第26話 隠れ宝箱
地下一階『炭鉱迷路』……
「どういう事だ? なんで何もないんだ?」
今まで順調に宝箱を見つけていたのに、事件が起きた。
モヤモヤを感じた場所の行き止まりまで、やって来たのに宝箱が見つからない。
分かれ道の方には反応がなかったから、この道で合っているはずだ。
「でも、モヤモヤしますよ」
「ああ、俺の心もモヤモヤしている」
疑われていると思ったのか、メルが嘘じゃないと訴えてきた。そんな事は分かっている。
俺を騙して遊んでいるなら、腕立ての刑で上腕二頭筋をパンパンにしてやる。
「もしかして……壁の中にあるのか?」
まさかと思いながら、行き止まりの壁を叩いてみた。
ゴツゴツと中身がしっかり詰まっている音が返ってきた。
壁の中に空洞があるとしても、約三百メートルの天井、床、壁だ。
それを二人で調べるのは、かなりの重労働になる。
「壁を叩いて調べるんですか?」
「ちょっと待て。今、考えている……」
「はぁーい」
メルが短剣を鞘から抜いて、壁を調べる準備万端だが、壁の中にあると決まってない。
それでも調べないと、有るのか無いのか分からない。
「仕方ないな。天井は無理だから届く範囲を調べるぞ。俺は右側の壁を調べるから、メルは左側を調べろ」
「了解です。分かりました」
今までの赤い宝箱は全部行き止まりにあった。
見つからないなら青い宝箱の可能性が高い。
地魔法で岩ハンマーを二本作ると、一本をメルに渡した。
壁の行き止まりから丁寧に叩いて調べていく。
前に壁から青い宝箱を見つけた奴がいたとしても、捜索範囲が広すぎる。
もう一度探したいとは思わなかっただろう。
一時間経過したが、ガンガン叩いて、地味な音を立てている。
やっと壁の半分を調べ終わったが、残り半分もある。
これで壁に無かったら、次は床を調べるしかない。
「メル、俺は手伝わないからな。さっさと調べろ」
「はぁーい」
離れた場所で、壁を叩いているメルに大声で呼びかけた。
丁寧に調べるのもいいが、丁寧に早く調べるのが一流冒険者の仕事だ。
あれだと三流以下の冒険者だ。
「はぁ……こっちがハズレなら、あっちも俺が調べないといけないな」
子供の腕力で叩いたところで、キチンと調べられているか分からない。
二度手間だけど、床に見つからなかったら、左側の壁をもう一度調べるとしよう。
「ふぅー、終わった」
さらに一時間経過して、右側の壁は完璧に調べ終わった。
メルがまだ調べ終わってないから、手伝うしかない。
どう考えても床を探す前に、左側の壁を探した方が見つかりそうだ。
「発掘作業だけなら、子供だけでもやれそうだな。適当に雇ってみるか」
左側の壁を叩きながら、もっと楽に見つけられる方法を考えてみた。
このぐらいなら、町の子供を一時間百ギルで雇ってやらせた方が早い。
でも、それは壁の中から青い宝箱を見つけた後だ。
無い物を探させて、金を払うのは馬鹿がする事だ。
♢
「隊長ぉー! 隊長ぉー! ちょっと来てください!」
「何だ?」
五十メートル程離れた場所にいるメルが、突然、大声で叫び始めた。
全然見つからないから、ついに頭が爆発したのだろうか?
足元にハンマーを置いて、どこまで調べたか分かるようにすると、メルの元に走った。
「どうした? ハンマーで指でも打ったのか?」
「違います。ここの壁の音が違うんです」
「何?」
何が起こったのか聞くと、壁の下の方を指差してから、岩ハンマーで叩き始めた。
指差した場所と違う場所を叩いて、音が違うと主張している。
「ほら、違いますよね?」
「確かに違うな。ちょっと代われ」
「はぁーい」
メルからハンマーを借りて、壁を何度も叩いて、音の違いを聴き分ける。
気の所為かもしれないが、叩く場所で重い音と軽い音に聴こえる気がする。
音の感じだと、縦長の長方形の空洞があるみたいだ。
こんなに大きな空洞ならば、丁寧に調べる必要はなかった。
壁を横一直線に足蹴りして調べていけば、十分以内に見つけられた。
「間違いない。ここに何かある。メル、危ないから下がっていろ」
「はいです」
メルを少し下がらせると、壁に向かって、右手から弾丸を連射した。
弾丸がぶつかると、岩壁がバラバラ崩れて青い宝箱が現れた。
「あっ、ありました!」
「予想通りだ。早く開けてくれ」
「はい!」
捜索開始から二時間以上も経過したが、青い宝箱を発見した。
発見を喜んでいるメルに蓋を開けさせて、中から黒い革手袋を取り出させた。
革手袋を受け取って、早速調べてみた。
【神器の手袋:使用者に筋力上昇LV1を与える】
【LV2強化素材:ウルフの皮五枚、子猫獣人の骨五本、赤毛猿の毛皮五枚】
俺の筋力はLV4、メルはLV1だ。
手袋を強化しないと填める意味はない。
「まあ、こんな物だろう。お前にやる」
「えっ、良いんですか⁉︎」
「ああ、いいぞ。次は二階を調べる。多分二階にも宝箱があるはずだ」
「わぁーい! ありがとうございます。大切に使います!」
俺は最初から要らないから、メルに手袋をあげた。
強化素材は俺が取りに行ってもいいし、一階の階段で買取り業者になってもいい。
待っているだけで、欲しい素材を冒険者達が運んで来てくれる。
地下二階に移動すると、一階と同じように宝箱探知で調べていく。
復活した赤い宝箱があれば回収していく。
そして……予想通りに、行き止まりに宝箱がない場所を見つけた。
「よし、ここだ。さっきと同じように調べるけど、さっきよりも早く見つけるぞ」
「はい、今度も見つけます!」
「調子に乗るな。次は俺が見つける」
「はぅっ!」
メルが調子に乗ったから、軽く頭を叩いた。
岩ハンマーを一本渡して、作業を開始した。最速のやり方は考えている。
歩きながら適当に壁を叩いていけば、音が違う壁が見つかる。
ガンガン叩いていくが、やはり簡単には見つからない。
だけど、さっきの五倍は早い。
これなら二十五分で壁三百メートルを調べられる。
そう思っていたんだが……
「隊長ぉー! 隊長ぉー! ありましたぁー!」
「くっ!」
メルが大声で呼んできた。
さっきは左側にあったから、今度は右側にあると思ったのに違ったようだ。
足元にハンマーを置いて、メルの元に走った。
「ここの音が違います」
「そこにあるんだな? 分かった。下がっていろ」
「はいです」
メルが壁の真ん中を指差して教えてきた。
叩かなくてもあるのは分かっている。さっさと岩壁を破壊した。
予想通りに壁の中から、青い宝箱が現れた。




