第41話 間話:メル
「誰か助けてください! 助けてください!」
ピラミッドの中を助けを求めて走り回る。宝箱を開けた直後に大量のゾンビに襲われた。
何とか階段まで逃げたけど、隊長は普通にジェイさんを閉じ込めて、見捨てようとしている。
早く冒険者を連れて行かないと、隊長は絶対に助けないから助からない。
「あっ! すみませーん、助けてくださーい!」
通路の向こうに四人の冒険者の姿が見えた。急いで大声で叫んで走っていく。
「何だ、何だ? こんな所に何で子供がいるんだ?」
「ほら、カナンが最近連れていた子供だよ。でも、何でこんな深い所にいるんだ?」
「迷子だとしたら凄えな。普通はここまで来れねぇ」
「迷子じゃないです! 大量のゾンビに襲われているんです!」
大きな身体の三十歳ぐらいのおじさん達が、私を見て暢気に話している。
超ピンチだから、早く助けて欲しい。大量のゾンビに襲われていると急いで事情を話した。
「えぇー、カナンを助けるのかよ。他の冒険者に嫌われそうだな」
「まあ、姉ちゃんに感謝されそうでいいんじゃねぇのか。良い装備が貰えるかもしれないぜ」
「じゃあ、助けに行くか。どこにいるんだ?」
「こっちです! 早く助けてください!」
誰もすぐに助けに行こうとは言わなかった。
隊長が何となく嫌われているのは知っているけど、想像以上に嫌われている。
それでも助けてくれるそうだから、急いで道案内していく。
「あそこの部屋です!」
通路を左に右に曲がって、隠し階段があった部屋が見えてきた。
部屋を指差して、後ろの四人に教えてあげた。
「分かった。危ないから、嬢ちゃんは後ろに隠れてな。お前ら、行くぞ!」
ゾンビがいるかもしれないと、私はおじさん一人と通路に待機させられる。
三人が武器を構えて部屋に入っていく。
でも、すぐに「ちょっと来てくれ!」と大声で呼んできた。
返事をして、急いで部屋の中に入ると、おじさん達が部屋の床に困った感じに座り込んでいた。
「ここが隠し通路の入り口だよな?」
「はい、そこです。早く助けてください」
剣を持っているおじさんが、塞がりかけている床石の穴をペチペチ叩いて聞いてきた。
早く床石を壊して穴を広げて、隊長とジェイさんを救出して欲しい。
「嬢ちゃん、それは無理だ。入り口が閉じかけている。中に人がいないか、死んでいる証拠だ」
「じゃあ、隊長は逃げ出したんですね」
隊長がこれ以上嫌われないように、見捨てて逃げ出したとは一応言わないようにした。
多分、その辺に隠れていると思う。隊長は助けようとして一緒に死ぬ人じゃない。
「その可能性もあるが、確かめに行こうにも道は塞がっているからな。その辺にいないか探すしかないな」
「そうなんですか……」
「安心しろよ、嬢ちゃん。俺達も探してやるし、見つからなくても階段に張り紙を貼っていれば、町に戻ったと知らせる事が出来るぜ」
私が隊長を心配していると思ったのか、おじさんが優しく励ましてくれるけど、ちょっと違う。
私が心配なのは、私がダリルさん達にジェイさんが死んだと伝えないといけない事だ。
絶対に怒られるし、もしかすると隊長の分まで殴られるかもしれない。
きっと隊長は殴られたくないから逃げ出したと思う。絶対にそうだ。
「はぁ……」
「嬢ちゃんの仲間はカナンとジェイの二人だけなのか?」
「いえ、ジェイさんの仲間が二人います。今は二十四階に私の指輪の強化素材を取りに行ってます」
「そうか……仲間の死を知るのは辛いだろうな」
ため息を吐きつつ、おじさん二人と隠れている隊長を探して回る。
他の二人は二十階と二十一階の階段に、隊長が逃げてないか聞きにいった。
絶対に二十階から外に逃したりしない。
擦れ違う冒険者の人にも頼んで、隊長探しを協力してもらう。
階段に行ったおじさんが二人戻ってきた。隊長はまだ階段を通ってないそうだ。
つまり、二十階のどこかに隠れている事になる。
♢
三時間後……
「駄目だな。二十階のどこにもいない」
「こりゃー、あれだな」
「あぁ、考えたくないが……」
二十階を隅々まで探したのに隊長は見つからなかった。
隊長を探そうとしていた冒険者の人達がヒソヒソ話をしている。
「そんな……隊長は逃げなかったんですか?」
信じられないけど、探して見つからないという事は、探してない場所にいるという事だ。
あの隊長がジェイさんを助けに行ったなんて、信じられないけどそれしかない。
それで一緒に死んでしまったみたいだ。
「うっ……おば様とおじ様になんて言えばいいんだろう」
隊長が死んだのなら、ダリルさん達には怒られないと思うけど、隊長の家族にはすごく怒られる。
もしかしたら、どっちらからも怒られるかもしれない。今度は私が逃げ出したくなってきたよ。




