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第55話 百人対一人

「まずは防壁を作らせてもらおうか」


 床に両手で魔力を流していき、階段口に分厚い岩壁を作った。

 これで弓矢の攻撃を気にしないで動ける。

 岩壁を壊そうと接近する脳筋戦士は、殺傷力の高い尖った岩塊で蜂の巣にする。


 ついでに両手で攻撃しながら、階段口を完全に岩で隙間なく塞ぐ。

 これで階段の中にいる冒険者の助けは期待できない。


「おい! 階段の方に岩壁が現れたぞ!」

「ほら、あれだ! 拳で飛んで瞬間移動したんだよ!」

「何でもいい。遠距離魔法攻撃用意!」


 突然現れた岩壁に、三十メートル程離れた所にいる冒険者達が慌てている。

 だけど、慌てていた冒険者達が杖を取り出して、岩壁に杖を向けてきた。


「……そう来たか」


 隠れている岩塊から出るのは、まだ早いようだ。岩壁に向かって、矢と魔法の集中攻撃が始まった。

 炎の火炎球、水柱の砲撃、貫通する雷槍と、岩壁が壊されるのは一分三十秒ぐらいか。


「烏合の衆でも集まれば、俺の力に匹敵するか……」


 身体に刺さっている骨矢を抜きながら、次の作戦を考える。

 どの魔法も直撃すれば、一撃必殺の威力を持つ可能性があるから、迂闊には出られない。

 接近して乱戦に持ち込むという手もあるが、無傷の勝利は難しい。

 下手すれば手足が千切れてしまう。


「仕方ない。見逃してやるか」


 負けを認めたわけでも、戦略的撤退でもない。忙しい俺は雑魚の相手をする暇はない。

 骨矢はまだ残っているが両手を床に着いて、壊れかけの岩壁の後ろに新しい岩壁を作った。

 これであそこに俺が、まだ生きていると思わせる事が出来る。


「あれ? 待てよ……魔力切れを狙えばいいんじゃないのか?」


 これから階段を塞ぐ四角い岩塊を壊して、階段の中に入るのだが、魔法使いが攻撃を続けている。

 弓使いも馬鹿みたいに岩壁に矢を放っている。

 このまま囮の岩壁を作りまくったら、魔力も矢も切れるはずだ。

 そうなれば、脳筋戦士を排除すれば、一方的に攻撃できるチャンスタイムの到来だ。


「いや、駄目だ。冷静になるんだ」


 冒険者を倒すのが俺の目的じゃない。

 それに階段に閉じ込めた冒険者達が、出入り口を塞ぐ岩塊を壊している。

 岩壁が壊される前に、階段から冒険者達がウジャウジャ出てくる。

 そうなれば、もう何処にも逃げ場はない。


「前門の雑魚、後門の雑魚。どちらの雑魚を倒せば……ハッ‼︎ そういう事か‼︎」


 俺の驚異的な頭脳をフル回転させた結果、ある事に気づいてしまった。

 大広間にいる前門の雑魚を倒しても、結局階段を通るから、階段の後門の雑魚も倒さないといけない。

 つまり前門の雑魚は倒すだけ時間の無駄になる。


「ヤバイな。とんでもない真実に気づいてしまったようだ」


 とんでもない真実に気づく前から命を狙われているが、まあいい。

 骨矢を抜き終わったので、両手に岩を纏わせて、腹ぐらいの大きさの岩の手に変えた。


 この両手で階段口を塞ぐ邪魔な岩塊の破壊作業を手伝ってやる。

 階段に閉じ込められた冒険者達が泣いて、俺に感謝するだろう。

 すぐに恐怖で泣き叫ぶとも知らずにな。


「ハッ!」


 ドガッ! 俺を閉じ込め守ってくれていた岩塊の壁を、拳で突き破って勢いよく外に出た。

 七メートル先の囮岩壁はボロボロになっている。

 早く階段の中に入らなければ、今度は俺がボロボロにされる番だ。


「おい、仮面の奴がいたぞ! 階段の右側だ!」

「くそ、あっちに隠れていたのかよ!」


 愚か者共め。今頃気づいてももう遅い。

 岩塊から飛び出した俺に気づいて、敵が攻撃しようとしているが、その前に階段前の岩壁の裏に隠れた。

 あとは流星拳の乱れ打ちで、邪魔な岩塊を殴り壊すだけだ。

 さあ、雑魚冒険者の血祭りの始まりだ。


 ♢


 ガン、ガン……


「さっさとハンマーで壊せよ! 通れないだろう!」

「うるせい‼︎ もう十一個も壊してんだよ‼︎」

「そうだ! あと少しだから、後ろからガタガタ文句言ってんじゃねぇよ!」


 階段に山積みになった岩塊を、必死に壊している冒険者達の声が聞こえてくる。

 後ろの奴らが文句があるようだが、文句なら前から来る俺にもある。

 すぐに合流してやるから、ガタガタ震えながら待っていればいい。


 ドガァン、ドガァン——


「ぐっ! お、おい! 何やってんだよ! 破片が飛んできて危ねえだろ!」


 合流直前だから壊れた岩塊の破片が飛んでくるみたいだが、次に飛んでくるのは拳だ。

 危ないで済めばいいが、それは無理だ。だが、その前に逃げられないようにしてやる。


 目の前の岩塊を殴り壊すのをやめると、魔力を階段下に流していく。

 岩壁を俺の前後の階段から迫り上げさせて、戦力を分断させてもらう。

 あとは逃げ場のない行き止まりに閉じ込めた雑魚共を、両拳の流星拳で滅殺していく。


 ガコォ——


「何だ、これは‼︎」

「お前達の人生だよ」


 自分達の背後に突然迫り上がった岩壁に、雑魚共が動揺している。

 お前達の人生はここで行き止まりだ。あとは俺に倒されるだけしかない。


 ドガァン——


「ぐわぁ‼︎」

「ちょっ、ぺっ……てめぇー!」


 最後の岩塊を殴り壊して、やっと冒険者達の目の前に到着した。

 楽しいお喋りをするつもりはないので、楽しい一方的な虐殺を始めた。


「ぐぼぉ‼︎」

「がはぁッ‼︎」


 ドゴォ! バキィ! 反撃する時間も考える時間も与えない。

 ただ目の前の冒険者を最速のパンチで殴り飛ばしていく。

 あまりの速さに、もう両足は地面に着いていない。

 空中で魔力を込めて、パンチを連続で撃ちまくる。


「盾でガード、ぐがぁぁ!」


 盾で攻撃を防いでも無駄だ。ガンと盾ごと殴り飛ばした。

 でも、すぐに別の対策を用意してきた。


「駄目だ、武器を突き出せ! このまま突撃するぞ!」

「おお‼︎」


 雑魚共が剣や槍の切っ先を真っ直ぐに向けて、階段を上って突撃してきた。

 流星拳で殴り飛ばそうとすれば、串刺しにされてしまう。

 付け焼きの作戦にしては良い考えだが、俺の流星拳は単独でも飛んでいく。


「愚か者共め!」

「ぐわぁっ‼︎」


 突撃してきた愚か者共が、左右の飛ぶ流星拳にドガァンと殴り飛ばされていく。


「怯むな! 刺し殺せ!」

「しつこい!」


 だが、流星拳を避けた愚か者共がまだ向かってくる。

 そういう奴には左右の手の平から岩塊を発射していく。

 さらに地面から岩壁を迫り上げて、こっちも発射した。


「がはぁ‼︎」


 俺に近づく事は許さない。

 お前達に許されるのは、俺に見下ろされて地面に這いつくばる権利だけだ。

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