表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人の花嫁  作者: ひろね
7/10

第7話

「ついでに保険じゃないけど、ばれて面倒なことになったら、城から出してくれる?」

「いいのか?」

「まあ、当面の生活の保障さえあれば。今放り出されても困るけど」

「わかった。俺の領地は割とここから離れてるから、そこで静かに住めるように手配しとく」

「…ん、お願い」


 とどめにもうひとつ念押しして、身の安全を確保。

 マリのように立場が決まっている状態ならともかく、あたしはあやふやな立ち位置。別に嫌じゃないけど、それを利用されるのは嫌。何より、マリに迷惑がかかる。

 他の王子が出てきて、そっちのほうがいいと言ったときは、ヘルベルト殿下には悪いけど、その人と一緒になればいいとあたしは思う。

 けど、もう一人、マリア=サトーがいて、あたしのほうが本物でマリが偽物だとほざく奴がいた場合、マリの存在が危ない。そんなことにはさせられないから。

 ふっふっふ、いいじゃない。田舎。この世界じゃ、本当に田園風景なんだろうね。のほほんとしていたいいじゃない。(もちろんそれだけではないのはわかっているけど、夢を見たいのよ、夢を)




「話が弾んでるみたい……って、マリ、あんたどれだけ飲んだの!?」


 室内に戻ってマリに声をかけたのはいい。

 けど、見ると空になったボトルが数本近くにあるんだけど……大丈夫なの?


「あ、リア、やっと戻ってきた。ラルスさんも」

「う、うん。だいぶ酔いも醒めたみたいだから……」

「よかった。あまり無理しちゃ駄目だよ?」


 その言葉、そっくりあんたに返す!!


 そうのど元まで出かかったけど、数本ボトルを空けてもマリは酔ってろれつが回らないとか、どう見ても酔ってるだろ、という雰囲気ではなかった。

 酒豪ってすごいんだね……

 もはや水のようにグラスを持ってこくこくと飲んでいるのを見て、内心「すごい」の一言だった。




 夕食はあたしたちが室内に戻ったのでこれでお開きになった。

 部屋に戻るマリは、あれだけ飲んだのに足取りがしっかりしてる。あたしにしてみると、もうすごすぎて突っ込むところがない。

 部屋に戻ると、マリと一緒にお風呂に入ることになった。


 お風呂といっても浴室があってシャワーがあって、浴槽があって……というわけじゃない。どちらかというと洋風スタイル(しかも中世)。なのであたしたちがご飯を食べている間に、ヘルガさんたちがお湯を沸かして部屋にぽつんと置いてあるバスタブに入れてくれてある。

 冷めちゃうと入れなおすことになるので、一緒に入ることにしていた。ちょっと狭いけどね。今日はいつもより夕食に時間取ったから、お湯がいつもより冷めてそう。

 他人に入れてもらうということに慣れてないあたしたちは、最低限の用意だけしてもらって、あとは自分たちで……ということにしてもらっている。

 ちなみにお風呂はバブルバスなので、泡だらけの中に二人で入っている。これ、お湯で流さなくてもいいんだけど、どうもマリが納得いかないみたい(石鹸で洗ったら流すって思い込んでいる)で、体についた泡を落とすためのお湯も用意してもらっている。

 本当は流さなくても肌にいいものなんだけどね。習慣なのだから仕方ないか。


「はー……温泉入りたい」


 そんなことを思っていると、マリがいきなりぼやいた。


「どうしたの?」

「ううん。お風呂ってこういうのじゃなくて……のんびり湯船につかりたいというか……」

「あー……マリは根っからの日本人だものね」


 このお風呂の場合、バスタブの中で体を洗うので、ゆっくりお湯につかるという感じではない。マリにしてみると、純粋にお湯につかってのんびりしたいのだろうというのがわかる。


「リアは慣れてそうだけど」

「まあね。シャワーだけとかも多かったから」

「生活習慣って結構残るものなんだね。いつもしてることと違うと違和感があって……なかなか馴染めないの」

「仕方ないよ。マリは引っ越しとかで環境が変わることもなったんだし」


 半分泡で遊びながらマリに答える。

 お風呂はマリと二人きりで話す少ない場所なので、ヘルガさんたちには悪いけど、バスタイムはかなり長い。

 でもマリの息抜きに――と言えば、ヘルガさんたちも強く言えないので、黙って見逃してくれている。

 マリにとってリラックスできる時間になっているのも事実だしね。


「ねえ」

「なに?」

「どうしたら……胸、大きくなるの?」

「……はぁ!?」


 いろいろ考えてると、マリに突拍子もないことを聞かれて間抜けな声を上げた。

 ちなみにあたしはEで、マリはBカップ。でもこれは人種の差で仕方ないものもあると思う。あたしのサイズは別に普通だと思うし、マリだって胸がないってわけじゃない。


「なにをいまさら……」

「だってここにきて、みんなスタイルいいんだもん。ちょっとヘコんだの」

「あたしは逆にマリがEカップもあったら嫌だな」

「なんでよぉ?」


 体形を考えてほしい。マリとあたしでは身長が十センチ以上違う。

 それだけ違えば、スリーサイズから体重まで全く違う。要はバランスがとれていればそれでいいと思うわけで……


「それより、殿下となに話してたの?」

「え? それは……不自由してないかとか、必要なものがあったら遠慮なく言ってほしいとか……」

「殿下の気持ちとか聞いたの?」

「え!? 聞けるわけないよ!!」


 ……なにやってるのよ……全然進んでないじゃないの……


 はーーーっ、と深いため息をつくと、マリが「リア?」と覗き込んでくる。


「まったく……そういえば、マリは殿下のこと、どう思っているの?」

「なっ、リア、なに言いだすの!?」

「なに言いだす……じゃなくて、その気にならないと結婚したあと大変だと思うから」


 なんか、異界の女性ということですごーく大事にされるみたいだし、性格の不一致とか、その……体の相性が合わないから――という理由で簡単に離婚とかできそうにないみたいだし。

 だからマリが殿下のことを好きになって、結婚したいって本当に思ってくれるのがベストなんだけど。

 ……マリはちゃんと理解してるのかしら?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ