第43話 寝込みゾンビ
「ぎゃああああ‼︎ な、何だ⁉︎」
体力温存の為に寝ていると、左足を激痛が襲った。
飛び起きてみると、足に噛み付いているジェイがいた。
「ガグゥ、ガグッ!」
「早速食ってんじゃねぇよ!」
「グギャア!」
ドガッ! 寝込みを襲う屑野朗の顔面を蹴り飛ばした。
救出を待つと決めてから、まだ一日どころか三時間も経っていない。
俺を殺して、食糧と水を奪うつもりだ。
いや、殺すつもりはないのかもしれない。
腐らないように生かしてまま少しずつ食べるつもりだ。
だから、ダメージの少ない足から食べようとした。
イカれた行動だが、賢い方向にイカれてやがる。
「くっ、この野朗が! そっちがそのつもりなら覚悟しろよ!」
蹴り飛ばした直後、側に置いていた剣を取って、素早く立ち上がった。
相手が素手でも俺は全力で戦う。剣を鞘から抜いて、切れないように岩でコーティングした。
ボコボコに半殺しにしてから、篭城していた小屋に放り込んでやる。
「ギャアア!」
「セイ!」
ドゴォ! 真っ直ぐに襲い掛かってきたジェイの腹に、擦れ違うように剣を水平に叩き込んだ。
鍛えられた冒険者の腹筋でも悶絶必至の一撃だ。
「グガァ!」
「チッ!」
だが、腹に叩き込んだ直後にジェイの左手が素早く飛んできた。
手加減したつもりはなかったが、心優しい俺が知らず知らずに手加減してしまったようだ。
左手を避けると、今度は右足のスネに剣を叩きつけた。これも悶絶必至の一撃だ。
「グガァー!」
「何だ、コイツ⁉︎」
けれども、我慢強いのかこの攻撃にも耐えられた。
俺なら床に倒れて、スネを両手で押さえて号泣しているのに、肩に噛み付いてきた。
だが、動きと反応は速いが、動きが単調だ。目の前の肉に噛み付こうとする動きは避けやすい。
「もしかして……お前、ゾンビか?」
少し冷静になって、ジェイを見ると身体が青白いままだった。
聖水を二本も飲んだから、肌の色は薄い黄色に戻ってもいいはずだ。
イカれた行動に痛みを感じない身体は、まさにゾンビの特徴だ。
「ギャアア!」
「おっと……」
返事の代わりに襲ってきた。
確認は取れなかったが、『調べる』を使えば分かる。
まずは身体を拘束して暴れられないようにする。
ゾンビじゃなくても、コイツには拘束が絶対に必要だ。
「よし、来い! オラッ!」
「グベェ!」
また単調な突撃で襲ってきたので、こっちも突撃して、足を狙って滑り込んだ。
足と足が打つかって、ジェイは前にバタンと顔面から転倒した。
手を前に伸ばして、地面に打つからないように受け身も取れないみたいだ。
「テメェー、大人しくしろ!」
立ち上がられる前にジェイの背中に飛び乗ると、両手で背中に触れた。
イメージは岩の全身鎧を無理矢理に着せて、身体を拘束するしかない。
一気には無理なので、まずは上半身だけを岩で覆っていく。
「グガァ、グガァ!」
「チッ、動くな!」
ジェイが暴れるから、覆おうとしている岩が割れてしまう。
だけど、右側を集中して覆って、次に左側を覆っていく。
上半身を四角いブロックで覆う事に成功した。次は下半身を同じように覆う。
「ふぅー、手間取らせやがって。これで大丈夫だな」
まるで巨大なレンガに閉じ込められた人間だが、これで頭以外は身動き出来なくなった。
ジェイの後頭部を鷲掴みにすると、『調べる』を使った。
【名前:ゾンビ 年齢:18歳 性別:ゾンビ 身長:174センチ 体重:58キロ】
「やっぱりゾンビになってやがる」
調べた結果は予想通りだった。ゾンビになると、名前と性別がゾンビに変わるらしい。
とりあえず助ける方法があるかもしれない。調べるで手掛かりを探してみた。
【『筋力上昇LV3』『物理耐性LV3』『体力上昇LV9』『不老耐性LV9』『痛み耐性LV9』『空腹耐性LV9』『睡眠耐性LV9』『毒耐性LV9』『麻痺耐性LV9』『自然治癒力LV1』】
【進化素材:太陽石七個】
【行動可能階層:二十階】
七つのLV9のアビリティは凄いが、自然治癒力が低くすぎる。
あと進化なんて危険な行為をするわけない。
とにかく我慢強くなったのと、コイツに食糧が必要ない事は分かった。
これで食糧が二週間になったと喜びたいが、俺もさっき噛まれたからゾンビになる。
「くそ! やっぱり見捨てておけば良かった!」
腹立たしげにゾンビレンガの椅子に座った。もう噛まれたし、閉じ込められたから、後悔しても遅い。
逆に飯を食べずに一ヶ月ぐらいは、余裕で生きられると思うしかない。
聖騎士の姉貴なら、もしかすると助けられるかもしれないけど、姉貴は攻撃系が得意だった。
一番助かりそうなのは、聖水を大量に飲むか、聖水作っている人間に治療してもらうしかない。
「よし、とりあえず助かる確率を少しでも上げよう」
意識があるうちにゾンビになっても、間違って倒されないようにする工夫が必要だ。
ジェイの岩レンガの上に状況を書いた張り紙を貼って、ついでに俺の身体も岩レンガで拘束しておく。
あとは救出か、青い宝箱が復活すると願って、やって来た冒険者が知的な良い人だと願うだけだ。
運が良ければ、病院のベッドで目を覚ませる。




