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神域のアーキテクト 〜世界が滅亡したので、スマホで自宅を絶対安全要塞に書き換えます〜  作者: kiro


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全社打ち上げ(究極の福利厚生)と、CEOの早期退社



「カンパーーーイッ!! 蒼太社長と、新宿ホールディングスの永遠の繁栄にィィッ!!」


真っ青に晴れ渡った新世界の空の下。


新宿セーフゾーンの中心にある巨大メガ・マートの広場では、一万人を超える市民と、かつての敵軍たちが入り乱れる、前代未聞の大規模な『全社打ち上げ(大宴会)』が開催されていた。


「う、うおおおぉぉんっ! なんだこの『おおとろ』という赤い宝石はァ! 口に入れた瞬間に脂が溶けて消えやがる!」


獣の毛皮を纏った【獣帝】が、大皿に乗った極上の大トロ寿司を鷲掴みにして泣き叫んでいる。


「これぞ蒼太様が構築された海産プラントの奇跡! 遠慮せず食え、獣のオッサン! 今日は無限におかわり自由(リソース無制限)よ!」


真っ赤なパーティドレスに身を包んだカーミラが、高級シャンパンのボトルを片手に豪快に笑う。


「ふむ……この『わぎゅう』の網焼きとやら、魔術の触媒スパイスである塩と胡椒だけで、これほどまでに複雑な旨味コードを構成するとは……。ワシの数百年の魔術研究より奥が深いぞい!」


黒ローブの【魔帝】が、和牛のステーキを前に完全に学者の顔になって感動し、無言の【剣帝】に至っては、結衣が作った『特製ショートケーキ』の甘さにひっそりと涙をこぼしていた。


「……信じられん。俺たちは昨日まで、こんな美味いものを知らずに、泥水と血をすすって覇権を争っていたのか。俺たちの戦争タスクは、なんと無意味だったのだ……」


【天帝】神宮寺は、キンキンに冷えたプレミアム・ビールを喉に流し込み、過去の自分たちの愚かさ(ブラック企業的思考)を深く反省していた。


もはや四大帝に、反逆の意思など1ビットも残っていない。彼らは完全に「新宿の福利厚生」という名の最強の鎖に縛られた、忠実な社畜(幹部候補)へと成り下がっていた。


「権田軍団長! 第3ブロックのすき焼きの肉が足りません!」


「よし、エコプラントの第4サーバーから追加のA5和牛をダウンロード(転送)しろ! 今日はポイント(予算)を気にするな! 蒼太社長の奢りだァッ!」


権田やルシスたちが完璧なロジックで宴会のロジスティクスを回す中、その『奢った張本人』である相田蒼太は――。


「……あーあ。会社の飲み会(打ち上げ)って、やっぱり疲れるな。俺は一秒でも早く布団にダイブしたいのに」


広場の熱狂をよそに、蒼太はこっそりと宴会を抜け出し、自分専用の絶対領域ペントハウスへと続く専用エレベーターに乗り込んでいた。

神を倒して世界を救おうとも、蒼太の本質は『最強の引きこもり』である。大勢で騒ぐよりも、自分の部屋でダラダラする時間こそが至高なのだ。


『チンッ』


エレベーターが最上階に到着し、扉が開く。


蒼太はネクタイ(今日は一応正装させられていた)を緩めながら、ペントハウスのふかふかな巨大ソファへとダイブした。


「ふぁ〜……。終わった。ついに、俺のデスマーチが完全に終わったぞ……ッ」


誰の目も気にせず、だらしなく手足を伸ばす。

明日起きても、神の初期化(納期)に怯える必要はない。防壁が破られる心配もない。無限の不労所得(AP)が、永遠の安眠を約束してくれている。


「お疲れ様です、蒼太さんっ!」


そこへ、トコトコと可愛らしい足音を立てて、結衣がやってきた。


彼女の手には、蒼太が一番好きな銘柄のコーラと、山盛りのポテトチップスが乗ったお盆が握られている。


「下でみんな大騒ぎしてるのに、抜け出してきちゃったの?」


「ああ。社長(俺)がいつまでも居座ってたら、あいつらも気を使ってバカ騒ぎ(リソース解放)できないだろ。俺はここで、結衣ちゃんが淹れてくれたコーラを飲む方が100倍有意義だよ」


蒼太が結衣の頭を撫でると、結衣は「えへへ」と嬉しそうに目を細め、蒼太の隣にちょこんと座った。


「ズルイわよ結衣! アタシの蒼太様を独り占めする気!?」


バンッ! と扉が開き、宴会場にいたはずのカーミラと凛が、息を切らして飛び込んできた。

蒼太の気配が消えたことに気づき、秒速で追いかけてきたらしい。


「蒼太様! 宴を抜け出されるとは、ご気分でも優れないのですか!? すぐに私が救護班をコンパイルします!」


凛が慌てて蒼太の顔を覗き込む。


「いや、ただ眠いだけだって……」


「なら、アタシの出番ね♡ さあ蒼太様、アタシのこの極上の太もも(絶対領域)に頭を乗せて! 世界を救った偉大な社長には、大人の女の『究極のリラクゼーション』が必要不可欠よ!」


カーミラがドレスの裾を大胆に捲り上げ、豊満な太ももをポンポンと叩く。


「い、淫乱女ァッ! 蒼太様の神聖な頭を、貴様のようなふしだらなクッションに乗せられるか! 蒼太様、私の鍛え上げられた膝のほうが安定感スペックが上です!」


「凛ちゃんの膝は硬くて痛そうだよー。蒼太さん、私の膝なら柔らかいよ?」


「結衣まで参加するんじゃないわよ! アタシの包容力バストサイズを見なさい!」


右からカーミラ、左から凛、そして正面から結衣。


三人のヒロインたちが、世界最強の男の「膝枕の権利(最高のタスク)」を巡って、キャットファイトという名の仁義なきプレゼン大会を繰り広げ始めた。


「……お騒がせしております、蒼太様」


さらに部屋の隅の影から、もはや定位置となりつつある漆黒の執事ルシスが、シルクハットを被って恭しく現れた。


「私が最高級のシルクを編み込み、幻影で紡ぎ出した『究極の安眠用パジャマ』にお着替えください。そして、このルシスが直々に、全身の疲労を抜き取る魔力マッサージを……」


「お前は相変わらず距離が近いんだよ!!」


蒼太はルシスの顔面をスリッパで叩き落としつつ、わちゃわちゃと騒ぐヒロインたちを見て、思わず吹き出してしまった。


「……ははっ。なんだよお前ら、神様(クソ運営)がいなくなっても、結局うるさいままじゃねえか」


神の理を書き換え、世界最強の権力を手に入れても。


相田蒼太の日常は、愛すべきポンコツ幹部たちと、温かいヒロインたちに囲まれた、騒がしくも最高に怠惰な日々のままであった。


窓の外からは、平和を取り戻した新世界の、穏やかな星明かりが差し込んでいる。


最強の元SEが手に入れた「究極のニート生活(真のエンドコンテンツ)」は、まだ始まったばかりだ。

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