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第五十二話 ロンゲスト・マーチ Fパート

もうFパートですが、まだ半分も来ていないような気が(汗


「さて、川沿いを進んでいく事にするが、火の眷属を発見したら、迂回(うかい)する方針で行く。レックスの隊は常に、退路と挟み撃ちに気をつけてくれ」

「了解しました。もし逃げる場合はここで集合ですね? クラウス将軍」

 アデールの結界の術もレベルが上がっていたそうで、敵に発見される事もなく朝を迎え、出発の準備を整えていた。

「その将軍というのは、やめて欲しいんだがな……。自分の事だと思えなくて、尻の座りが悪い」

「ならば……クラウス殿とお呼びします」

「少し思うところがあってな。火の眷属の能力を把握しておきたいから、アデールとイレーネをそちらで護衛して欲しい」

「ならば、こちらからも戦力を出しましょうか? 八人になってしまう事もありますし」

「ふむ……。では、石弓使いの彼と剣士一人に参加してもらうが、後衛という事にしておく」

「わかりました。では、そのように……」

 オレたちはパーティーのメンバーの入れ替えを行い、前進を開始した。



「二匹か……微妙なところだな」

 二時間後、先行するオレとオーリガはついに、火の眷属を二体発見する事に成功した。

「わちきが物音でも立てて、一匹誘導しますかな?」

「そうだな……。では、後衛に下がるように指示したら、開始してくれ」

 オレはハンドサインで、後衛のレックスのパーティーに、少し後退するように指示を送った。石弓使いと剣士はその中間に位置していた。



「…………」

 オーリガが石を投げると、一匹が索敵するためか、こちらに羽音を立てて近づいて来た。

「…………」

 オーリガが再び石を投げたので、岩陰に隠れていたオレの目の前に、火の眷属の魔物がおびき出された。

「神雷剣、二の太刀!」

「ピヒィッ!」

 完全に不意をつけた事もあり、オレは羽の付け根を部位攻撃する事で、断ち切る事に成功し、魔物は地面にぶつかっていた。

「仲間を呼んでくれるなよ……そらっ!」

 オレはすかさず盾で魔物を地面に押さえ込み、開口部にバスタードソードを突き込んだ。

「くっ……。スキルなしではきついか……ふんっ!」

 オレはバスタードソードに全体重を乗せて突きこんだ。

「ピギィッ!」

 どうやら口中は物理攻撃を無効化できないようで、目の前で火の粉を散らしながら絶命した。

「クラウス殿!」

 オーリガが小声でオレを呼び、もう一匹が接近しつつある事を、ハンドサインで知らせてくれた。



「せいっ!」

 ふたたびオーリガが音を立てて誘導してくれたので、再びオレは死角から襲いかかり、羽を断ち切る事に成功した。

 どうやら、羽が弱点らしいが、こうして不意を突けない事には、羽を攻撃する事もままならないだろう。

「拙者が代わり申す!」

「わかった!」

 オーリガも自身の剣技が通用するか確かめたいのか、助走をつけながらオレに呼びかけて来たので、場所を空けてやった。

「たぁっ! やぁっ!」

「ピヒィッ――」

 オーリガは遠心力と体重を乗せた渾身(こんしん)の一撃を放ったが、硬い殻を割る事はできなかったが、即座に口の中に大剣を押し込んで、絶命させていた。

「あれでも割れないのなら、物理無効かは分からんが、相当硬いようだな……」

「わちきも、奥義を使えば……かもですが、想像以上の固さのようで、手こずり申した」

「水焔(みずほむら)の里とか言ったよな? 水属性の奥義でも、あるのなら有効かもな」

「よほど集中しないと使えない上に、事前の水ごりまで必要なので、実戦にはあまり向き申さんのじゃ」

「ほぼ、儀式のために使う技という事か……。さて、戻るか」

 オレは、石弓使いの男と剣士の元に戻り、後詰めとも合流した。




「さすがクラウス殿……あの魔物を倒してしまわれるとは!」

 後詰めと合流して戦果を報告すると、レックスが珍しい事に興奮していた。

「いや、低空飛行している時の、背後からの不意打ちでなければ、まず無理だな。石弓で口中を狙う方がまだマシかもしれん」

「長弓では、軌道的に無理でござるか? ご主君……」

「口は下の方についているしな。羽を狙うのも、少し無理があるだろう……」

「可能なかぎり、火の眷属は避けた方がいいみたいね」

「クラウス殿……。よろしければ、拙者に斥候を勤めさせてくだされ……」

 石弓使いの男が、自主的に申し出てくれた。

「そうだな。では、お願いしよう」

 オレたちは常に退路を用意しながら、可能な限り魔物に発見されないように心を配り、東へと移動していった。




「クラウス殿……前方にはグレーターデーモン三体とレッサーが十体。右の山へと続く道には、数匹の火の眷属を発見しました」

 昼食を取ってから、三十分ほど移動していたのだが、前進するには、戦闘が避けられない状態に陥ってしまった。

「ううむ……。シャドウストーカーがいた場合の、デーモン種はまずいな」

「前方は、森の中ですので、シャドウストーカーがいた可能性は、大きいかと――」

「このあたりは道が狭まっているからなぁ……そのどちらも、移動していなくなるなんて事は期待できないだろうな」

「カミラとエミリーと合流するまで待って、火の眷属を相手にするのなら安全だけど、いつ合流できるのかしらね」

 まだ制限地域ではないとはいえ、いつ救援が来るか分からない以上、アデールも不安を抱いているようだ。

「さっきの昼にも連絡がなかったし、早くて明日ってところじゃないのかねぇ? そう簡単に精霊王と会えるか……会えても支配下におくって言うのは容易じゃあないだろう」

「わちきの知る限り、まだ一度も支配された事はないですな。歴史では、『英雄』と呼ばれる、現在まで続くフォスター家の始祖が成功したのみだとか」

「ふむ……このあたりは、合流予定地点の候補ではあるよな」

「少し戻れば、魔物の侵攻ルートから大きく外れた森がありますな。あそこなら隠れる事もできるでしょう」

「クラウス殿……ここの右の山中に、隠された坑道への入り口が、あり申す」

「ふむ。だが、合流のためには川の近くにいないとな……」

「数匹の火の眷属さえ倒せば、大きく迂回(うかい)する事で、再び川沿いに戻る事もでき申す」

「ふむ……では、オレとオーリガだけで、試してみるか。何かあったら坑道に逃げ込むから、その場合はカミラたちと合流をはかってくれ」

 オレは、カミラに渡されていた通信用の道具をアデールに手渡した。

「二人で大丈夫なのですか? クラウス殿……」

「石弓は火の眷属にたいする攻撃手段になりうるから、護衛に残しておきたいんだ。オレとオーリガだけなら、引くも進むも自在だからな」

 オレはレックスに指揮権を預けて、オーリガとともに、右の鉱山への道を慎重に進んでいった。



「四匹か……倒すのは無理だな」

「通り抜けるだけなら……ですが、戻った方が良いのでは?」

「カミラたちが、本来の合流地点に向かう可能性もあるしな」

「そういう事であれば……」

 オレたちは、戦闘ではなく坑道に逃げ込む方針で、じりじりと前進していった。




「行くぞ!」

 四匹がオレたち以外の方向を見ているのを確認して、オレはオーリガとともに駆けだした。

「フィッ……キュ……」

 後ろを走り抜けると、オレたちに気づいてあとを追ってくる羽音が聞こえて来た。

「くっ……はぁっ……」

「もうすぐですぞ!」

 重い荷物を背負っている事もあり、みるみるうちにスタミナが減少していった。



「この鉄扉を開けますゆえ、少し時間を稼いでくだされ!」

 十分ほど、背後に火の眷属をひきつれながら走ると、鉱山の入り口らしき場所に到着したが、鉄扉を封印している鎖をほどくのには、数分かかりそうだった。

「わかった……はっ!」

 オレの回りには三匹の火の眷属が接近しており、オレは盾をストレージから呼び出して、その攻撃を受け止めた。

「くっ……させるかっ!」

 今度は二匹同時に襲いかかって来たので、オレは盾で片方を受け止め、もう一匹はロングソードを振り下ろす事で、強制的に間合いを取ろうとしていた。


「もうすぐ空きますぞ……クラウス殿、後ろ!」

「なっ……いつの間に……くぅっ!」

 いつの間にか、四匹目が到着していたようで、死角から襲いかかられてしまった。

 首の後ろに毒針のような物を射出されてしまい、めまいを感じてしまう。

「空き申した! クラウス殿は先に入って、迎撃の準備をしてくだされ!」

「わ、わかった!」

 どうやら致死毒のたぐいではないようで、オレは体の倦怠(けんたい)感を感じながらも、坑道の中に走り込み、盾とロングソードをかまえて、敵に備えた。

「いつでもいいぞ!」

「せやぁっ!」

 どうやらオーリガは迫り来る魔物を遠ざけるために、大剣を回転させる技を使っているようで、坑道の中にも風を裂く音が、聞こえていた。



「一匹ついて来ていますぞ!」

 そう言って、オーリガは坑道の中に転がり込んで来た。

「せやぁっ!」

「ヒキィッ――」

 オーリガを襲わんと、いままさに毒針を向けようとしていた魔物を、横から羽の基部を断ち切るように、剣を振り下ろすと、片方の羽をもぐ事に成功し、地面の上に落ちた。

「そらぁっ! くらえっ!」

 オレは盾で魔物を固定して、口からロングソードを突き入れて、ねじる事で絶命させた。

「もう一匹、左側面から来てますぞっ!」

 正面から戦うのでは、普通の方法では無理なのだが、坑道の入り口は狭いので、高度はあまりなかった。

「神雷剣、三の太刀!」

「ヒィケェッ!」

 ロングソードから聖気とともに電流を流すと、スタン効果は出たので、オレは地面に落ちた魔物の口に、再び剣を差し込んで絶命させた。

「はぁ……はぁ……。あきらめてくれたのか?」

「どうやら……そのようですね。助かりました……」

「ん? オーリガ。おまえさん、普通のしゃべり方もできるんじゃないか」

「伝統だから使っていたまでで、ラミール軍に属している時は、普通の口調でも話していましたよ」

「そうだったのか。正直、いまの口調の方がいいと思うぞ……」

「クラウス殿!」

 そこまで言い終えたとたん、オレは強烈なめまいを感じ、意識を失ってしまった。


正直、オーリガの口調には、私も違和感ありまくりでしたので、

ここらで方針転換を図る事にします(笑)

わちき  とか、申す 程度ならセリフだけで人物を表すのに便利なんですけどね。

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