13.光の頂
「どういうことなんだ!」
俺は王宮に怒鳴りこんだ。
「おや、どうしましたか?」
王様はとぼけた態度で座っていた。
「そちらの兵士が魔物と俺の村を襲った。協定違反じゃないか」
「なんのことですかな?」
王ははぐらかしていた。何度聞いてもその繰り返しで、段々苛立ってきた頃に気付いたことがあった。
王の後ろに控えている兵士たち、それら全員が光の精霊を宿している。精霊の姿は見えないものの、間違いない。
「気付いたか? 泰地。」
王の口調が変わった。このしゃべり方には聞き覚えがあった。
「お前、……雄二か?」
あり得ないはずのことを訊いていた。王がニヤリと笑ったのは肯定のサインだ。
「なんで生きてる、いやそもそも生きてるのか?」
「生きてるよ。肉体を捨てただけさ。俺は今『光の頂』にいる」
「なんだそれは」
「この世の全てに光を与えるもの。それが光の頂だよ。光の精霊が強い魔力を持ってたろ? あれは光の頂から与えられたものなんだ。光の精霊は光の頂の端末なんだよ」
俺は身構えた。
「端末……。魔力を与えるだけじゃなさそうだな」
「ご名答。話が早くて助かるよ。褒美に見せてやろう」
兵士が一斉に動き出した。数十人の兵士の側にその数だけ光の精霊が現れ、魔力の塊が俺に向けて放たれる。
王宮が壊れようと構わないからわざわざ防御する必要はないが、いかんせん数が多い。単調な攻撃も、これだけあると避けきるのは不可能だった。
しかしこれで納得がいった。この兵士たちの機械的で単調な行動は、操られていたからだ。光の精霊を通じて、光の頂に、すなわち雄二に支配されているのだ。
「なんでこんなことをするんだ!」
肉体を捨てて、人間を支配して、何を求めているのか。
「力だよ。魔力も、権力も、全ての力を手に入れたのさ」
「ふっざけるなよぉ!」
俺は光弾を食らいながら兵士の列に突っ込んだ。俺個人の感情だけじゃない、雄二は最早、光と闇全員にとって平和を脅かす存在になっていた。
兵士の列を乱したら、後は楽だった。回避も容易く、同士討ちを誘うことで兵士の数は削られていった。
「流石にこれじゃ歯が立たないか。だけどこんなに時間をかけていて大丈夫か? 俺が支配している兵士がこれだけだと思ったのか?」
すっかり忘れていた。こいつがどこまでも姑息な奴だということを。
「お前、今度こそ殺してやる」
捨て台詞だけ残して、俺は村へ急いだ。