第三十二話 教会について①
祝賀会から数日がたち、僕らの生活も平穏な日々に戻りつつあった。
やっぱ特別なことが何もない平和な日常こそ至高だ。
魔王軍との戦闘とか意味わからん。二度と遭遇したくない。
そんなこと思いながら、ダラダラと朝ご飯を口にしている。
いつも一緒に食べているアズも、今日はまだぐっすり寝ている。いや『今日は』じゃなくても『今日も』と言うべきだった。あいつはいつも昼に起きて来る。
つい数日前まで一緒に食べていたカイヤも、今はクリスタの修行漬け。
僕が起きた頃には既に外を全力ダッシュだ。
かなりスパルタなようで、夜にぐったりしながら夕飯を食べているカイヤをこの頃は良く見る。
可哀そうだが、シルフギルドに入るためにはしょうがないのかもしれない。
逆に僕らが甘々だったのかも。
それにクリスタの修行とか、経験者の僕が言うが地獄だ。あれほど辛かったことはこの世界に来てから二度とない。しかし乗り越えれば強くなるのは、明らか。
カイヤ、頑張って。
一人パンを頬張り、コーヒーを口にする。ぼっちの朝食は久しぶりだ。
優雅で静かなモーニングコーヒー。何だかカッコイイ男性になれたような気がする。
ただ……静かだと言うのに、暑い。
コーヒーが熱いって意味じゃない。
夏の初めということもあり、日に日に気温が高くなっているのだ。
僕は暑いより寒いのを好む人間。
熱中症に気を付けなきゃいけないような夏は、好きじゃない。
だって暑いのはどうしようもなくても、寒いのは服を着こんだりすればどうにかなる。
暑いなら脱げばいいじゃんとか言われるけど、脱ぐのには限界がある。しかし着るのに限界はない。
つまりそういうこと。
それに夏は、陽キャ共がキャッキャウフフと海で遊びだすのだ。
なんて目障り。日本でもクソだと思ってたが、この異世界でも海でパーリーピーポーな文化は受け継がれている。こんな文化引き継がなくて良かった。
ただ冬は違う。
え?クリスマスがあるだろって?
No!
この世界にクリスマスなんて祭りは無い。非リア大歓喜。
そりゃ成り立ちからして、異世界にある訳がない文化。無くて当然である。
つまり夏より冬が良い。
よって暑いより寒いが良いQED。
結論、リア充は爆発しろ。
こんなことならいっそ今年はアズでも誘って、海にでも行ってやろうか。
元々ハーレムを作り、異世界転生者っぽいことをするのが人生の目標。将来ハーレムを作ればドヤ顔で海に突撃できる。
その予行練習をしておくのは何ら不思議じゃない。
あの一件のおかげで多くの金が入って仕事する必要もないし、これ以上良い機会はないのではないだろうか。
けどな~、何か暑くてやる気でないんだよね。
誘うの面倒だし、海ってシルフ街からめちゃくちゃ遠いし。
海と言っても魔物がいっぱいいるから、海水浴できる海は限られてる。そのため毎年来る人間の量が尋常じゃない。
人混み嫌い……やっぱ止めとこ。
「フォスさん、おはようございます。」
「……!?」
唐突に声がかかり、椅子から転げ落ちそうになる。
見ると、修道服の少女が目の前に立っていた。
両手にはトレーが握られており、朝ご飯が置かれている。
「す、すいません。驚かしてしまいましたか?」
「いや、ゴメン大丈夫。ダイヤ、おはよう。」
「おはようございます。その……朝ご飯ご一緒してもよろしいですか?」
「え?ああ、いいよ。」
僕がそう言うと、ダイヤは僕の隣に座ってきた。
白い髪がふわっと揺れ、ちょっといい匂いが鼻を通った。
香水だろうか?施設の調査に行ったときは付けてなかったような気がする。
「今日は、アズさんと一緒ではないんですか?」
「あー、アズは昨日酒を飲みすぎて、爆睡中かな。」
「なるほど。確かに昨日は、アズさんすごく飲んでいましたね。フォスさんが困り顔してるとこ、私見ましたよ。」
ダイヤはそう言って、少し笑っている。
金があるため、アズは依頼をこなすことも無く夜遅くまで酒を良く飲んでいる。僕も毎回一緒に飲んでいるのだが、アズに比べれば抑えている方だろう。
この通り、二日酔いなくバッチリ朝から起きている。
「フォスさんって、アズさんといつも一緒にいますよね。同じパーティーにしてもここまでは珍しいな、なんて思ってるんですけど。」
「そう?ま、確かに一緒にいることは多いね。けどいつもって訳じゃないよ。」
食事は一緒にとることが多いが、別に何かのルールがある訳ではない。
アズも一人で散歩してたりすることはあるし、外で遊んでることも多い。最近は僕も一人で修行しているカイヤを見に行って励ましたりと、一人の時間を満喫している。
「そうですか?その……アズさんって怒りやすいですし、そんなに一緒にいたら疲れないかとちょっと心配です。大丈夫ですか?ストレスとかありませんか?」
ダイヤはグイグイと距離を詰めるようにして、質問してくる。
顔が近くなり、豊満な胸がもう少し近づいたら当たりそうだ。
会った時からだが、やはりダイヤの僕との距離感は物理的におかしい気がする。いつも近い。
そんな近いとドキドキしちゃうじゃないか……。
それに考えてみればあの依頼が終わってからも、ダイヤは僕によく話しかけて来てくれる。
これ……思春期の僕だったら、速攻恋に落ちてるぞ。
転生して人生経験がある程度あるから、思いとどまれているのだ。しかしこのままだと危ないかもしれない。
心頭滅却すれば火もまた涼し。
ここは精神を落ち着かせよう。
「あのフォスさん、大丈夫ですか?そんな思い悩んだような顔して……もしかしてやはり大きな悩みがあるんですか!?」
「い、いや大丈夫。ちょっと悟りを開いててね。えっとアズのことだっけ。ストレスとかはないかな。昔はあったけどもう慣れたよ。それにこの頃は暴力を振るうことも無くなって来たし。」
褒めればパワハラ対策できることが分かってから、受ける暴力は激減した。
アズは何故か褒められると、弱いらしい。
ただ酒が入ると面倒くさいときはある。
「慣れたと言うのは、良いことなんでしょうか……。えっと、そのもし相談したいことなありましたら、是非遠慮せずに私に話してくださいね。フォスさんには色々と恩がありますし、力になれるならなりたいですから!」
ダイヤは軽く両手で握りこぶしを作ると、微笑みを浮かべた。
すごい、何だか見るだけで心が浄化された気分になった。
もしかして彼女は女神か何かなのかもしれない。
「ありがとう。」
僕はそう何とか言葉を返して、朝ご飯のパンを頬張った。何もつけてないパンでも何だか今だけは、美味しく感じられる。
一方、ダイヤはパンに丁寧にマーガリンを塗っていた。
とても丁寧で、変に厚くなってたり薄くなってたりするとこが一切ない。所作一つ一つにも、彼女の性格が出ているように感じる。
シスターだからこそ、こんなにも清らかな雰囲気を出せるのだろうか。もしそうならアズにもシスターになって欲しいものだ。
……ふと思ったのだが、シスターって何してるんだろう。
シルフ街に教会があるし、そこで仕事をしているのだろうか?冒険者は仕事の掛け持ちが許されている。もちろん申請して通らないとできなくはあるが……。
故にダイヤが教会で仕事をしていても、何ら不思議なことは無い。けどそっちの仕事があったら、何日もかかる依頼とかどうするんだろ。
つかダイヤが他の人と一緒にいるところを、ほとんど見ない。もしかしてパーティーを組んでいないのだろうか?
気になるしここはストレートに聞いてみるか。
「ダイヤってシスターなんだよね?」
「へ?あ、はい。この通りシスターですよ。」
ダイヤは頭に被っている布を触って、少し引っ張ってみせる。
「シスターやりながら冒険者の依頼とかどうしてるの?」
「そうですね、基本的には一日で終わるような依頼を受けるようにしてますよ。パーティは誰とも組んでませんので、迷惑はかかりませんし。だからあの施設調査は、けっこう特別だったんですよ。」
「そうだったのか。」
やはりパーティーは組んでいないのか。
一人で依頼をこなすことは無理ではないが、困難なことも多い。僕もソロを挫折して、アズのパーティーに入ったなんて言う経緯がある。
それでもソロを貫くとなれば、受けれる依頼も限られる。さらに一日で終わるなんて、本当にそんな依頼あるのかって感じだ。
「その条件だと、生活費を稼ぐだけでも難しそうに聞こえるよ。大丈夫なの、それ?」
「そうですね、正直潤っているとは言えません。それにお金のほとんどは孤児院に寄付してるんです。今回頂いた報酬も、孤児院の寄付に使わせて頂きました。」
「孤児院……?」
「はい。あれ、もしかしてフォスさんは、教会に行ったことはないのですか?」
「教会か……うん。行ったことないね。なんか宗教とか入信とか怖くてさ。そういうとこには近づかないようにしてるんだけど。」
ふと蘇る、日本の記憶。
唐突になるインターホン。出る3人の女性。
話を聞くとどうやら宗教の勧誘らしい。興味は無いとドアを閉めようとするも、足を挟まれる。
そのまま数時間の勧誘話地獄。
警察を呼ぶと脅したら、やっとどうにかなったがあれは辛かった。
その経験以来、宗教には絶対近づかないと決めている。
「なるほど、そうだったんですね。実はシルフ街の教会には孤児院がありまして、そこで身寄りのない子供たちを引き取っているんですよ。」
「そんなことしてたのか……。そんな慈悲に満ちた施設なんてこの世にあったんだね。」
「もちろんですよ。神は誰にだって平等ですから。フォスさんは宗教に悪い印象をお持ちのようですが、もっと良い側面も知って欲しいです。」
「う、うん。」
こう宗教の話を聞くと、聞くのをシャットダウンしてしまう自分がいる。もちろん宗教を否定する気はない。むしろ日本なんてお墓参りと言い、初詣と言い、宗教に溢れている。
ただ危ない宗教が日本には多くはなくともあったし、勧誘のトラウマも相まって、脳が受け付けないだけ。
「うーん、理解して頂けませんか。そうだっ、フォスさん。これから一緒に教会に行きませんか?行ってみれば色々と分かるものがあると思うんです。」
「え!?いや……信仰してる訳でもないのに、教会に行っていいのか?勧誘とかされない?この紙に名前を書かないと殺すぞみたいな……。」
「どんな教会ですか!?そんなことないですよ、誰にでもオープンですから。」
「そ、そう?うーん、まあ今日暇だし……分かった、行こうかな。けど身の危険を感じたら帰るからね。」
「そうですか!?良かった!大丈夫ですよ、何かあれば私が守りますから。」
ダイヤは自慢げに、僕に力こぶを見せてくる。
それは平で透き通った、細い腕だった。
どうせなので、触っておこ。
「筋肉ないね。」
「つかないようにしてるんですよ。」
「なるほど……?」
その後、ダイヤはよほど嬉しかったのか、鼻歌交じりで朝食を食べている。
しかし僕は一抹の不安を抱えながら、最後のパンを頬張った。
もしダイヤが宗教を強制的に勧誘してくる人間だったら、どうしよう。教会でなんだかんだ言いくるめられたりして……。
うーんもしそうだったら、ダイヤとは縁を絶とう。これから関係を築いていく上で、ダイヤの人間性を知るためにも教会に行ってみるしかない。
2人で朝食を食べた後、特に予定も無いのですぐに教会に向かうことにした。
教会はシルフ街の外れにある。
ギルドから徒歩15分くらいだろうか。
大きな街には基本的に教会が設立されているんだとか。
内容はどうであれどこの世界でも宗教と言うのは、人々の拠り所ということだろう。
大きな扉を押してダイヤと共に、教会の中に入る。
教会はとても広く、中央には女神かと思われる大きな像が立っていた。
その像を囲むようにして多くの蝋燭が立っており、横長の椅子が大量に並んでいる。
天井も高く、多くの色に色付けされたステンドグラス。陽光を受けて輝いており、中に入るだけで空気が洗練されるような気がしてくる。
「そちらはダイヤのお知り合いかね?」
入ると修道服を着た老婆が話しかけてきた。
手には杖を持っており、背中が曲がっている。
どうやらダイヤの知り合いらしい。
「こんにちはシスターメラ。こちら私と同じシルフギルドの冒険者、フォスさんです。」
ダイヤに言われ、僕はシスターメラと呼ばれる老婆に礼をする。
緊張からか、ちょっとぎこちなくなってしまった。
「ほお、あなたがフォスさんでしたか。ダイヤから話は聞いていますよ。なんでもシルフギルド随一の金等級冒険者だとか。」
「いえいえ、さすがにそこまででは……。」
「シルフギルドの金等級にまで登りつめた冒険者が、謙遜なされるとは……なるほど、たしかに素晴らしい冒険者のようですね。」
シスターメラはそう言って、僕に笑みを向ける。
いや謙遜しない奴の方がおかしいだろ。アズは絶対しないだろうけど。
シルフギルド随一とか……ダイヤはどんな風に僕を伝えているんだろう。
シルフギルドは冒険者の中の選ばれた人間しか入ることのできない、皆憧れのギルド。
さらに金等級となれば、よりすごい感じの人に見られても不自然ではないが……。
「おっと、申し遅れていましたな。私の名はメラナイト。皆私のことをシスターメラと呼んでおりますから、どうぞそう呼んで下さい。この教会の管理をやっているしがないシスターでございます。」
老婆は僕にお辞儀をして、握手を求めてくる。
「シスターメラはこの教会の中で一番偉いシスターなんですよ。」
「へ、へえ。よろしくお願いします、シスターメラ。」
僕は人見知りを発揮しながらも、シスターメラの手を取り握手をした。
呼んでくれと言うなら、言う他あるまい。
……と、シスターメラの後ろから3人の修道服を着た少女が、僕らに向けて走って来るのが見えた。
歳は中学生くらいにも見える。
「あ、ダイヤ!」
「ダイヤ、今日も超手伝ってくれるの?」
「あれ、この人がフォスって人……?」
シスターたちは素早く僕らを取り囲むと、口々に騒がしくしゃべり出す。
「こら、ちゃんと挨拶しなさい!」
メラは目つきを変えて、三人の頭にげんこつを食らわせた。
「うわ、痛った!?このくそばばあ!」
「超暴力だぞ、くそばばあ!」
「体罰だ……体罰だ……。」
三人のシスターは口々に言いながら、殴られた頭を痛そうに摩っている。
シスターとなるとダイヤの清楚な印象が強かったが、彼女たちのように元気溌剌なシスターもいるらしい。
「うちのシスターたちが、騒がしくて本当にすまないね。」
「いえいえ、元気なことは何よりですから。」
「普段だったら、ばばあと言われるとものすごく怒るんですよ。」
ダイヤはそう僕に耳打ちしてきた。
やっぱり近くない?
どうやらこの三人のシスターは、僕の前ではメラがそこまで怒らないことを分かった上でこのような言動をしているらしい。
なかなか狡猾だ。
僕がこの子くらいの年の時は、右手に邪龍がっ……とか言ってたぞ。
この世界ならそんな奴本当にいそうだから、人生何が起こるか分からない。
「ほら、シルフギルドの冒険者様が来てくださってるんだよ!自己紹介しなさい!」
シスターメラの檄で、シスターたちが渋々口を開く。
「うちブルー。あなたフォスでしょ。うち知ってるよ!ダイヤがめちゃイケメンって言ってた!けどそこまでじゃないね。ま、だけど、ダイヤとはお似合いね。同じ白色の髪やし。」
「え?お似合い?」
「私ムーン。フォスは超強くて、超頭が切れるって聞いたわ!あとダイヤが超付き合いたいって言ってたよ!」
「付き合いたい……?」
「私、ストーン……。ダイヤがフォスのこと、犯したいって言ってた……。そのまま結婚したいって……。」
「おか、おか……犯す!?」
「な、なななな何あなたたち言ってるの!そんな言葉使ったらいけませんっ!」
ダイヤは顔を真っ赤にして、三人を捕まえようと手を伸ばした。
だが三人はダイヤの手をひらりとかわす。
「ダイヤめちゃ顔真っ赤だ!」
「うわー、ダイヤ超図星だ!」
「ダイヤにも体罰される……、逃げよ!」
口々に言いながら、教会の奥へと走っていく。
元気な子たちだ。あの若さこそが中学生か……。
「フォスさん!い、今のは全部あの子たちが言った嘘ですからね!気にしないでください!いえ、むしろ聞かなかったことにしてください。今から記憶を消し去りますから!」
ダイヤはそう言って、僕の肩を両手で掴んで激しく揺らしてくる。
目がくるくるになっていて、耳まで真っ赤だ。かなり動揺している。
こんなダイヤは見たことが無い。
「大丈夫、大丈夫、分かってるから!」
ダイヤを何とかなだめる。
中学生くらいのお年頃なら、男女が一緒にいるだけでカップルだと考えて、ちょっかい出したくなるものだ。
想像以上の文言が飛んで来ていたが気にしない、気にしない。
しばらくすると落ち着いたようで、ダイヤがはぁはぁと息を切らしている。
「本当に気にしないで下さいね。」
「うん。」
「本当ですよ?」
「う、うん。」
「良かったです。ふぅ~、そ、それでは私が教会を案内しますから!」
ダイヤは唐突に、僕の腕を取ってくる。
そのまま腕に密着させるように体を寄せて来た。
いや、もう距離が近いとかじゃない。密着だ。
さきほどの言動で、頭がおかしくなったのだろうか……。
胸の圧力が……まずい、心臓の音が聞こえるくらいドキドキしてきた。
平常心……平常心……。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。
「ほほ、どうやら年寄りは邪魔になりそうですな。私は先ほどのシスターたちと奥の孤児院の方にいますので、何かあったら声をかけてくださいな。ばばあと言ってくれたガキどもに、説教しなければなりませんので。」
メラはそう言って僕に再度礼をすると、指をポキポキ音を立てながら三人が走っていった方へ歩いていった。
なかなかパワフルなお方らしい。
結局……まるで恋人のように、ダイヤと歩きながら教会を歩くことになった。
何でこうなっているのか僕にはさっぱりだが、拒否する理由はない。神様の前でこんなことしてていいのだろうか。
教会には多くの種族の人々が来ており、奴隷と見られる子供たちもちらほら見える。
また貴族と思われる者や竜人族、獣人なども見られ、本当に誰にでもオープンなようだ。
懺悔室と呼ばれる罪を薄情する場所や、神託を聞く場所、図書館など色々な場所が教会の中に併設されているよう。実は図書館があることだけは知ってたけど……。
壁には色んな絵が飾られており、ダイヤはそれを一つ一つ説明してくれる。
ダイヤとの距離にドギマギしていた僕も、教会について多くのことを教えてもらう内に気にならなくなった。
それほどダイヤの説明は面白く、教えてくれる情報は興味をそそられるものが多い。
数時間教会を散策した後……僕らは話に出ていた孤児院に足を運んだ。
孤児院は予想以上に古ぼけており、中にある机や椅子は全てボロボロ。
子供たちの来ている服も、全員ボロボロで浅い麻の服を着ている。
明らかに、予算が足りて無くないかこれ……。
ダイヤが寄付している理由も、何となく分かった気がする。
それでも子供たちは気にすることなく、楽しそうに走り回ったり絵を描いたりしている。
シスターメラは子供たちの世話にせっせと働いているようだ。三人のシスターも、頭に大きなたんこぶをしながらも楽しそうに働いている。
そんな様子を見ているといつの間にか、孤児院の子供たちが僕らに寄って来た。
「ダイヤだー、こっちの人誰?」
小学生一年生くらいの少女がそう言って、ダイヤを見上げている。
「私と同じシルフギルドの冒険者の方ですよ。」
「フォスです。よろしくね。」
僕は身を屈めて、少女と目線を合わせることにした。
子供と接するときは先ず、同じ高さになること……らしい。どっかで聞いた。
正直子供と会話するのも苦手ではあるが、ここで恥ずかしがってもしょうがない。
「うおー、シルフギルドの金等級だ!」
「すっごい金等級見せてー!」
「剣かっけええ!」
孤児院の子供たちは、一瞬のうちに僕を取り囲むように集まってきた。
子供たちは眩しい笑顔を見せてくる。憧れのような眼差し。
「あっちで一緒に遊ぼうよー!」
「シルフギルドの冒険者ってすっごく強いんでしょ!」
「魔法見せて!魔法!」
いつの間にか、ヒーローのような扱いである。
なろう主人公はもしかしてこんな気持ちだったのだろうか……。
うん、悪くない。
「ふふ、フォスさん大人気ですね。」
ダイヤは嬉しそうに笑顔を見せる。
僕は正直どうしていいか分かんない感じだ。
なりたいとは言え、ヒーローになんかなったことないし……。
結局僕らはそのまま一日、孤児院で子供たちと遊ぶこととなった。
子供って元気だね。
読んで頂き感謝申し上げます。
評価、感想頂けると非常に嬉しいです。
反応があると、泣いて喜びます。




