄上がそれなりには信頼していたであろう、黒田秀忠が攻め寄せたのだ。

よもや、それに呼応して城を明け渡すような事をしていないだろうね?

そうなっていたら、私何するか分からないわよ。


春日山城に近くまで来ると、物見を出す。

今なお、兵で囲った状態ならば、一戦交わしてあげればいい。

道中、血気にはやる揚北衆の一部が目をギラつかせ始めており、いい加減私も怖くなってきた。

暴れる場所を与えてあげないと、何をしだすか分からない。

まあ、軍令には従ってもらうけれど。

破れば、それこそどえらい目に会う事間違い無しなので、そこは何とか抑えてくれると思う。


「ウフフフフ・・・」

「何だ?景虎様、急に笑い出したぞ。」

「バッハッハ、儂も何時も笑うようにしておるぞ!」

「いや、柿崎殿の笑い方と違ってもっと、こう・・・」

「おそらくこの後、黒田勢をどう叩き潰すか思案されておるのよ。」

「それで笑いが浮かぶか?」

「勝ちが見えれば笑みも出よう物だろう。」

「そんなものかね?にしては少し陰湿な・・・」

「実乃殿、そのような事を言って逆鱗に触れてもしりませぬぞ!」

「なっ、それがしは一言もそのような事!」


何とも締まらない。

末端の兵達と違い、武将達は余裕を感じさせる。

これが、戦場では八面六臂の活躍を見せるのだから分からない。

それと、私はそう簡単には怒らないわよ。

身内を傷つけられれば、その限りじゃないけど。

やがて物見が帰ってくる。

懸命に走ってきたのか、息も絶え絶えだ。


「お疲れ様。どう?」

「はっ!既に黒田勢は春日山城より撤退した模様。」

「そう、それで?」

「はっ!付近の者に確認したところ、黒滝城へと引いた模様。」

「それじゃ、黒滝城に進軍ね。ありがとう、下がっていいわ。しばらく休んでいなさい。それと誰か兄上に伝令。春日山城より敵が撤退したことを伝えてもらえる?」


物見を下がらせ、栃尾城に伝令を出す。

私が率いた軍勢を見て、逃げだしたというところか。

存外、根性が無い。

反旗を翻すのであれば、兵を差し向けられる事くらいは分かっていたはずなのに。

ここで逃げて城で守りを固める。

それはいいのだけれど、その次の手はあるのかしら?

何も無い籠城は愚策も愚策。

援軍も期待出来ないこの状況で、どうするつもりなのだろう。

よっぽど、乾坤一擲大将首を狙うぐらいしないと勝ちはあり得ないだろうに。

そんな最中ふと気付く。


「あら、始めての城攻めね。」

「そういえばそうなりますな。」

「定満は経験が?」

「無論にございます。何なら一手ご教授致しましょうか?」

「うーん、止めとくわ。その代わりおかしいところがあれば、その都度教えてくれた方がありがたいわね。」

「成る程。実地訓練というわけですかな。」

「そんなつもりは無いのだけど、結果的にはそうなるかもね。」


さて、それでは黒滝城に向かおうか。

とはいえ、ここまで急ぎで行軍してきたので暫しの休憩。

直ぐに動いたら、さっきの物見君も大変だろうしね。


「景虎様!黒滝城攻めの先鋒は任せて下され!」

「いやいや、色部殿。ここは任せてもらいたい。」

「鮎川殿、それは通りませぬ。ここは黒川清実に!」

「何も言う黒川殿!今回は新発田に任せてくだされ!」


一番槍の功名目当てか、それとも先の下郡攻めの際に様子見をしていたからか、もしくは敵対してしまった事を濯ぐ為か。

どうにも揚北衆がアピール合戦を始める。

こんな事も戦にするとかって、私今少し上手い事考えたわね。

口に出したら、誰に笑われるか分からないから言えないけど。


「ふむ、こんなところでも争うか。」

「バッハッハ、今回は譲るべきでしょうな。」

「まっこと、揚北衆は血の気が多い。」

「それは儂もか?」

「中条殿も揚北衆でしたな。これは一本取られましたな。」


などと四人の様子を見て、景家と定満と中条殿が話し合っている。

こちらは、自らが先頭きって出ていこうとは言わないようだ。

でも、あなた達もこの場にいる時点で同じ穴の狢だと思うんだけど。

四人に囲まれた、不可思議な状況のまま休憩を過ごすのだった。

ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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