こぼれ話 景虎の初陣参加者の会話
ちょっとしたおまけですね。
喋り倒してます。
本編にはまったく関係ありません。
何とか戦が終わり、ホッと胸を撫で下ろした者が多数いるだろう。
今なお、興奮状態絶賛突入中の者もいるのは、戦においてはよくあることか。
「ぐあぁぁぁ、終わったぁぁぁぁ。」
「お、熊さんじゃねーかよ。」
「ん?その声は八っつぁんかい?」
「おう。よく生きてたな。」
「そりゃ、生き抜くために必死だったからよ。そっちこそ無事みたいだな。」
「おうよ。それにしても久々に大変な戦になったよな。」
「全くだよ。すげー疲れたわ。」
「そういや、お前さんは景家様のとこの配置だったな。」
「そうそう。まさか奇襲仕掛けるなんて思いもしないって。状況次第じゃ逃げ出す算段もしてたってのに、全ておじゃんになったわ。」
「それでも勝てたから良いじゃねーか。」
軽口を言い合いながら二人は再会を喜んだ。
何時、どのタイミングで命を落とすことになるか分からない。
この時代、人の命は余りに軽い。
それこそ風が吹けば吹き飛ぶほどに。
だからこそ、顔を知る相手が生きていた事を素直に喜べる。
「で、どうだったんだ?」
「そりゃ、号令で敵陣一直線よ!」
「なんだ?活躍出来たのか?」
「これが意外なほどに敵が脆くてよ。腹でも壊してたんかね。」
「いや、さすがにそれはねーんじゃねぇか?」
「なら実力か?」
「そりゃもっとねーわ。」
「ひでーな。ま、んなことは自分が一番わかってるわ。」
そうして笑いあう。
こうして笑いあえる現状を噛み締める。
「それにしても景家様ってのはおっかねーわ。」
「そうなのか?」
「そりゃそうよ。『バッハッハ』とか高笑いしながら相手を斬り倒していくんだぜ。しかもその速度が全然おさまらないんだよ。」
「そりゃ、こえーわな。」
「あんなん突っ込んで来たら一目散に逃げるわ。」
「そりゃ同感だわ。」
「それでそっちはどうだったんだ?」
熊さんが、八っつぁんに問いかける。
それを何とも言えない顔で答える。
「何か信じられない物を見た気がするんだよな。」
「そうなんか?」
「景虎様の近くに配置されてたんだけどよ。何て言うか“毘沙門天の化身”だっけか?それを信じてもいいかと思ったよ。」
「ほう?」
「始めから刀構えていてよ。何で刀よって普通思うだろ?槍で突かれりゃ、距離の差が出て普通ならやられちまうだろ。」
「そりゃそうだ。」
「でもよ、そうは簡単にいかないんだよ。」
「それで?」
「一斉に突かれた槍の穂先を、こう刀でサクッと斬り倒してよ。んで、柄で叩かれそうになるのを防ぐんだよ、こうさ。」
身振り手振りを交えて、景虎がどのように戦っていたかを説明する。
「そんで、さっと相手の懐に潜り込んで、何人も斬っちまってたな。終いにゃ、皆おっかながって近づいて来るやつ、いなくなったな。」
「ほぇー。スゲーな。」
「だけじゃないんだよ。」
「するってーと?」
「敵が近くに来ないと分かるや否や、最初に斬り倒してた奴から槍拾い上げてよ、それ遠くにいる連中に投げつけるんだよ。」
「は?」
「その槍に、胸やら何やら貫かれて被害に遭ったやついっぱいいるんじゃねーかな。」
「もう人間じゃねーよ、それ。バケモンじゃねーかよ。」
「おいおい、滅多な事言うなよ。誰が聞いてるかわかんねーぞ?」
「おっ、おう。でも流石にそれは驚くよな。」
「それに、敵とぶつかってると防御が薄くなる場所って出るもんだろ?」
「そうだな。」
「そこに的確に兵を振り分けてくんだよ。『へい!ゆう!そっちはいいから次こっち』って感じでよ。」
「へい?ゆう?なんだそりゃ?しっかし、よくそんなに周りが見えてるよ。じゃないと戦の大将何て務まらないって事かいな?」
「どうなんだろな?」
腕を組んで、「うーん。」とうなる八っつぁん。
「まあ、何にしろ逆らわない方がいいんじゃないか?」
「そりゃそうよ。下手に逆らえばおっ死んじまうわな。でも、味方にゃ優しい方だからなぁ。」
「そうだな。それに、重太と弥太の二人と話してるときは、凄い穏やかな顔してるしな。」
「まあ、精々気を付けておこうぜ?」
「同感だな。」
そんな会話をしているうちに、八っつぁんに集合がかかる。
景家が兵を動かすようだ。
どうにも、今回の敵大将の領地をぶん取りに行くらしい。
「なんだ、まだやるのか。」
「ご愁傷さまだな。まあ、死なないように頑張ってくれや。」
「まったく・・・他人事だと思って軽く言ってくれる。」
「ま、無事に戻ってきたら一杯飲もうや。」
「また、あの酸っぱいどぶろくか?」
「それ以外にあるわけないだろ?」
「まあ、いいか。ほんじゃな。」
こうして二人は別れた。
名前は落語での定番ともいえる登場人物より拝借。
噂話はどんどん大きくなっていくのでしょうね。
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