ウナーギ
読みづらいです
「シエルだぞーシエルが来たー」
極東上空で何処に着陸しようか悩んでいると下で声を上げる青年エルフが居た。
「おお〜ハシュビッド何処に降りればいいっすかぁ〜」
ハシュビッドと呼ばれたエルフは
「もう壊れても治せるだろ? 落ちて来いよー?」
「そこら辺にエルフはいないんすよねー?」
「めっちゃ居るぞーあれ使えよアレ〜パラなんだったかなぁーアレがいいぞ〜」
「ああ〜アレっすねぇ」
「ちなみに今そこに何人のエルフがいるんすか〜」
指が五本に丸を作っていてハシュビッドはニンマリした。
『いいのか? エルフが大勢いるようだが』
「いいんっすよ」
「持ち上げてくれるみたいなんで」
『持ち上げる?』
『コレをか?』
「動力オフ」
『わっふー』
「パラシュートチャージ」
『なっ浮きよったぞ』
ゆらゆらと空から着陸しつつあったところを魔力で浮上させられて、眼下を見ると五◯◯人居るだろうかというエルフの波が見えたのだった。
「なぁなぁシエルー? コレって旅客機って奴だろう? 俺らのところで商売始めろよぉ?」
「シエル三◯◯年ぶりだなぁ? もうちょっと早く来いって言ったじゃねぇかよぉ」
「ベンか? 爺さんになったすね」髭がチャーミングっすよ。
「お前だけだぜ変わらねぇのはよぉ」
強面の髭を三つ編みにしたエルフはベンと言う名前らしい。
『ほう、御主がベン・アルフォード。千年に一人のハイエルフ。エルフの王じゃな』
「おいおい、シエル。可愛いお友達かと思ったら、なんてお方を乗せて来てんだよ」
「ベン様そのスライムがどうかしたんですか?」
「どうもこうもねぇ」
「この魔力は魔王クラスだぜ」
『ほう。流石はエルフの王じゃな一瞬で我を心得るとは』
『気に入った。我にウナーギの蒲焼きを食わせるのじゃあ』
「へ? ウナーギの蒲焼き?」
「シエルどう言うこった?」
「遂に極東まで支配下に置くんじゃ?」
『何を馬鹿な事を言っとる?』
『我はウナーギを食しに来ただけじゃ』
『魔王軍も置いて来た』
「置いて来た!?」
「魔王軍を!?」
『うむ。腹が減っておったのでな』
『四天王には適当に留守番を命じておいた』
「適当かよ!」
ベンが頭を抱える。
「おいシエル、お前どこでこんなの拾ってきたんだよ」
「魔王城っすね」
「魔王城!?」
「拾ったってなんだ拾って来ちまったんだよ!」
『失敬な』
『我は拾われたのではない』
『飯に釣られてついて来たのじゃ』
「余計悪ぃわ!」
周囲のエルフ達もざわつく。
「魔王様だってよ」
「殺されるんじゃ……」
「いや待て」
「あの方さっきからウナーギしか言ってねぇぞ」
「もしかして腹減ってるだけじゃね?」
「腹減ってるだけだな」
エルフたちは口々に物申し最後は
「「「可愛いな」」」
『可愛いとはなんじゃ!』
『我は歴代最強の魔王じゃぞ!』
「「「はいはい、最強最強」」」
「それよりウナーギなら港町で獲れたのがあるぜ」
『本当か!?』
ずいっとベンににじり寄るロード様。
『蒲焼きか!?』
『白焼きもあるのか!?』
『肝吸いは!?』
「食い付き方が犬じゃねぇか!」
五〇〇人のエルフが爆笑する中、ひとりの若いエルフが震えながら手を挙げた。
「ベ、ベン様……」
「なんだ?」
「旅客機から……」
「うん?」
「牛が降りて来てます」
「は?」
全員が空を見上げる。
すると開いた貨物扉から、パラシュートを背負った牛達が
「モォ~~~~!!」
と優雅に降下していた。
「シエルーーーーー!!」
「肉っすよ肉!」
「ウナーギだけじゃ足りないと思って!」
『わっふー!』
『宴じゃあ!!』
「三〇〇年ぶりに来て最初にやる事がバーベキューかよ!!」
「いや待て!」
「誰だよ牛にパラシュート付けた奴!」
「俺っす」
「お前しかいねぇよ!!」
こうしてエルフの里始まって以来の大宴会が開かれることになるのだが――。
後にエルフ史ではこの日を、
【魔王来訪の日】
ではなく、
【空飛ぶ牛祭り】と記すことになるのであった。




