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第五十一話 奇襲について②

ドンっ!!!


花火が打ち上がったと同時に、轟いた謎の破壊音。

一瞬花火の音かと勘違いしそうになるが、明らかに違う。

思わず耳を塞ぎたくなるような音量も、地面が揺れる衝撃も、段違い。


「……今のは、何でしょうか?」


「嫌な感じがするな。」


「ヒスイちゃん、危険察知。マスター、どうします?」


ダイヤ、ラリマー、ヒスイの三人が一斉にこちらを見る。そこには花火を楽しみとするような、喜びや期待の感情は無かった。


一瞬で危険を察知できるあたり、さすが僕の認める子たちだ。建物に囲まれた場所ではなく開けた場所なら、もっと早くこの危機感を感じ取っただろう。

周りの多くの人々の気配や、多くの建物の障害により、感じ辛くなっていたのだ。


「それで……何か作戦があるんですわよね?」


スピネルはジロっと、僕の目を見る。


彼女は事前からこの気配を感じ取っていた。

ただ白金等級レベルなら感じ取って当然だし、魔王軍幹部のスピネルが感じ取れていなかったら僕が失望するところだった。


「よし、じゃ、分かってると思うけど、今このイーグル街に異変が起こった。今から指示するから、それに従ってくれ。いいよね?」


僕の問いかけに皆、黙って頷いた。

なんでそんな冷静なのか?とか、なんで既に分かってたような対応の早さなのか?とか、そんな問いかけは一切ない。全員が僕に信頼し、何の疑問も疑わずに従ってくれる。


最高だ。

彼ら彼女らには、これからかなりの死闘をくぐってもらうことになるだろう。けどきっとそれは、成長の糧に必ずなる。

それに皆、簡単に死ぬようなタマじゃない。





僕は空を飛んで、騎士団のイーグル街本部に向かっていた。

一度行っていれば空間魔法でワープすることもできたのだが、残念ながら来ていない。それに空間魔法を使うにしても、人が通るとなると座標がズレたりと言ったトラブルが起こる可能性もある。


もちろん僕の腕なら、失敗なんてほぼ100%ない。

ただあくまで、ほぼ。変なトラブルで僕に行動制限とか絶対やだし。

あと、この距離なら走っても一緒だ。


僕はダイヤ、ヒスイ、ラリマー、スピネルにそれぞれ指示を飛ばした。

その内容は、それぞれの門の死守。

1人づつ各門に行ってもらった。


気配を探ったあたり、北門が一番ヤバい。

だから一番強いスピネルをそこに向かわせた。それに多分、フォスとアズも北門に向かっている。

もう着いているかも……気配で何となく分かった。

さすがあの子たちだ、危機には迅速にそして一番危険な場所を守ろうとしてくれている。


きっと彼らなら、大丈夫だ。

一番強い僕が北門に行くべきなんじゃないか?そう思うかもしれない。

確かに僕なら、今襲来しに来ている敵を一掃することは出来る。だがその代わり仲間諸共、イーグル街が消える。


そう、僕は共闘を得意としていない。

魔力が多い分、ちょっとした感覚の違いで範囲も威力も段違い変わる。戦闘を行った場合、他人を巻き込んでしまう可能性が非常に高いのだ。


一般市民が多いことも考えると、僕が戦うのは適切じゃない。それに自分の魔法で仲間が死んだなんてなったら、僕と言えど申し訳ない。


あと残念ながら僕には、今しなければならない他の仕事がある。


皆が門の死守をしてくれているが、各々のリーダーは止めれても一般兵であるスケルトンやダークフェアリーたちを止められる訳ではない。一般兵を中央街に侵略させないためにも、ここでの騎士団の協力は不可欠。


はっきり言ってしまえば……一般人がどれだけ死んでも僕はいい。だけどきっと皆は、悲しむ。

それに一般人をできるだけ守らないとダメって枷があった方が、難しくて面白いだろ?

規則があるから面白い。どんな危機的状況でも、楽しまないと。


トンっと本部に辿り着く。

多分、イーグル街で一番大きな建物だ。

既に一般人が押し寄せ、助けてくれ!だとか守ってくれ!だとか叫んでいる。皆パニックになってるのと同じように、唐突に起こった意味分からない状況に騎士団も困惑してることだろう。


「邪魔。」


僕は民衆の頭上を通り抜け、入口の小さい隙間から入り込む。そのまま区切るように置かれているカウンターの奥に着地した。


「ちょっと、一般人は立ち入り禁止ですよ!」


僕が飛び込んで来たのに驚きつつも、迅速に騎士団の人が近寄ってきた。そりゃ見た目、成人すらしてなそうな少年が来たら、追い返すよね。

なんで僕って、こんな背が伸びなかったんだろ……。


「はい、これ見て。」


空間魔法からパッと緑色の徽章を横の空間に穴を開けて取り出すと、駆け寄ってきた騎士団の人の眼前に突き出した。


風のマークが入った、緑色の徽章。

これはシルフギルドのギルドマスターの証だ。

冒険者が自身の身分を証明する徽章があるように、どのギルドのギルドマスターにもその身分を証明する徽章がある。僕は旅などで身分を知られたくないので、滅多に出さないけど。


緑色にも意味があり、ギルドマスターの徽章は皆…赤、黄、緑、青、の4色どれかの色。

これはそれぞれ世界四大ギルドのどのギルドなのか、またどの管轄のギルドなのかを分かりやすくしている。


冒険者組織の組織図を知っているだろうか?全ての一般ギルドは世界四大ギルドの下に属しており、いずれかのギルドの管轄下にある。


ここでの管轄は、治安維持の範囲の意味ではなく、どのギルドの庇護下に活動しているかを示す。

ちょっと難しいので、歴史を遡って説明しよう。


元々、騎士団から冒険者組織が派生して誕生したとき、帝国には四つのギルドしかなかった。この四つのギルドが言わずもがな、今や世界四大ギルドと呼ばれるシルフギルド、サラマンダーギルド、ノームギルド、ウンディーネギルドのこと。


四つのギルドしかないため、帝国領を四分割してそれぞれそのギルドに一つ割り当て、魔物駆除に務めることになる。


しかしもちろんだがその領域は広く、とてもじゃないが四つのギルドだけでは不十分。そこで世界四大ギルド以外に一般ギルドを設け、そこに管轄領域を与えることで、より強固な治安維持に務めた。

『与える』この文言がとても重要。


あくまで一般ギルドは、世界四大ギルドから土地や領域、そして活動権利を与えられている関係にあると言うこと。つまり世界四大ギルドいずれかに認められていないまま唐突にギルドを作って、冒険者ギルドです…とはならないのだ。


どのギルドから許可をもらっているのか、これを分かりやすくしているのがギルドマスターの徽章の色という訳だ。つまり緑色であれば、僕らシルフギルドから権利を与えられて活動していることになる。


ただ与えるということは、逆に僕らにも責任が生じる。そのギルドが冒険者組織として適切に活動しているかを、調査や定期的に活動記録をチェックする必要がある。だからギルドマスターの事務作業が多いのだ。

いや~めんどいね。


ここでギルドマスターのなり方にも触れておこうかな。

ギルドマスターになるには、2つの条件のどちらかを満たす必要がある。


一つ目が、一番メジャーなギルドマスター採用試験を受ける合格すること。世界四大ギルドが定期的に行っている試験で、かなり難易度は高い。


どのギルドの試験を受けるのかが、そのままギルドマスターになっときの徽章の色に直結する。あと、ギルドによって試験内容が違うんだとか。

そりゃ必要だと考える能力は、世界四大ギルドそれぞれのマスターによって違うので、しょうがないよね。


それぞれの世界四大ギルドが持っている土地や、ギルドの数も違うのでそこんとこは気をつけて欲しい。


二つ目が、世界四大ギルドで銀等級以上の冒険者になること。こっちの路線でギルドマスターになる人はほとんどいないので、かなり裏技みたいなルート。


世界四大ギルドに入れてる時点で能力はそれぞれギルドマスターに求められているし、銀等級になっているということは知識も十分。ギルドマスターになる能力は満たしていると見なされる。

つまりこの夏祭りに来ていたスピネル以外のメンバーは皆、ギルドマスターになる権利を持っているわけだ。


ただギルドマスターになる権利が与えられても、ギルドマスターになれる訳じゃない。

だってそうだろう?土地やお金が無限にある訳じゃない。


ギルドマスターが亡くなってしまい次のギルドマスターを探している状況であったり、新しくギルドを設立するという場合じゃなければ、席が開かずギルドマスターにはなれない。


世知辛い世の中だよね。

せっかく試験に合格したのに、なれないかもしれないだなんて。


そういう人たちは基本的に、ギルドの事務とかに雇うことが多い。ホントに事務の人たちには助かっている。膨大な書類を捌くには、事務員は必須だ。

ありがたい。


……と長々としたが、こんな感じ。

どうでもいいと思うかもしれないけど、ギルド冒険者としては知らなければならないこと……と言うか常識。ぜひ覚えておいて欲しい。



僕の徽章はシルフギルドのギルドマスターってこともあり、一般ギルドの徽章より豪華だ。

色々と、装飾が施されている。騎士団の人もすぐに、僕がシルフギルドのギルドマスターであることを理解した。


「シ、シルフギルドのギルドマスター様ですか?ぶ、無礼な態度を…申し訳ございません!」


「いや、いいよ。それよりここの騎士団長に合わせてくれる?今起こっている惨事に対抗するため、協力してもらいたい。」


「ははっ、了解しました。我々も訳が分からず混乱しているところなのです!すぐにご案内します!」


騎士団の人は、奥の階段から上へと登って行った。

外から見てても思ったがホントに高い建物だな。さらに最上階にいるらしい。やっぱバカと煙は高いところが好き……って、会ってもないのにそれは酷いか。


しばらく階段を登ると、大きな門のような扉があった。

金の装飾が施されており、ドアノブも金。

騎士団の人はその扉の前まで来ると、

「ここです。」

と言って、扉を開けた。


中には大きな椅子に、強面で髭の生えた男。

服の紋章からも察するに、騎士団長だろう。

周りには騎士団の人たちが囲んだようにおり、地図を中心に焦りながら話している様子。


作戦会議中か。ただ焦ってあれこれ考えるより、先ず行動するのが大事かもしれない。実際外ではたった今、殺されている人がいるのである。こういう緊急事態のときこそ、会議と現場で差が生じることもある。

いつでも広い視野ってのは大事だ。


「む!?何者だ?」


「こ、こちら、シルフギルドのギルドマスター様です。イーグル街のピンチに駆けつけて下さいました!」


案内してくれた青年が焦ったように説明した。

ピンチに駆けつけたつもりは無いんだけどな。

そう思いながらも、徽章を再び手に持って突き出す。


「シ、シルフギルドのギルドマスター様!?こ、これは、何故このイーグル街に……、それより助かりました。どうぞこちらに。」


睨むような目が一変し、謙る姿となる。

イーグル街の騎士団長と言えど、僕に比べれば地位は低い。組織は違えど、僕には頭が上がらないだろう。


「よし、じゃ、現状の共有からしようか。今このイーグル街は魔王軍の襲撃を受けている。兵力は千ほど。各門に等分されて襲撃して来てる。ここまでいいかな?」


「そ、そうだったのですか……。さすがシルフ様だ。」


強面の男は、そう言葉をこぼす。

やはりまだ把握しきれていないか。

この様子なら僕が指揮をとった方がいい。


「とりあえずそこの君、騎士団本部に救援要請。」


「は、はい。」


近くにいた男に命令すると、迅速に走って部屋から出ていった。僕としてはなんでまだしてないんだよと言ってあげたい。けどそんな時間もない。


「騎士団の兵力はどれくらいいる?祭りだったし、かなりいるはずだよね?」


「え、ええ……300名ほどです。」


「そっか……300……。それなら攻めるより本部の到着まで耐えた方がいい。その地図を見せてくれ。」


僕はそういって、地図の前に立つ。

そしてパッと見渡した後、中央広場に指を刺した。


「外側と内側は捨てて、中央広場の防衛に全力を注ぐことにする。今すぐ中央広場に逃げるように、放送棟で市民に呼びかけよう。ほらそこの君、行ってきて。」


「わ、私ですか?私は騎士団イーグル街本部、副団長。私がやるべきの仕事には思えません。その役目は他の人に……、」


「地位がそんな偉いの?そんなことに拘るより、騎士団なら人名救助に注力するべきだよね。分からない?」


「いや、しかし……、」


「うるさい、命令。それとも冒険者組織に喧嘩売りたい?」


「わ、分かりました……。」


不服そうにその騎士団の女性は、放送棟の方へと走っていった。説得する時間も惜しいのでかなりの強硬手段を使ってしまった。

あまり脅したりとかは、したくないんだけどな。


「あ、あの……中央広場の防御に専念するとのことですが、他の場所に避難している人たちはどうするのですか?」


僕の横に立っていた青年がそんなことを質問してくる。

まあこのツッコミが来るとは正直思っていた。


「残念だけど見捨てる。今いる兵力じゃ中央広場を守るのが限界だ。それにその方が多くの人を助けられる。」


「そ、それは、騎士団として好ましい判断とは思えません!あなたは冒険者組織だからそう思えるのではないでしょうか?」


「だから……何かな?」


「助けを求めているなら、できる限り助けに行くべきです。騎士団長、あなたはこのいきなりでてきた幼い少年の言いなりでいいんですか!」


青年がそう叫んだ瞬間、騎士団長の顔がギリっと鬼のような形相になった。


「貴様!シルフギルドのギルドマスター様になんて態度を!す、すいませんシルフ様、こいつの言うことは無視して構いません。後でしっかり叱っておきますので。」


「まあまあ、怒らなくてもいいよ。君の言い分も分かる!けどより多くの人を確実に守るためには、冷酷な判断は必要になるってことなんだ。それとも君一人で助けに行く?」


「そ、それは……。」


「それにうちの冒険者たちが、今戦ってくれている。ここは僕たちを冒険者を信頼して、防衛に務めてくれないか?」


「は、はい。」


青年はそう小さな声で返答すると、下を向いて押し黙った。こういう人こそ説得しないと、大変な行動をする可能性がある。不十分だとは思うが、納得させることはできたっぽい。


「じゃ、騎士団の人たち全員にこの指示を伝えてくれ。今すぐだ。分かった?」


「はっ、かしこまりました。」


「僕は中央広場をより強固にできるように、防御魔法を展開してくる。その椅子に座って戦わないとか言ったら、僕、怒るからね?こういうときこそリーダーが先頭で指揮しないとね。」


「…!?わ、わわわわ分かりました。」


強面の男は周りの人たちを引き連れて、僕から逃げるように部屋から出ていった。

そのまま急いで階段を降りる音がする。騎士団長の部屋からは人がいなくなり、もぬけの殻になった。


これで指示はOKかな。

さて……言った通り、防御魔法を展開させてくるか。

スケルトンとダークフェアリーの混合軍に対抗するには、騎士団だけでは心もとない。防御魔法を作ってアシストしてこよう。


わざわざ一回に降りるより、空を走った方がいいと判断し屋上に出る。

夜風が勢いよく吹き抜け、僕の髪を撫でた。


すごいいい眺めだ……。

多くの人が今にも死んでいるにも関わらず、そんなことを思った。もしまた花火大会があるなら、ここで皆と見たいな……。


放送棟から、さっきの女性の声が響いている。

中央広場には人が集まりすぎて、大変な人口密度になってることが離れたこの場所からでも分かった。一般市民の人たちには申し訳ないが、窮屈でも死ぬよりマシだと思って我慢して欲しい。


そう思いながら、柵から飛び出そうとしたとき……頭上から激しい魔力反応を感じた。


ふーん、やっぱり僕を狙ってたのか。


「水薙鳥!」


低い男性の声とともに、髪の長い男が空から僕に向けて急降下してきた。背中には真っ黒な羽が生えており、空を飛ぶ姿は乱れることなく美しい。そのまま剣を取り出して、僕に一撃入れようと振り下ろしてくる。


僕はその場からパッと離れて、その一撃を交わした。

剣は屋上の床に叩きつけられ、爆音とともに穴が空く。


「ふむ、外したか。か弱き気配だと思っていたが、アメジストの言っていた通り只者ではないらしいな。」


「へー僕の実力に気づいた人がいたんだ。ってあれ、囲まれちゃった。」


気づけば目の前の長髪の男以外に、2人ほど僕を囲むように立っていた。と言っても僕の死角を飛んできていたことくらい、気付いていた。

見た目からしてアンデット族か。


スピネルを話を思い出す感じ、魔王軍幹部の側近……だっけ?

僕をピンポイントで狙って、さらに三人も。


「面白そうじゃん。」


僕は笑顔をこぼしながら、そう呟いた。



読んで頂き感謝申し上げます。

評価、ブックマーク登録等して頂けると幸いです。

感想お待ちしてます。


申し訳ないのですが、明日は投稿を休みます。

ごめんなさい。

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