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初陣その後

敵を討ち払い勝どきをあげたが、これで戦が終わりというわけにはいかない。

さっさと城で眠りたいところではあるが、勝ったら勝ったでやることが残っている。

それに生き残った敵兵を捕らえて、捕虜とすることも忘れてはならない。

さんざっぱらに攻撃をしたが、逃げる連中に対しての追撃は許可していなかった。

どう考えたって、追撃すればこちらの受ける被害も大きくなるのは、火を見るより明らかな訳だから。

それでも残された者はやはりいる。

怪我をして動けない者、早々に戦意を喪失し死体に隠れるようにしてなんとかやり過ごす者、逃げ出したがあっさり捕らえられた者など様々だ。

そいつらをふん縛って城の牢へと移送させる。

名のある将は含まれていないようだ。


それと同じくして、怪我を負うことの無かった者を集める。

追撃という形はとらなかったが、相手の大将首をまんまと得ることが出来た。

となれば、相手方の指揮系統はめちゃめちゃになっていることだろう。

まだ、戦の興奮冷めやらぬといった具合で、疲れているはずなのだがそんな様子をおくびにも出さない。


「定満、相手方に味方した所に使いを出して貰える?」

「使いですかな?してなんと?」

「勿論決まってるじゃない。今すぐ投降すれば命は助ける。これにつきるわ。」

「なるほど、離間策ですか。」

「そうそう、それそれ。」

「敵大将を討ったとあれば、投降する者も出るでしょうな。」

「誰か他の人が頭に変わる前に、さっさと動いておかないと。またこんな目にあうのは御免だわ。」

「全く同感ですな。すぐにあたらせましょう。」


まずは敵戦力の切り崩しからなしていかないと。

こちらも奇襲が決まったとはいえ、死人や怪我人が出ない訳がない。

その兵数の補充と敵戦力の減衰を同時に行うのは、もはや上策というより常識というものだろう。

それに降伏してくれれば、こちらの支配領域も増える。

元々持っていた所領を、そのまま安堵することは叶わなくとも、生きてさえいれば巻き返す事だって出来るかもしれない。

是非ともこちらがわに降って欲しいものだ。


「それと景家、泰重。疲れてるところ申し訳ないけど、軽く休息をとったら長尾平六郎だっけ?そいつの所領を押さえて来て頂戴。もう必要無いと思うから。」

「バッハッハ、そうですな。景虎様に、しいては晴景様に面と向かって歯向かったのですから、そのくらいは当然の事ですな。」

「分かりました。励まさしてもらいますのう。」

「無理言って悪いけど、よろしく頼むわね。」


大将であった長尾平六郎の所領は、勿論奪わないといけないだろう。

また反抗でもされたらかなわない。

弔い合戦とか、言い出されたらたまったもんじゃない。

二人と、それに付き従う兵達には悪いけど、手勢が限られている以上彼らに働いてもらうより他無い。

奥さんや子供がいるようなら、仏門に入ることをお薦めしよう。

なるべくなら、血を見るような事にならない方がいい。


「それで景虎様はどうなさるので?」

「私?私はもう眠りたいわね。」

「ほう?」


ちょっとした冗談のつもりだったが、そうはとられなかったようだ。

面倒な仕事を全部押し付けて、自分は高鼾。

まあ、それをやっても許されるとは思うが。

心象は決して良いものとはならないだろう。

でも、私は少なくともそんなつもりは無かった。


「嫌ね、定満。本当にするわけ無いじゃない。まずはこの辺一帯を綺麗にしないといけないでしょ?それを残った者達としようかと思って。」

「なんと!景虎様自らですか!」

「私だってあまり気が進まないわよ。それでも適材適所って言葉の通り、調略なら定満の方が優れているし、相手の所領を押さえるとなれば、景家と泰重に任せる方がいいと思わない?」

「そうかもしれませんが・・・」

「そうなると、細かい事は一先ず置いとくとして、残るは捕虜の様子を見るか、この辺の遺体の片付けになるでしょ?一時はお寺で修行してたんだから、お経くらい読めるしね。せめて迷わないであの世に行けるように、そのくらいはしてあげたいと思うのよね。」


そんな私の言葉に景家が感動したかのように、声をあげる。

え?

いったい何よ。


「毘沙門天の化身と噂されますが、御仏でもあらせられるか。信賞必罰を与えた後は、敵も味方も無いとおっしゃっているように見えますぞ!」

「確かにお優しい事ですのう。」

「まあ、晴景様の弟君ですからな。被害を被った兵達は元々は百姓ですし、戦が終われば恨み言を言わぬとなれば、民達の評価も得れますな。」

「ちょっと、そんなに持ち上げないでよ!」


あんまり持ち上げられると、何とも居心地が悪くなる。

自分が出来ることを、出来る範囲でしっかりとやっていく。

ただ、それだけの話をしていた筈なのに。


「さぁさぁ、こんなところで私をヨイショするよりもお仕事開始よ。はい、散った!」

「バッハッハ、かしこまった!」

「それでは行ってきますかのう。重太の奴を扱き使ってやってくだされ。」

「では早速書状をしたためますか。」


私の照れ隠しで言い出した言葉を聞いて、笑いながら私の元から離れる三人。

歳も私より上という事もあり、まだまだ子供扱いは抜ける事は無いのだろう。

さて、私も為すべきをなさないと。

ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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