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神域のアーキテクト 〜世界が滅亡したので、スマホで自宅を絶対安全要塞に書き換えます〜  作者: kiro


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完全支配(オール・クリア)と、素晴らしき勘違いの忠誠心



新宿セーフゾーンの中心、超巨大エンタメモールを貸し切って行われた『東京統一・業務提携記念大パーティ』は、三日三晩にわたって熱狂の渦に包まれていた。


「美味い……! なんだこの『えーごらんく』の肉は! 噛まなくても溶けるぞ!」


「酒だ酒だ! 聖帝の奴隷だった頃は泥水しか飲めなかったのに、この黄金の麦酒ビールの喉越しときたら……ッ!」


かつては殺し合っていた防衛軍の人間たちと、ルシス率いる幻影の魔物たち、そして四大帝の軍勢が、肩を組んでジョッキを突き合わせている。


会場にはエコプラントから無限に供給される和牛、豊洲エリアから直送された極上の大トロ寿司、そして結衣がプロデュースした絶品スイーツが山のように積まれていた。


「フハハハッ! 遠慮せず食え! アタシたち新宿ホールディングス(優良企業)の資本力を見せつけてやるのよ!」


ドレスアップしたカーミラが、獣帝や魔帝に高級ワインを注いで回り、彼らは「ははぁっ! CFO殿、ご馳走になります!」と完全に下っ端の顔で平身低頭している。


衣食住の完全なる充足。それこそが、いかなる洗脳や暴力よりも強固に組織をまとめる。相田蒼太という一人の男が作り上げた「究極の福利厚生」は、東京という修羅の国を、たった数ヶ月で平和な理想郷へと書き換えてしまったのだ。


――しかし、その熱狂の裏側。


メガ・マート最上階の特別会議室では、新宿の最上位幹部たちによる、極めて深刻な『秘密会議』が開かれていた。


円卓を囲むのは、防衛長官の凛、特務長官のルシス、そして新たに『子会社代表』として同席を許された天帝・神宮寺である。


「……驚嘆すべき男だ、相田蒼太は」


天帝が、冷や汗を拭いながら重々しく口を開いた。


「俺たちを、一切の武力を使わず『飯とインフラ』だけで屈服させた。だが、奴の真の恐ろしさはそこではない。……お前たち、蒼太様の『真の目的』に気づいているか?」


天帝の言葉に、凛とルシスが静かに頷く。


「ええ。蒼太様は常々『俺は働きたくない、有休を消化したいだけだ』と仰っています。しかし、あれほどの叡智を持つ神にも等しいお方が、ただの怠惰でそんなことを言うはずがありません」

凛が真剣な表情で、とんでもない深読み(勘違い)を披露し始めた。


「蒼太様は、半年後に来る『システム・ゴッドの初期化(世界崩壊)』を見据え、あえてご自身の魔力(演算リソース)を極限まで温存スリープされているのです。我々配下に日常業務を任せているのは、サボっているのではなく、来るべき神との最終決戦に備え、全能力をチャージするための『準備』……!」


「その通りです、凛殿」


ルシスも漆黒の羽を震わせ、恍惚とした表情で同意した。


「さらに、聖帝をあえて泳がせ、東京湾エリアのドメインを奪取したのも、四大帝を傘下に収めたのも……すべては、この東京全域の『人間の欲望リソース』を一つのサーバーに集約し、神のシステムを物理的に乗っ取るための壮大な布石(4Dチェス)だったのです!」


「なっ……!」


天帝は息を呑み、ガタッ!と席を立ち上がった。


「はじめから、世界のすべてを掌握するシナリオを描き切っていたというのか……! なんという底知れぬ男だ。神の初期化すら、奴の手のひらの上のイベント(仕様)に過ぎないとは……ッ!」


「ええ。ですから我々幹部は、蒼太様が心置きなく『有休エネルギーチャージ』に専念できるよう、この命に代えても防壁とインフラを維持しなければなりません。蒼太様万歳!!」


「「「蒼太様、万歳!!」」」


幹部たちの間で、蒼太への評価が「銀河系を救う救世主にして、全知全能の支配者」レベルにまで神格化インフレしていく。


――一方、その頃。


当の全知全能の支配者は、防音完備のペントハウスのベッドの上で、ポテチのカスを腹にこぼしながら、仰向けでスマホゲームのガチャを回していた。


「あー、クソッ! またSSRすり抜けた! 確率操作してんじゃねえのこの運営! ……ふぁ〜、眠た。まあ、APもカンストしたし、難しいことはルシスたちがやってくれるだろ。俺は寝る」


蒼太はタブレットを放り投げ、結衣が淹れてくれた温かいミルクティーを飲んで、そのまま幸せな夢の世界へと落ちていった。


配下たちが勝手に国を回し、勝手に忠誠心を高め、自分はただ寝ているだけで全人類の頂点に君臨する。


ブラック企業で死ぬほど働かされた男が手に入れた、紛れもない『最強のニート生活』の完成であった。


   * * *


――それから、半年後。


蒼太の望み通り、その半年間は一切の波乱もなく、新宿ホールディングスは驚異的な経済発展を遂げた。


市民の生活水準は崩壊前の現代日本を完全に超え、誰もが相田蒼太を「豊穣と守護の神」として崇め奉っていた。


しかし、無情にも『その日』は訪れた。


神が宣告した、半年間の猶予の最終日。


「……蒼太さん。空が」


バルコニーで蒼太に寄り添っていた結衣が、震える指で上空を指差した。


蒼太がサングラスを外して見上げると、青かったはずの新宿の空が、突如として『真っ青な単色』に塗り潰されていた。


それはまるで、パソコンが致命的なエラーを起こした時に表示される、死のブルースクリーン(BSoD)。


空の全面に、無機質で巨大な白い文字列システムコードが、滝のように流れ始めている。


『// Root Server Connected.』

『// World_Format_Process [Earth] Initiated.』

『// 警告:致命的なバグ(相田蒼太)が確認されました。これより、物理ドライブの完全消去(物理的破壊)を開始します』


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!


地球という惑星そのものが、悲鳴を上げて軋み始めた。


新宿の絶対防壁が、これまで経験したことのない異常な負荷を検知し、真っ赤な警告音と共に火花を散らす。


「蒼太様!!」


凛、ルシス、カーミラ、そして四大帝たちが、全武装を展開してペントハウスに集結した。誰もが死を覚悟するほどの、文字通りの『次元が違う』圧倒的な神のプレッシャー。


システム・ゴッドの本体ルートサーバーが、ついにこの世界をフォーマット(滅ぼす)するために、直接ログインしてきたのだ。


だが。


最強の引きこもりは、半年間ダラダラと過ごして完全にチャージされた身体を軽く伸ばすと、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「半年ぶりの大型アップデート(残業)か。……クソみたいな運営(神)のサーバーごと、俺のシステムで乗っ取って(ハッキングして)やるよ」

蒼太のスマホが、世界を飲み込むほどのまばゆい白銀の光を放つ。


絶対安全な引きこもり部屋を守るため、相田蒼太の「神殺しのデバッグ作業」が、いよいよ最終章へと突入する

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