第二十二話:リーダーシップの復活
ヤン=メイフィールドはそのリーダーシップと共に、不動なる精神力とそれに見合うだけの剣の腕が与えられた、生まれながらの指導者であるとの評判であり、『アンシアン』のメンバーにはその力に惚れこんだ者も多い。そして特筆すべきことは、力でカリスマ性を示す者にありがちな頭脳戦でのレベルダウンはヤンについては感じらない。なかなかに頭も冴えるということだ。
『アンシアン』メンバーが今まで見てきたのはそんなリーダーシップに秀でたヤン=メイフィールドだった。
ルート八の指令は意外だったが、ヤンが判断したのならそれほどまで厳しい戦局だったのだろうと納得していたメンバーも、その後アジトに辿り付いたあとのヤンの姿は想像外だった。今までになくひどい顔色で、なにかを訊ねても耳に届いていないかそっけなく返される。今後どうするか、の話を振ったあるメンバーは灰青の瞳で射抜き殺されるほどに睨まれ、それきりヤンの傍に近寄らなくなったほどだった。
そんなリーダーの様子と、それから彼にいつもぴたりと行動を共にしていたローレンシアの姿が見えず、ヤンがそれに触れもしないことで――彼らには何が起こったのかうすうすと察することが出来、さすがにヤンにローレンシアの話を切り出す者はいなかった。
ヤンは部屋に篭って誰とも会おうとも話そうとも、物を口にしようともしなかったが、きっかり三日後、ふいに部屋から出てきたかと思うとつかつかと浴室に消え、頭から水を被った状態でメンバーのいる部屋に戻ってきた。相変わらず顔色は良くなかったが、瞳の険しい光は随分と弱まっている。
「その後の状況はどうなっている」
さすがに機嫌良くとは言わないまでも、仕事を思い出したリーダーの指示に皆が一様にほっとして、エストレージャ城の現在の様子を報告する。一通り聞いていたヤンがしばし黙り込んでから短く指示を出した。
「各地でのメンバーの安否を」
「ラジャ」
聞いた男たちの中の数人がその足で踵を返す。ヤンはそのままマントを掴むと出て行こうとするのを――ひとりが止めた。
「ヤン、どこへ行く」
「構うな」
「あんたは俺たちのリーダーだ。あんたに今いなくなられちゃ困る」
男の言い分はもっともで、その口調は責めるわけではなくヤンの思いを理解したものだった。それが本人にも痛いほど伝わったので、ヤンは諦めて部屋に戻る扉へと向かった。
「……テリーとリンティアの情報が入ったら起こせ」
「ラジャー、ボス」
その中にローレンシアの名前がないことに男たちは気づいていたが、言及は出来なかった。