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第62話 地下二十七階トレント

「もう練習は十分だな。下に行くとするか」


 墓地での新技開発を終わらせた。岩の手でも剣を普通に振り回すのは出来そうだ。

 これから地下二十七階の『古代林』に行って、本物の『トレント』を倒しにいく。

 地下九階の枯れトレントと違って、幹や枝、葉が生き生きしているらしい。


 トレントは高さ三メートルを超えていて、薄茶色の幹の太さは三メートル以上はあるそうだ。

 二本の枝の腕は鞭のように伸び縮みして、変幻自在の攻撃を可能にするそうだ。


 もちろん、姉貴の手帳の情報を完全に信用してはいけない。

 しっかり者の俺と違って、姉貴は適当な性格だった。

 汚い字と下手くそな絵は、暗号か抽象画にしか見えない。

 

「この『翼ある緑小竜』が少し気になるな。やはり竜は強敵だ」


 トレント以外のモンスターの情報も手帳を見て予習する。

 警戒したところでトレントは雑魚だ。真に警戒するべきは二十八階の緑小竜だ。

 火は吐かないみたいだが、馬並みの大きな巨体で、空を素早く飛び回るそうだ。

 素材入手の為にも、対空中用の技が必要になると思う。


 でも、そろそろ戦闘準備を始めないといけない。

 二十七階に到着した。階段口は巨大な幹の中に開いていた。


「ここが古代林か……十五階の森林地帯とは少し違うな」


 目の前には森特有の緑色と茶色の世界が広がっている。

 だけど、他の森と比べて明らかに、木の高さや太さが全然違う。数倍は巨大化している。

 所々に灰色の岩盤が見えている地面には、茎の先端が渦巻き状になっている植物が生えている。

 鱗で守られているような卵型の赤、青、黄色の花は見た事がない。


 花を地上に持って帰る事が出来れば、これだけでも金になりそうだが、それは無理だ。

 町に出た瞬間に、魔石や素材以外のダンジョンの物は壊れて消えてしまう。


「こういう時はモンスター探知が欲しくなるな」


 木漏れ日が差し込んでいる森の中を、トレントを探して適当に歩いていく。

 アビリティで視覚と聴覚が上がっているので、近くにいればすぐに分かる。

 それでも便利なアビリティは欲しくなる。とくに一番欲しいのは神の結界を通れるアビリティだ。

 それさえあれば、こんな苦労はしなくて済む。


 ドゴォ、バキィ、ドゴォ……


「何の音だ?」


 突然、森の中に大木を斧で叩くような破壊音が聞こえてきた。

 この破壊音を撒き散らしているのが、おそらくトレントなのは間違いない。


 ドドドドドッッ——


「ボォォー‼︎ ボォォー‼︎」

「おいおい、情報が違うぞ」


 姉貴の手帳の情報に、明らかに重要な部分が抜け落ちている。

 四メートルはある木が、変な呻き声を上げて、蜘蛛のように生えている根っこの足で走ってきた。

 二本の枝が生い茂っている腕を、確かに鞭のように振り回しているが、走りながら振り回している。

 その姿はまるで暴れ馬みたいだが、俺には横太りした狂った木にしか見えない。


「接近戦はやめておくか」


 墓地で練習した新技は一旦忘れる事にした。あの速さには対応できない。

 巨大化した腕で、巨大になった剣を持って、薪のようにパカーンと割ろうと思ったが無理だ。

 正面に立って剣を構えていたら、枝の手で張り倒されるか、大きな幹の身体に跳ね飛ばされる。


「だったら遠距離しかないな。真っ直ぐ来るなら転ばせてやる!」


 デカい相手にはデカい攻撃しか効かない。この考えは変わらない。

 両手で縦横一メートルの四角い岩塊を作り出して、足を狙って発射した。

 あの巨体が転んだら、起き上がるのに時間がかかりそうだ。


 バキィ——


「ボォッ‼︎」

「チッ、軌道ぐらいは変えられるか……」


 次々に発射される岩塊を、トレントは腕を振り回して防ごうとする。

 だが、力負けして折れた腕が、腕を振り回した拍子に千切れ飛んだ。

 確かに腕さえ無ければ、ただの走る大木に変わる。


「なるほど、良い手を思いついた。フフッ。お前にピッタリの鉢植えを作ってやるよ!」


 岩塊の砲撃を続けながら、大量の魔力を灰色の岩盤に流し込んでいく。

 範囲攻撃はジェノサイドトラップで習得済みだ。

 今回は岩杭の乱れ突き出しではなく、岩壁の乱れ突き出しを行なう。


 トレントの身体を岩壁に閉じ込めて走れなくすれば、ただの大木に変わる。

 あとは腕を切り落として無力化すれば、一方的にトドメを刺すだけだ。


「終わりだ」


 扇状の攻撃範囲にトレントが侵入したので、魔力を爆発させて、地面から大量の岩壁を迫り上げさせた。

 トレントは呻き声を上げながら、迫り上がった岩壁を破壊して進むが、それも数枚だけだった。

 左右二枚の岩壁の狭い隙間を通ろうとして、前のめりに激しく転倒した。


「ボォグゥー‼︎」


 しかも、前方には沢山の岩壁があったので、倒れた時に岩壁の頭に全身を強打した。

 壊れた岩壁の中に挟まって悶絶しているようだが、構わずにトドメを刺してやる。


 岩壁の上によじ登ると、岩壁と岩壁の頭を飛び石の要領で飛んでいく。

 岩壁が多いと、トレントに近づくのに時間がかかる。ここは改良しないといけない。


「ボォッ……」

「ヤバイな」


 トレントが折れて短くなった腕で立ち上がろうとしている。

 岩壁の上で立ち止まると、近づきながら大きくした、左右の岩の手を斜め上に突き出した。

 あとは流星拳で飛んで移動する。まだ真っ直ぐにしか飛べないが仕方ない。

 倒れたトレントの真上に行くように狙って、拳と一緒に自分を飛ばした。


「ぐっ……」


 発射と同時に風の強い抵抗を感じるが、方向と角度は問題なさそうだ。

 十五メートル近くの大ジャンプを成功させた。


「やはり出番だな」


 空中で鞘から剣を抜いた。

 究極の一撃である新技『ウルティマブロー』を使う。

 一旦忘れる予定にしたが、その予定を変更させてもらう。


 神器である剣は手の大きさに合わせて、刀身の長さを三メートル近くに変えていく。

 あとは流星拳を使って、刃を敵に撃ち振り下ろすだけだ。

 でも、縦に切るのはちょっと難しいので、横に切る。


 剣を真上に構えた状態で落下していく。トレントとの距離が近づいていく。

 そして、剣の間合いに入った瞬間、流星拳を地面に向かって撃ち込んだ。


 ドォパァン——


「ボォッー‼︎」


 究極の一撃がトレントの幹に直撃した。幹がバキバキと絶叫を上げている。

 巨大化した刃が幹という肉に食い込んでいく。そして、刃が地面に激突した。

 まさに魔術、体術、剣術を合わせた究極の一撃に相応しい威力だ。


「ふぅー、止まっている相手には行けるな」


 だが、一つだけ改善するべき問題点が残っている。

 素早い黒妖犬には擦りもしなかった。でも、トレントのようなデカい奴には有効みたいだ。

 あとは直線的な単純な攻撃じゃなくて、複雑な連撃を可能にすれば、動いている相手にも当てる事が出来る。


「よし、問題点は分かった。次は直で当ててやる!」


 白い魔石とトレントの硬板を回収して、姉貴の手帳にトレントは走るという新情報を書き込んだ。

 更なる究極の一撃に近づける為に、次なるトレントを探す事にしよう。

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