第二十五話 戦闘について④
シルフギルド内、食堂。
10人以上のグリフォンギルド冒険者が、弓や魔法を打ち、武器を持っては走り回る。
逃げ回る一般人、反抗するウルツ、飛び回るアズ。壁には穴が空いており、床には料理や皿、グラスが無造作に散らばっていた。そこは既に、混沌の戦場と化していたのである。
シルフギルドは入団が厳しく所属人数が少ない上に、昼は仕事をしている人がほとんどなので、食堂に残っていたシルフギルド冒険者はほとんどいなかった。
さらにその少ない人たちでさえ、ウルツとアズ以外どこかに走っていってしまった。逃げた方向からしてギルドマスターに報告しに行ったのだろうか……?
寮や他の場所にはもうちょっとシルフギルドの冒険者は残っているはずではあるのだが、冒険者にとって戦闘騒動は茶飯事。ちょっとした物音が聞こえても、またか…と思うだけで見に来たりはしないだろう。
アズは、カイヤをお姫様抱っこしたまま駆け回りながら、冷静に状況を伺う。
グリフォンギルドの冒険者が10人以上いるのは分かっていたが、落ち着いて数えると20人。金等級が5人、銀等級が5人、銅等級が10人と言う内訳だ。
3分の1程度はウルツの方の対処に回っているようだが、他は全員相変わらず私を追ってくる。
人数が多いとは言え、私やウルツは世界4大ギルドの金等級。冒険者としての格が大きく違う以上、彼らは勝ち目が薄いことくらい分からないのだろうか?
私は駆け寄ってきたグリフォンギルドの冒険者との戦闘を避けて走り回りながら、ひたすら逃げ続け思考をさらに巡らせる。
しっかし……、何故彼らグリフォンギルドの連中は、そんな力の差を知った上で、それでもカイヤが欲しいのだろうか?
ギルドマスターの命令?いやいや、ただのそんな命令だったら、こんな戦闘するわけない。それともただのバカ?その可能性を否定はできないが、確率は低いはず。
私はただ何となくこうやってカイヤを渡さないように行動している訳だが、彼らの行動の理由がよく分からない。ここまで彼らを動かすの動機は何?
本当にこの頃はよく分からない不思議なことばっかり起こる。キンググレートボア如きに殺されそうになったり、魔力の爆弾みたいな獣人にあったり、フォスと話しているだけで胸がドキドキしてきたり……、本当に理解できないことばっかり。
机の上を飛び回っていると、着地地点に二人のグリフォンギルドの冒険者が現れた。どうやら私の行動を読んで、先回りされていたらしい。
こういうゴミみたいな奴らに触れたくないと言うのが本音だが、しょうがなくジャンプしながら彼らを蹴り飛ばして道を無理やり開けた。
風属性の魔力を流し込んでいるため、蹴られた冒険者は弧を描いで蹴り飛ばされていく。
ただ蹴りで体制を崩してしまった分、着地した後怯みが生じてしまった。その隙を逃さないように、グリフォンギルドの金等級冒険者の一人の男が接近して剣を振り抜いてくる。
私は素早く机から飛び降りてその攻撃をかわすが、金等級冒険者は避けられてもめげずに切り込んできていた。
金等級と言うこともあり、やはり他の冒険者に比べ動きが良い。ただそれでも私の相手ではない。隙を見つけて、蹴り倒す……そう思っていると、横からもう1人の金等級冒険者が切り込んできた。
その攻撃もひらりとかわして距離をとるが、気付くと角に追い込まれてしまった。
我ながら不覚である。これが彼らの目的だったのか?それともたまたま?どうであれ、この場面がフォス何かに見られたら、赤面して次の日は起きれないかもしれない。
もちろん一般ギルドの金等級二人など、本来であれば相手にならない。だが今は両手が塞がれていて、得意な弓が使えないのだ。魔弾を生成するのも難しく、フォスみたいに足を起点に魔法陣を展開する技術も私にはなかった。
こればっかりは天賦の才と言うか、適正と言うか、床から魔法を使うのは風属性は性質上、あまり得意ではない。
カイヤを置いて両手を用いて戦うことも可能だが、グリフォンギルドの冒険者たちの狙いはあくまでもカイヤ。何らかのアクシデントが起こって動きを制限する魔法などをかけられ、カイヤを奪われるリスクを考えるとその行動はとれない。
「そこまでカイヤを欲する理由は何?わざわざそこまでするとか、まじできもいわよ。」
私は転じて、横の壁に向かって走ろうとする。ここで私が取れる手段は、壁を走って逃げるのみ。床を垂直に走ると言うのは、非常に高度な技術で魔力の扱いが非常に大事。ただ私ならできるはず。
だがそのとき目に、光が写った。グリフォンギルド冒険者二人の後ろから見える青色の光。それが見た瞬間、突如私は走るのを中断して地面に伏せた。あれはくらってはいけない……そんな気がする。
それから1秒も経たない内に、彼らの背後から魔弾が飛んできた。まるで水滴のように見えるその魔弾は、私でさえ目で追うのがやっとな速度。
囲んでいた冒険者たちは、避ける暇なくその魔弾に撃ち抜かれた。的確な心臓への一発。そのまま胸を貫通し、私がさっきまでいた場所にまで到達すると壁にぶつかり、だらりとつたうようにして垂れた。もししゃがまなかったら、私も彼らと同様に撃ち抜かれていただろう。
「な、んだとっ!?……、」
「ばか、な……」
グリフォンギルドの金等級冒険者2人は、何があったかも分からない様子でその場に倒れ絶命した。貫かれた胸から、蛇口を捻って出てくる水のように大量の血を吹き出し水溜まりを作っている……。
明らかなる、瞬殺。
殺すときの理想かも。
そんなことを思っていると、私を上から見下ろす影が見えた。白いベレー帽。肩辺りまで伸びた水色の髪がふわりと浮いている少女。彼女からする薄いミントのような香りが私の鼻を刺激した。
「あんなのに囲まれちゃうとか…アズ、もしかして腕がなまったのかい?それなら引退をオススメするけど。」
「はぁ?メノウ何かに言われたくないんだけど。あんた私ごと魔弾で撃ち殺すつもりだったでしょ!」
「えぇー、なんのことかさっぱり。」
メノウと呼ばれる少女はそう言って、目が一本の線になるような表情をした。
シルフギルド所属金等級冒険者、メノウ。
彼女は私から1,2年先輩にあたるのだが、歳は同じ。それでいて最年少で金等級まで上り詰めたと言う実績を持つ、まあそこそこすごい奴だ。それは私も認めている。だが私は彼女のことが嫌いだ。
理由を挙げるとキリがないが、ギルドマスターに憧れすぎて一人称を僕にしていることとか、新しく入って来た冒険者には必ず話しかけて先輩アピールするとことか、実力の伴わない人たちとパーティーを組んでいたりすることとか、もう全部キモい。
「はぁ……それでなんで、あんたが私を助けるような真似なんかしたのよ。」
「僕だって助けたくなんかなかったさ、けどギルドマスターが助けろって言ったからね、しょうがなくだよ。どんな憎しみよりも、僕の行動原理はいつだってギルドマスターへの愛だからさ。」
「は?ギルドマスター……?」
何故ギルドマスターが私を助けるように言ったのだろうか?彼はもしかしてこの騒動について何か知っている?私が食堂で戦闘を始めるのは稀なことではないし、理由なしにギルドマスターが介入しようとするとは思えないんだけど……。
「もう…そんなことより、アズは僕にお礼の一言もないのかい?君を狙って魔法を打ちはしたけど、結果的に助けたんだからさぁ。」
「やっぱり、私のこと狙ってたんじゃない!何?お礼が聞きたいの?はいはい、ありがとうございました。」
その言葉を聞いたメノウは驚いた様子で、アズの顔をじっと見つめる。
「え、今僕の聞き間違いじゃなかったらアズが僕にありがとうって言ってたんだけど。」
「何よ?ありがとうって言ったわよ。」
「うわ!?また言った!え…、君本当にアズ?アズは『お礼なんか言う訳ないでしょ!』って言って突っぱねるはずなんだけど。」
「何よ、その偏見。私だってお礼の言葉ぐらい言えるわよ。」
「ええ!?気持ち悪っ!ふぇ…、アズってお礼の言葉も言えない屑人間じゃないの?」
「あんた何言ってんの?殴られたい?」
「あぁ……、うーん、そうか。フォスがアズを変えたってことなんだね。」
「は?なんでいきなりフォスの名前が出てくるのよ!」
「いや~、気にしないで。よーし、じゃあ気を取り直して、こいつら全員倒しちゃいますか~。」
メノウはそう言って振り返ると、肩をグルグルと回していた。本当にこいつの発言は全くもって良く分からない。やっぱりメノウはキモい。
気付くと私とウルツ以外に、メノウに加えて二人のシルフギルドの冒険者がこの戦に加わっていた。これで5対20。察するにギルドマスターの命令に従った他の冒険者たちだろう。
ウルツも援軍が来て気合いが入ったのか、かなり頑張ってくれている様子であった。近づいてくるグリフォンのギルドの冒険者たちを次々に剣でぶっ飛ばしていく…
「ウルツスラッシュ!ウルツナックル!」
そう叫びながら。
ウルツの声は大きく、本当にうるさい。それに彼のあの言葉が威力を高めるための呪文なのか、ただかっこつけたいと思っての発言なのか、見分けがつかない。まあ正直彼が前者か後者かなど、お椀に入ってる米粒の数は何個かと同じくらいどうでもいいのだが。
ぼーっと見ていると、ウルツの前にグリフォンギルドギルドの金等級冒険者が立ちはだかったのが見えた。
倒すという意気込みで振り下ろされた剣を、ウルツはするりとかわす。
「くそっ、避けられたか!」
「おっとっと、避けられないとでも思ったのかい心外だな。俺はシルフギルドの風雲児と名高いウルツ様だぜ!」
ウルツは反撃しようと剣を振るおうとするが、後ろから気配を感じて瞬時に振り返る。そこにはもう一人のグリフォンギルドの金等級冒険者の姿があった。
「くっ……」
「ふはは、奇襲するには殺気が盛れすぎだよ、嬢ちゃん。」
「なんの!」
金等級冒険者は怯まず剣を振り下ろすが、ウルツが受け止めつばぜり合いの体制になる。そしてそのまま押し込んで、足さばきを誘導するとウルツとその冒険者の位置を逆にした。
あのままつばぜり合いをしていれば、もう一人のグリフォンギルド冒険者に背後をとられていた。しかし彼の機転で位置が逆転し、背後をとられないようになっている。地味な動きではあるが、金等級冒険者としての強さが垣間見える瞬間であった。
「挟み撃ちをしようだなんて、いい心意気だ。けど俺にはその程度じゃ届かねぇぜ!シルフギルドがどういうギルドなのかしっかり教えてやる!」
ウルツはそう言って剣を弾きつばぜり合いの状況を解除すると、剣に魔力を込める。
風属性の魔力が流し込まれ、剣は白色に輝きを放ち始めた。
「風雲児と恐れられたウルツ様の一撃、目を見かっ開いて見ておけよ!ウルツスペシャール!」
ウルツがそう叫んで剣を横薙ぎした瞬間、力強い突風が生まれた。周りの机や椅子ごと二人の冒険者を含め周りにいたグリフォンギルドの冒険者を巻き込んで吹き飛ばす。
金等級冒険者の二人は気絶まではいかなかったようだが、壁に体を叩きつけ苦悶の表情を浮かべていた。
「ウルツスペシャルを思い知ったか!ワッハッハー。」
ウルツは非常に自慢げな様子である。
確かにあの技の威力は中々だが、技名に名前を入れるのはどうなのだろうか?メノウはキモイと言ったが、ウルツも大概キモイ。
新たに加わった二人も活躍しくれているようで、戦闘は明らかにシルフギルド側が優勢になっていた。ポテンシャル的にはウルツ一人でもこうなるのが当たり前なのだが、増えたとなれば尚更だろう。
メノウがグリフォンギルドに対抗して、魔弾を放ってくれているおかげで飛び道具の被害も抑えられている。グリフォンギルドの戦闘可能な人数はみるみる減っていった。
さすがに指示を出していたリーダーと思われる金等級の冒険者も、戦況を変えるべく私からカイヤを奪おうと突進してきた。剣を抜き私を斬ろうするが、彼と私の間にメノウが瞬時に入り、懐から出した剣でその攻撃を防いだ。
「さすがにそんな単調な攻撃、僕が防がないわけないでしょ。」
「ちっ、何故貴様らはこうして私たちの偉大な研究を邪魔するのだ!貴様らのせいで、これから戦争で何千人という人が命を落とすことになるんだぞ!」
リーダーと思われる男はそういいながら、鬼のような形相で剣を何度も振るう。だがその全ての攻撃を、メノウは簡単に弾いてみせた。
「そんな怖い顔しないでよ~。君が何をしたいのかは分からないけど、ギルドマスターがこの少女を渡すなって言ったんだ。だから渡せない。」
「ギルドマスターだとぉ!そんなこと知ったことではない!何故貴様らは、自分たちの行いが大悪行であることに気付かないのだ!大人しく渡せば、なんの問題もないというのに!」
「代悪行?明らかに他のギルドで暴れまくってる君たちの方が悪行しているだろ!」
メノウは剣に水属性の魔力を込めると、彼の剣を力強く弾いた。彼の剣は手元から離れ、宙を待って後方の床に刺さる。
「ぐっ……、」
「君たちに勝ち目なんて最初から無かったんだよ。知のある人間ならば、力で訴える前に言葉で交渉をする。それを冷静に選べなかった君の敗北だ。」
「ぐぎぃ……。回収できないよりは、いっそ殺して死体を持ち帰った方がまだいいか……。お前ら!あれを使え!銅等級のお前だけは、成功体の回収役としてこっから一旦逃げろ!」
冒険者の男は大声で叫んで指示を飛ばすと、後ろにステップを踏みメノウから距離をとる。そして懐から、鉛色の液体の入った注射を取り出した。
距離が離れていた私でさえその注射を見た瞬間、ゾッとするような寒気が走った。あれは明らかにヤバい何かだ!そう本能が訴えているような気がする。
「メノウ!あれを使わせないで!」
私は咄嗟にそう叫んでいた。メノウはハッとした様子で、男に近づき注射を奪おうとする。
メノウもあの注射が何かとてつもない気配を放っていたことを分かっていたはずだ。だが、驚きからか反応が遅れてしまったらしい。彼女が奪い取った頃には、その注射の中身は空となっていた。
「実験のためなら、この命惜しくはないわ!ふ、ははっ、はははははは、ははははははははははははははははははははははははははははははは%$%'&%&'%$&#&$%&'%$%$%&#&%$$'$!"$"#%"$&#&#$$#"」
男の声が途中から、ノイズのような頭の痛くなる音へと変わった。それとともに発生する禍々しくてとてつもない量の魔力が、男の体から噴き出し真っ黒い煙と共に渦を作り始める。とんでもなく恐ろしく、膝が震えるほどの恐怖を感じる圧倒的な気配。それはまるで、あの時感じたカイヤと全く一緒と言っても過言ではなかった。
「遅かったか……アズ!距離をとるよ!」
メノウの言葉で、私と彼女はその男から距離をとるように離れる。10メートルほどの距離をあけ男の様子をうかがった。あの気配は尋常ではない。ウルツも追撃を止めて距離を置く判断をするほどに、彼を警戒しているということだろう。
気付くと、男の姿はいつの間にか漆黒の甲冑姿になっていた。あふれ出した大量の魔力が、あの鎧に形を変えたらしい。あれほど禍々しい鎧、はたして私たちで壊すことができるのだろうか?
だが、それだけでは終わらなったのだ。この男と全く同じ気配を、もう二つ遠方から感じたのである。見るとウルツの前方と、途中参加してくれた二人の冒険者の前方に一人ずつ、黒い甲冑が姿を現していたのである。
「おいおいなんじゃこりゃぁ!注射刺しただけで、冒険者が化け物になっちまったぞ!」
ウルツの驚いた声が食堂内に響き渡る。どうやら他のグリフォンギルドの冒険者たちもまた、注射を刺してあの姿になったらしい。残っていたグリフォンギルドの冒険者はすでに四人だったようだが、その内三人があの禍々しい注射を打ったことになる。打たなかった一人は、ギルドの外へと走って逃げて行った様子が視界に写った。
前方に立つ冒険者の男は、すでに人間ではなかった。言ってしまえばウルツの発言通り化け物。
ダムかと思うほどの、底知れぬ溢れ出ている大量の魔力。その存在が唐突に、三体もこの場に現れたのだ。
「&%&%''&'&$%#%$%$'$'&$%$%$&$#########!!!!!」
前方の男はけたたましく何かをしゃべったかのように聞こえた。
聞いているだけで頭痛がしてきそうな、頭が理解するのを拒否する言語。それとともに現れたのは大量の魔方陣だった。見るからに複雑で、魔力が多すぎてバチバチと音が鳴っている。
魔方陣は回り出し、中心から漆黒の槍先が姿を現した。
「避けて!」
メノウの声が耳に響く。
ただ私の体は彼女の言葉を聞く前に、反射的に避ける体制をとっていた。あんな禍々しくて強力な魔方陣、どれほどヤバイかぐらい見なくても何となく分かる。
その一秒後だっただろうか。メノウと私が横に避けた瞬間、何本もの槍が甲冑男の魔方陣から発射された。槍は体の横を通り抜け、食堂の壁にハチの巣状の穴を開ける。
それでも収まらず、壁の向こうまで飛んで行ったことを容易に予想できるほど、圧巻の威力とスピード。
あのまま立ってたら、間違いなく抱えていたカイヤごと串刺し…と言ったところか。
食堂の壁から外に飛んでいったと言うことは、シルフ街の繁華街まで飛んで行った可能性もある。被害者が出ていないか心配だが、そちらに思考リソースを分けられるほど容易な相手ではない。
ただの金等級冒険者に過ぎなかった男が、一瞬で恐ろしいと思えるほどの強敵へと変わってしまったのだ。何だったんだ、あの注射は……。こんな恐ろしい道具があっていい物とは思えないのだが。
今すぐにでもカイヤを置いて弓を持ちたくなる。メノウ一人であれに対応できるのか?それに他二体の甲冑はどうする?このレベルの敵が三人いるのだとしたら、今いる私を含めた五人で対応しきれるとは思えない。明らかに戦力不足だ。せめて私が戦線に参加出来れば良かったのだが……。
前回述べた理由に加え、ここまで広い範囲攻撃をされてはカイヤを安全に置くスペースを作ること自体、難しくなってくる。集中攻撃されては絶対に守り切れないことを考えると、彼女を持って逃げるのが最善の策なのだろう。ただ食堂を出て外に逃げるのも、公共への被害を考えると愚策。誰か救援が来るまで耐え忍ぶしかないらしい。
「ねえアズ。僕、君を残して逃げたくなってきたんだけどどう思う?」
メノウは震えた声で、私にそう問いかけてきた。
「そんなことしたら、ギルドマスターに怒られるんじゃない?」
私は満面の笑みでそう返答してあげた。
「うわ、嫌な笑顔~。はぁ~まあできるだけやってみますか。アズは勝手に死なないでよ。さっきみたいに守ってあげることはできないかもしれないんだからさ。」
「当たり前でしょ、私が死ぬわけないわ。けど援軍が欲しいってのが本音ね。誰かが呼びに行くべきじゃない?ギルドマスターとか呼びましょうよ。強いのか知らないけど。」
ギルドマスターが戦闘をしているところを見たことがないため、彼が強いのか分からない。ただ現状今シルフギルドにいる戦力は、彼しかいない。あとは寮で寝てるやつを叩き起こすか、仕事を終わらせて帰ってきた冒険者を待つか……。
「うーん、頼りたくはあるけど、そんな呼んで来る隙がないと思うのは僕だけ?」
「奇遇ね私も同じこと思ってたわよ。」
私とメノウはそう言って、苦笑いするしかなかった。
ここまで読んで頂き感謝申し上げます。
視点が毎回めちゃくちゃ変わるのでご注意ください。
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