第六十六話 デビル・サモナー Hパート
大変お待たせしました。
◇◆◇ ここからオーリガ視点です ◇◆◇
「うわぁぁっ!」
「エミリー!」
エミリーさんの悲鳴が響き、次の瞬間にエミリーさんと多数の屍食鬼が巻き込まれるのが見えて、わたしは目の前が真っ暗になってしまいました。
「そんな……わたしのせいで!」
わたしが妙な策をろうしたせいで、エミリーさんを死なせただなんて、クラウス殿に合わせる顔がない……。
下のドアが再び閉まる音で、わたしははっとして、坂を見下ろしたんですが……。
「うっわー。死ぬかと思ったっスよぉ……マジ怖かったっす!」
大量の屍食鬼の死骸の手前の壁の隅で、エミリーさんが、全身を伸ばして倒れているのが、目に入りました。
「エミリー!」
わたしは夢中になって、エミリーの元まで走りました。
「へへ……身体がもう少し大きかったら、アウトだったっス」
エミリーはズボンについた石の粉をはらいながら立ち上がって、ほおをかいたりして……。
「心配したんだからぁっ!」
わたしはエミリーを抱き締めると、緊張の糸が切れて涙を流してしまっていた。
「オーリガ特佐殿! みなさんお疲れのようですし、地上で休んでください!」
レックス殿が私たちに近付いて来て、進言してくれました。
「まだクラウスたちと合流出来てないのよね」
アデールさんは少し悩んでいるようでした。
「もう外はかなり暗くなっていますし、食事と睡眠を充分に取らないと、勝てる敵にも遅れをとってしまいますよ」
「そうね。魔力も体力もそこをつきかけているし、お言葉にあまえるわね」
「レックス殿たちはどうするのですか?」
「もう少しだけ残ろうと思っていましたが、情報を共有する必要もあるでしょうし、引き上げます」
わたしたちは、迷宮の中を移動しながらも、残された二人を思い、何度も振り返ってしまいました。
「オーリガ特佐どの! ご無事でなによりです」
かつての部下で、ともに死線をくぐり抜けた事もある、部族出身の女狩人が、駆けつけてくれた。
「中に仲間二人が取り残されているんだが、調べる方法はないものだろうか?」
「特佐……素に戻っていますね。ああ、失礼……。セラエノの神殿とも、念話網を構築していますが、復活した冒険者はいないそうです……」
念話網と言うのは、ラミールの冒険者ギルドで確立された、感応能力を持つ人間によるネットワークなので、まだ生存している事は確実だった。
「ありがとう。じゃあ会議で」
わたしは、かつての部下にお礼を言って、みんなのところに報告しに行きました。
「そうなの……。まぁ、救出を待っている可能性はあるけど、少し安心できたわね」
「あー……良かったっスねぇ。安心したら、お腹が空いて来たっすよ!」
「もうすぐ、焼魚と熱い汁料理をだしてもらえるそうですぞ、エミリー殿」
その後、供された夕食を食べたわたしたちは、情報を共有化するための会議が行なわれたのだけれど、疲れていたのか、エミリーさんが寝入ってしまったので、イレーネさんが部屋まで連れて行きました。
「ふむ。では、この屍食鬼がいた広場に前進基地を設ける事にしましょう」
わたしが、記憶を元に書き記した地図の一点を見て、レックス殿が宣言しました。
「今はもう屍食鬼はいないと思いますが、危険な事には違いありませんよ?」
「後詰めとして、協力できる事をみな、望んでいますから。仮眠をとったら出発します。お疲れのようですし、あなたたちは朝まで休んでください」
「わかったわ。お願いするわね」
わたしたちを代表して、アデールさんがレックス殿と握手をしていました。
その後、部屋に戻って、深い眠りにつきました。
◇◆◇ ここからクラウス視点です ◇◆◇
「こんなところに抜け道があったのか……。というか、通風口みたいなものか」
ランタンを手に先ほどの通路に戻ったのだが、わかれ道はなく、途方に暮れかけていたが、二メートルほど上に通風口がある事に、気づけた。
「わたしが先に行く――」
「どうしてだ? 魔物と鉢合わせでもしたら……」
カレラはなぜか、杖をストレージに戻しながら宣言した。
「結構狭いから、クラウスは苦労すると思う。鎧を脱がないと無理だし、剣も振れない――」
「おいおい!」
カレラは魔導師のローブまでもストレージに戻してしまい、下着姿になって振り返った。
「綺麗だぞ、カレラ――」
鈍いという自覚があるオレでも、その意味に気づいて、ほめてあげた。
「バカ――。汚したくなかっただけ――」
口ではそう言いつつも、カレラがほおを染めているのに気づいた。
「だが、膝や肘が痛いんじゃないのか?」
「抜かりはない――」
カレラはそう言って、肘当てと膝当てをストレージから取り出した。
「金属鎧では無理か……」
オレも装備をストレージに戻して、鎧下の上下の姿になった。
「身体を持ち上げて――」
カレラは、通風口のある石壁に手をついて、無防備な下着姿で、オレに背を向けた。
「ど、どうやってだ?」
カレラの扇情的な格好に、オレはどもってしまい、ほおが熱くなるのを感じた。
この華奢で、強く抱き締めれば、壊れてしまいそうな白い身体を、求めあうがままに手折った事を思い出すと、頭がクラクラしてしまう。
「やりやすいと思う方法でいい――」
迷宮で孤立していなければ、自制心を失ってしまった事だろう。口調はカミラ寄りで大胆さがカレン寄りだと、正直に言って、抗い難いのだ。
「じゃあ、尻を持ち上げるぞ……」
先ほどから視線が誘導されている尻に、オレは両手を伸ばした。
「そう……わかった――」
下心からだと思われそうだが、重心と安定性を考えるなら、尻以外の解は存在しない。
「じゃあ持ち上げるぞ。いちにのさんだ。いいな?」
「わかった――」
「行くぞ! 一・二・三!」
「はっ――」
カレラはすんなりと通風口のふちに手をかけて、オレが押し上げている事もあり、通風口に入り込む事に成功した。
「次はクラウスの番――」
中で向きを変える事もできないのか、オレに尻を向けた状態で、右手を差し出してくれていた。
「じゃあ行くぞ……そらっ」
オレは通風口に手をかけるべく、ひざのバネだけで飛び上がった。
「よっと……サンキュー……」
通風口に潜り込み、カレラの尻を堪能しながら進んでいった。
◇◆◇ ここからアデール視点です ◇◆◇
「ふぅ……。もう朝になったみたいね」
オーリガの家で割り当てられた部屋で、太陽の光が目元に差し込んだので目覚めてしまう。
「クラウスたちは……どうしているのかしらね」
クラウスとカレラ。あの二人なら、相当の事でもない限り、死ぬような事はないと思いたいのだけど。
「アデール殿! 大変ですぞ!」
布団から半身を起こして身じまいをしていると、イレーネが走り込んで来た。
「大変って……どういう事?」
クラウスの事ではないと信じたいが、胸が不安に押しつぶされそうになり、心臓が脈を打つ鼓動まで感じる事ができた。
「ラミールの冒険者ギルドでは、念話網という、共感能力者たちで構成された情報網があるのですが……」
少しして、オーリガも重苦しい表情を浮かべて入って来た。
「それで、どういう事なの?」
枕元に置いていた水差しに口を付けて、少し落ち着きを取り戻してから、問いかけた。
「レックス殿のパーティーが全滅し、セラエノの神殿で復活したそうです――」
クラウスの事でなくて良かった――。一瞬そう考えはしたけれど、突出したわけでもないレックスのパーティーが全滅するという事は、二人の帰還が困難になった事も告げていた。
事情というのは個人的な事ですが、母が死んだので、いろいろと手続きやら何やらで、当面は週二話公開ぐらいで進めたいと思っています。
ですが、何らかの形でけりをつけるまでは続けるつもりです。
自宅ではなく、会館の控え室でipadで書いたので、ここ数話はミスが多いかもしれませんが、指摘頂けると助かります。




