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第五十四話 ロンゲスト・マーチ Hパート

もう少し、第八章は続きそうですね。

もう、プロットどころか、おおまかな方針すら決めてませんから(笑)



「そういう事だったのか……。すまん、オーリガ」

 オレたちはいまだ、体を部分的に密着させたまま、会話をしていた。

「いえ、クラウス殿が回復されたのなら……安心しました」

 まだ夜も明けていない時間で、坑内で火をたくわけにもいかないので、虫の死骸(しがい)から採取した発光物が、淡く部屋を照らしていた。

 かなり寒い事もあり、離れるわけにもいかず、離れるとしても、お互い半裸なので、さまざまな問題があった。

「かなり世話になったようだな」

「いえ……当然の事ですから……」

 オーリガの口調はふだんとは違い、すっかりおとなしくなってしまっているようだった。心なしか、ほおを赤らめているようでもあるし、これではまるで普通の乙女ではないか……。って、そのような事を言っていたような気も……。

「まだ寒いので、もう少しこうさせてください……」

 オーリガはそう言って、オレの胸に頭をあずけてしまう。

「そうだな……しかし、日が当たらない坑道では、気温が高くなるのは、かなり先の事だよな」

 オレは体を密着させている、オーリガの柔らかい肢体について、考えまいと、世間話をしていた。

「すぅ…………」

 正直もてあます欲望をどうしようかと思った瞬間、オーリガが寝息を立ててしまい、オレは朝までこの体勢で耐え続けた。




「よし……。では、東に向かうか」

「わかりました」

 オレたちは朝食を済ませて、どこかよそよそしい雰囲気の中で、出発の準備をしていた。

「その……。今回の冒険が終わったら、わたしとの事を、考えてもらえるでしょうか?」

 オーリガはふだんの堂々たる態度とは反対に、ほおを染めておどおどとした表情で問いかけて来た。

「あ、ああ……」

 例の言葉遣いではなかった事もあり、オレはどぎまぎしながらも、その問いに応えた。




「坑道はここから東は開通していないので、ここから北を目指す事になります」

 昼ごろに、坑道の東端まで達したので、オレたちは干した腸詰めをかじりながら、今後の相談をしていた。

「どうだ……ここから川岸までの間で、隠れられるようなところは、あるのか?」

 もし、火の眷属に追われた場合などに、退路がないのでは問題だし、闇の眷属による領域も近づいているので、危険性が上昇していた。

「このあたりは、わちきたち、水焔(みずほむら)の里の領域なので、地形は熟知しています……隠れる場所は木立の中にある、地下の保存庫ぐらいですね」

 オーリガは『わちき』という言葉だけは使っているが、しゃべり方は普通のものに近づいていた。

「ふむ……。こちら側に誰もいないと、カミラたちが川を飛び越えて来る可能性もあるしな……できるだけ敵を回避しながら、川に近づいていこう」

「わかり申した……。では、案内します」

 オーリガは大剣をさやから取り出して、抜き身のままで移動を始めた。




「このあたりで見かけた事のない、魔物ですが……あれは」

 川岸の近くまでは敵と遭遇する事もなく接近できたのだが、肝心の渡河予定地点には、大型の魔物が五体いて、その場を守り続けていた。

「あれはオーガだな。巣からあまり遠くには行かないはずなんだが、何者かが召喚でもしたのかもな……」

 オーガに以前殺された事があるオレは、腹の底からふつふつと、怒りの感情がわき起こって来た。

「対岸にカミラとエミリーがいるような気配はないようだな……」

「シャドウストーカーはいないようですが、闇の領域のすぐ隣なので、騒ぎが起こればすぐに救援が駆けつけて来るでしょうね」

「うーん……。オレのスキルではオーガにはあまり有効なものは、ないんだよな」

 せいぜい、三の太刀でスタンさせるのが精いっぱいだ。身長差が倍もあると、首筋の急所を狙えないんだよな。

「わちきも、魔を断つ技以外には、大剣のスキルしかありませんから、有効と言えるかどうか……」

 オーリガの大剣でも、角度的に首の急所を狙うのはむずかしそうだな。

「一匹を始末するのに、四・五回は切り結ぶ必要があるな。一体だけには、スタンさせる技も使えるんだが」

 無論、無傷で倒せるわけでもないし、回復手段がポーションのみというのは、あまりにも危険だ。

「わちきは盾もありませんし、二匹以上に囲まれると……」

「だろうな……では、一度その保存庫に向かい、午後六時の定期連絡の時間に、また来る事にしよう

「わかりました。案内します」

 オーリガはあまり音を立てないように注意しながら、茂みから出て行った。




「これは狭いな……。まぁ、魔物に襲撃される事はなさそうだが」

 オーリガに案内された保存庫は、人一人寝る事ができる程度の、空きスペースしかなかった。

「数カ所に分けて保存しているので、闇の領域の外では、ここしか使えないんです……」

 仕方ないので、二人とも寝袋をしいた床に座り込み、棚を背にして休息を取る事にしたのだが……。

「このにおいは漬け物のたぐいか?」

「そうですね……故郷には久しく帰ってなかったので、懐かしいにおいです……」

「そうだったのか……どれぐらい帰っていないんだ?」

「成人してすぐに、ラミールの冒険者ギルドに入って、五年たったところですね」

「そうなのか。特務少佐にまでなっているぐらいだから、もっと長くラミール軍にいたのかと思ったよ」

「部族出身で技能が認められると、特務少尉からはじまりますので。特佐はあまりいませんけど」

 という事は、よっぽどオーリガの腕が立ったからだろうな。

「これなんかうまそうだよな。ひとついただくよ……」

 オレは小さいツボに入っていた、大根の漬け物らしき物を手に取り、口中に含んでポリポリとかじった。

「そ、それは! 粉にしてごく少量を飲用するもので……」

 オーリガはオレを見て、あわて始めたが、とても高価な代物だったのか?

「なんだって……けほっ……飲み込んでしまったが……」

「そんなにたくさん……。わちきが説明しておくべきでした」

 オーリガは深刻な表情を浮かべて、オレの様子をうかがうべく、体を近づけていた。

「粉にするという事は、薬なのか? もしかして、毒じゃあないだろうな?」

「毒ではありませんが……。部族の女が……その、意中の男性に、飲ませる物なのです」

 そう言って、オーリガはほおを染めてしまう。

「って事は、まさか! うっ!」

 オレは立ち上がろうとした瞬間、下半身全体が熱を帯びたかのような、感覚を感じてふらついてしまう。

「きゃっ……クラウス殿! 大丈夫ですか?」

 ささえてくれようとしたオーリガを押し倒すような形で、床に崩れ落ちてしまった。

「ど……どうすれば、これは治まるんだ?」

 触れているオーリガの、なまめかしい体の感触を感じるたびに、痛いほど反応してしまっていた。

「そ……それは……」

 押し倒してしまったオーリガに問いかけると、耳まで真っ赤にして、口ごもってしまっていた。

「そういう事か……」

「その……クラウス殿さえよかったら……なのですが……」

 オーリガは顔を染めて、おずおずとオレに問いかけて来た。

「なんだ? オーリガ」

「わたしの、初めての人(おとこ)になってくだされ」

 そのオーリガの言葉に、オレの理性ははじけ飛んでしまった。






「午後六時に間に合うかな」

「クラウス殿があんなに何度も……」

 午後六時まで、あと数分という状態まで、地下で過ごしてしまっていた。




「フラマ・バグナスっス!」

「始原の炎よ……ここに顕現せよ……。オストラトテイク!」

 河原に到着すると、エミリーとカミラが、オーガと戦っている最中であった。


Hパートだけに……げふん、ごふん……。

朝チュンならぬ、夕チュンですね。

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