表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/172

第25話 間話:メル(心配)

「はむっ、はむっ……」

「昼飯は抜きだから、食えるだけ食え。頑張って晩飯分も食べていいからな」

「うっ、そんなに無理です」


 隊長はすぐに予定を変更するから、もう慣れてしまった。

 お金がないから、お休みは取消しになってしまった。

 要らないと言っていた朝食も、宿屋の食堂で普通に食べている。

 外の食堂で食べると、おじさん達に見つかるから危険らしい。


「宿屋の飯は内容の割に高いんだよな」

「焼きたての甘いパンは美味しかったですよ」


 二人合わせて朝食代は千ギルだった。

 朝食を食べ終わると、宿屋を出て、すぐ近くのダンジョンを目指した。

 隊長は値段に文句を言っているけど、たくさん食べさせられた。

 正直、食べ過ぎてお昼まで動きたくない。


「そうだな。パンは食い放題だから、昼飯分も食べれば元は取れるな」

「はい、お腹パンパンです」

「ククッ。確かにパンパンだな」


 苦しそうに膨らんだお腹を触ると、隊長がおかしそうに笑っている。

 頑張って十四個も食べたのに、隊長はたったの五個食べて、ごちそうさましていた。

 隊長には食べ放題は向いていない。

 その辺のパン屋で、二個二百四十ギルで買った方がいい。


「よし、急いで入るぞ」

「はい!」


 ダンジョンの入り口に、おじさん達がいないのを確認すると、一気に駆け込んだ。

 隠れんぼみたいだけど、見つかったら、私だけ家に連れて行かれる。

 隠れるのが辛くなったら、早く見つけてもらえるように頑張ろう。


 ♢


「まずは一階を徹底的に調べる。入り組んだ場所のモヤの反応を知りたい」

「お金は稼がなくてもいいんですか?」


 地下一階に下りると、隊長が今日の予定を話してくれた。

 だけど、朝食と夕食を合わせた二人分の宿屋代は六千ギルだ。

 私がスライムを一日中倒しても、三千ギルぐらいだから、お金が足りない。


「稼ぐに決まっている。安心しろ。金を稼ぎながら、戦力を強化する方法を考えている」

「そうだったんですね。余計な事言って、ごめんなさい」

「別にいい。さっさと行くぞ」


 とりあえず謝っておいた。お金の心配をしたら、隊長は頭を自慢気に指差した。

 多分、上手くいかなかったら、すぐに変更になると思う。

 隊長は思いつきで行動するから、言っている事はいつもペラペラの薄々だ。


「ハァッ! ヤァッ!」


 時間の節約だと、今日は隊長がスライムを倒していく。

 私は落ちている魔石とスライムゼリーの回収を任された。


 多分、他の階でも同じように進んでいくと思う。

 私は凄く楽だけど、スライムぐらいは倒させて欲しい。

 魔石拾いだけだと、ちょっと暇すぎる。


「あっ、モヤモヤします!」

「よし、ちょっと待ってろよ……」


 急に頭の中の天気が、晴れから曇り空に変わったから、隊長に報告した。

 この不思議な感覚にも慣れてきた。

 隊長は地図を取り出して、何かを確認している。


「三百メートル以内に行き止まりがある。そこに宝箱があるんだろう。逆に三百メートル先が行き止まりなのに、反応がないなら宝箱はない。わざわざ確認する必要がなくなったから、時間短縮できるな」

「うーん、どうしてですか?」


 よく分からないから聞いてみた。

 隊長は広げた地図を見せて、説明を始めてくれた。

 私のモヤ範囲は約三百メートルだから、反応が無い時は調べる必要がないそうだ。

「往復六百メートルの節約になった」と隊長は凄く喜んでいる。

 宝箱を早く回収して、次を探した方がもっと節約になると思う。


「本当にありました」

「当たり前だ」


 隊長の言う通りに宝箱が行き止まりにあった。赤い宝箱を開けて中身の神銅を回収した。

 神銅は千ギルで売れるから、これだけでも結構な収入になる。

 

「これを売れば、赤字にはなりませんね」

「売るなら、ある程度強化して高く売った方が良いぞ。冒険者ギルドはそれで儲けているからな」

「これがそんなに高く売れるんですか?」


 私のブロンズダガー改を見せて、隊長に聞いてみた。

 神銅を八個も使っているから、八千ギルで売れると思う。

 そう思ったんだけど、「そんな弱い短剣は誰も買わない」と言われてしまった。

 言い方が酷すぎる。


「高額で売れるのは、神具図鑑に載っていない武器だけだ。誰でも作れる武器は誰も買わない」

「でも、強化方法が分からない武器は作れませんよ」

「その通りだ。冒険者ギルドが情報を秘密にしているから作れない。奴らは換金所で素材を楽に手に入れて、楽に強化して、楽に高値で売っている。金に汚い亡者達だ」

「……」


 隊長とどこが違うのか分からない。

 でも、強化方法が分からないから、高く売れないのは分かった。

 隊長の無駄話に付き合わされて、また時間を無駄にしている。

 結局、神銅は普通に千ギルで売るみたいだ。


「じゃあ、これは売るんですね?」

「お前は何を言ってるんだ? 俺の話をキチンと聞いていたのか?」

「すみません……」


 叱られた理由は分からないけど、とりあえず謝った。

 複雑な気分でいると、隊長が冒険者手帳を自信満々に見せてきた。


「この手帳には、俺が使っている剣の作り方が書いてある。凄い剣を量産できるというわけだ」

「それは凄いですね」

「安心しろ。まずはお前の短剣を鍛えた後だ」

「ありがとうございます」


 そんな心配は少しもしていないけど、隊長の目にはそう見えるみたいだ。

 だったら、それが正解でいいと思う。否定するだけ時間が勿体ない。

 そして、隊長も強化方法を隠しているから、金に汚い亡者みたいだ。

 でも、それはもう知っているから、教えてくれなくても大丈夫です。


「よし、話は終わりだ。今日中に二階まで調べるぞ。一日二階ずつは調べられるだろうからな」

「はい」


 今日の予定がまた決まったみたいだ。でも、やっている事はいつもと変わらない。

 隊長の頭の中だけは、キチンと良い方に毎回変化しているみたいだ。

 色々な意味で、ちょっと隊長の頭が心配になってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ