第四十八話 ロンゲスト・マーチ Bパート
長い道のりのはじまりです。
はたして、何パートで終わるのか、予想もつきません。
一瞬で迷宮手前までってのも考えはしたんですが、
盛り上がりに欠けますし、主人公たちには苦労してもらわないとw
※木曜はラッキーDAY(謎)なので、午後六時に、
もう一話公開します(笑)
「ふぅ。これは、結構重いな」
馬車で移動するさいには、寝袋や補給品などを詰めるのだが、徒歩で移動するのが前提になると、そうはいかない。
背負い袋に、その下には寝袋まで下げて、大きい水筒も入れると、重量は十キロを軽く超えるだろう。
「よっと……。こんなもんかな」
なるほど、これでは一日に長距離の移動は無理というのも、うなずける。
「アニキはすごいっスね。そんなに荷物を持てるんスから……」
エミリーには斥候を務めてもらう事になると思うし、体格を考えて荷物は少なめにしている。
「まぁな。以前は、アデールをかかえて制限地域を走り抜けた事もあったっけ」
「いいかげん、忘れなさいよ……」
そう言いつつもアデールのほおは朱に染まっている。
「矢筒の予備を持っていただき、感謝しますぞ、オーリガ殿」
「わちきは剣が二本もあればどうにかなり申すが、矢がなくなったら大変であるからの」
イレーネとオーリガも、古風な言葉を使う者同士、仲がいいようだ……。
「これで大丈夫か見て――」
カレンは一言告げて、オレに背中を向けた。
「うん。大丈夫だろうな」
荷物は少なめではあるのだが、奇妙な水筒のような物を、腰から多数下げていた。
「ふむ……。早くさやを作らないと不便だな……」
既製品ではないので、普通のバスタードソード用のさやには収まらないので、白布を巻いて持ち運びしていた。
「クラウス殿……。おおざっぱに言って進行ルートは、川沿い・中央の平原・南の山岳地帯の三か所になり申す」
オレたちは朝一で館を出て、仮設陣地の東の丘で、眼下に広がる、部族連合の土地を見渡していた。
「川や山沿いだと、いざという時に退却ができない危険性があるよな。だが中央は敵に動きを読まれやすいか」
海の眷属までもが襲って来たのは、何者かの意図を感じるので、すんなり行かせてもらえるとは思っていない。
「全滅したとしても、通常地域のデスペナだから、そう痛くはないんだが、期限があるだろうからな」
「相手に時間を与えると、対処がむずかしくなる――」
めずらしくカミラが意見を口にした。
「そうねぇ。今後も可能なら補給をって話だけど、それは安全が確保できたらという前提だし」
アデールは少し不安そうな表情を浮かべた。
「ふむ。いざという時のために、二人づつの班を作っておくか」
「散りぢりになったんじゃ、生存率下がるわよね。どういう組み合わせにする?」
「そうだな。そのような事態になったら、しんがりが必要だが、それはオレが勤めるとして……」
「ならば、わちきが相方を務め申す……なにせ、多大なご迷惑をおかけ申したゆえ」
「ふむ。じゃあ、アデールとエミリー。イレーネとカミラが相方という事で、常に意識しておいてくれ」
どの組み合わせでも大差は感じられないが、エミリーとカミラは、分散した方が戦力的によさそうだ。
「じゃあ出発しよう。敵をもし見つけても、あわてて突っ込むようなまねはするなよ? あっと言う間に増援に囲まれるような事は、避けねばならんしな」
オレの言葉にみな同意したので、移動を開始した。
「闇の眷属じゃなくて、ホブゴブリンが四匹にゴブリンが二十匹もいたっスよ……」
行軍を開始して一時間……。
最初の目標地である村に、斥候としてエミリーを派遣したのだが、予想通り待ち伏せされているようだ。
「周囲にも、魔物がいると予想すべきだろうな……」
「だけど、ここすら奪還できないんじゃ、今後の補給とかも受けられなくなるって事じゃないのかしらね?」
「拙者もそう思うでござる。伏兵が怖いのであれば、こちらも最初から、それに備えておくといいのではないかと」
「では、イレーネとカミラが伏兵に対処するという事で、異変があるまで隠れていてくれ。アデールとエミリーはこの場所で待機して、いざという時は後詰めのパーティーと連携してくれ」
「了解したわ。あまりにも帰りが遅い時にも、後詰めを呼ぶわね」
幸いポーションは多めに所持しているので、どちらかが敵を引きつければ、飲む時間ぐらいはあるだろう。
「ふむ。ここからにするか……」
「わちきは回転して斬るスキルを使うので、ホブはお任せする」
オーリガに先導してもらい、敵の裏手に回る事に成功していた。眼下にはホブゴブリンが二匹と、ゴブリンが十匹いて、残りは前の方に出ているようだ。
「二匹なら、何とかなるだろう……いくか」
カミラとイレーネも配置についたのか、こちらに一瞬だけキラリと反射光を向けて来た。
「たぁーっ!」
幸い敵の近くまでスニークスキルで忍んで行けたので、オレはホブゴブリンを背後からけさ懸けにして、一刀で切り捨てた。
「はっ……せやぁーっ!」
オーリガはゴブリンの群れの中央に突き進んだ次の瞬間、両手で剣を回転させながら、血しぶきをあげさせていた。
「よっ……せいっ!}
残るもう一匹のホブゴブリンの攻撃を盾で受け、オレはバスタードソードで下方から脇をえぐるような一撃を与えて、絶命させた。
「たぁっ! はぁっ!」
「一気に片付けるぞ!」
オーリガが五匹ほどのゴブリンに囲まれながらも、奮戦していたので、オレはその包囲を打ち倒していった。
「ふぅ……。残りがこっちに来るのも時間の問題か」
どうにか、オレもオーリガもけがを負う事もなく、敵の一隊を始末する事ができていたが、悲鳴は届いていただろう。
「ふぅ……これで全部か。伏兵はいなかったようだな……」
「油断しない方がいい――」
どうにか、残るホブゴブリンとゴブリンもほぼ無傷で始末する事ができたのだが、カミラが隠れていた場所から出て来て、警告してくれた。
「敵の気配を感じるのか? カミラ」
「ホブゴブリンの影に、闇の眷属の魔物が一匹隠れていた――」
「そういう事か。どうやら、通報はされてしまったようだな」
「アデール殿の元まで引き返しましょう」
イレーネまでも現れて、そう主張した。
「ここは守るのにはあまり向かない場所だし、そうするか」
オレたちはアデールとエミリーが隠れている場所に、戻っていった。
「闇の眷属が混じっていたの? それは、やっかいねぇ……」
なにせ、闇の眷属のデーモン種は呪文だけで、異世界から仲間を引き寄せる事もできるぐらいなのだ……。通信ぐらいはできて当然だろう。
「これからどうするっスか? アニキ……」
「ふむ……このあたりに、守るのに向いているような場所はあるかな? オーリガ」
「わちきも、このあたりにはめったに来ないのですが……。近くに廃止されてしまった鉱山の坑道があり、東まで抜ける事もでき申すが……」
「それはそれで、挟み撃ちにあいそうだしな……」
そんな事になれば、倒れたあとの救援はまず望めないしな。
「影の中にいたという眷属のシャドウストーカーは……倒しても逃がしてしまっても、情報は伝わってしまう――」
「なんだって? すべてのシャドウストーカーとやらは、つながっていると考えるべきなのか?」
そうカミラに問い返すと、こくりとうなずいた。
「それに、もしシャドウストーカーに見つからなかったとしても、逆にルートを割り出されるって事じゃないの?」
アデールがさらに一歩踏み込んだ推測をしたが、その通りだと、オレも思う。
「うわー……なんだか、怖くなって来たっスね……」
「拙者も、そのような実体のない物は苦手なもので……」
エミリーとイレーネは不安を感じているようだが、それも無理はないな。
「わちきの故郷に、そんな連中がうろついてるだなんて、考えるだけで……くぅっ」
「たかが二パーティーで突破するというのは、ムチャではあるが、現実問題なぁ……」
「いつ、グレーターデーモンが出て来るのか分からないんじゃ、それに対処できる冒険者は限られている……のよね?」
アデールがオレの言葉に続けて補完してくれた。
「後詰め部隊とも話をしておくか……とりあえず、後ろに下がろう」
この場所に居続けても、徘徊しているかもしれない、シャドウストーカーに発見されるかもしれないしな。
「ふぅ……。協議の結果なんだが、後詰めの部隊は随伴しない事になった」
「えぇ? ボクたちだけでっスかぁ?」
「守るべき対象が増えるような物だから、仕方ないのよね」
オレとともに、後詰めの隊との会議に同行していたアデールも、肩を落としてみんなに説明をしてくれた。
「うーん。わちきには、今ひとつ納得でき申さんが……。覚悟なき者を同行するよりは」
ラミール軍の、元部族連合の冒険者も、尻込みをしている事に、オーリガは不満を抱いているようだ。
「いつ背後から、襲われるかもわからない――」
「例えば、山すそのへんぴなところにレッサー一匹と、シャドウストーカーでもいれば、いつでも援軍を呼び出せるって事なのですよね? カミラ殿」
カミラとイレーネは最悪の事態を想定しているようだが、それもじゅうぶんあり得る話だ。
「闇に紛れて移動なんてのも、相手は闇の眷属だしな。シャドウストーカーなら昼間でも活発に動けるみたいだな」
「影さえあれば、どこにでも出現できる――」
カミラは重々しい表情で、聞き捨てならない事をつぶやいた。
「迂回もできないし、川の流れはキツいし、相手の思惑に乗るしかないのか……」
ナイトストーカーを操る存在がいて、そいつさえ倒してしまえばいいんだろうが。
「正直に言って打つ手がない。かといって、場当たりに進んでも、窮地に陥るのは見えているしな」
向こうは時間さえ稼げればいいはずだから、積極的な侵攻はしないはずだ。
オレたちもセラエノとラミールでは精鋭だが、対処できるのは、グレーターデーモン四匹ぐらいが限界だろう。
「わたしの法術では、最大二人を結界に包むぐらいしかできないし、夜間の危険性もあるのよね」
やつらにとって闇夜のオレたちは、狩り場に迷い込んだ、獲物のようなものだろうしな。
「なら、いっその事、バラけて行動すればいいんじゃないっスか?」
エミリーの言葉に、オレを含めた仲間は、一様に驚きの表情を浮かべた。
点々とシャドウストーカー(影を徘徊する魔物)を配置され、動きはすべて読まれてしまうという条件下とはいえ、
多少ムチャだとは思います。
それでも、分散させて行動させたい作者の理由もあったりしてw




