10.闇の根源(3)
追っ手がここまでやって来た。
来たのは聖光騎士団ではあったものの、雄二の姿はなかった。光の精霊を連れている雄二は、闇の濃いこの場所に来るのは難しかったそうだ。
「もう逃げられないぞ、泰地」
聖光騎士団の団員、天ヶ瀬が前に出た。
この時の俺は、大分ややこしい感情だった。とても優しい気持ちのはずなのに、戦わずにはいられない。
「逃げる気なんてないさ」
俺はそう言うと闇を纏った。雑に放った魔力だけでも、騎士団は後ずさりしていた。
今の俺に小細工は必要ない。闇の根源の力を加えた俺の拳は、剣も、鎧も、光も構わず突き破った。まずは天ヶ瀬が倒れた。
闇を固めた槍を飛ばすと、残りの追っ手も一掃された。
跳び上がると、王宮の床も天井も突き破って俺は外に出た。
光に晒されてわかったが、この時の闇の根源の力はまだ俺の体に馴染んでおらず、この都の中にいられる時間はそう長くなかった。しかし、短時間とはいえ時間はある。雄二にとどめを刺すくらいの時間は有りそうだった。
幸い、雄二は向こうから来てくれたから、探す手間はかからなかった。
俺の力は雄二を圧倒していた。雄二が張った光の魔力による防壁も、俺の力を完全には遮断することはできず、雄二本体を少しづつ蝕んでいった。
「今日で終わりにする」
そう宣言して、俺は距離をとった。勢いをつけて雄二にとどめを刺すためだった。
騎士団員や他の兵士も追いついてが関係ない。雄二は俺の拳に貫かれて死ぬ。
兵士が俺と雄二の間に割って入っていた。もちろん兵士は俺を止めておくほどの力はない。兵士は腹を貫かれた。
「随分な忠誠心だ」
感心しながらも、俺の意識はまだ雄二に向いていた。俺は再び雄二に突進した。
するとまた、兵士が、その次は、騎士団員が、雄二をかばった。
雄二はじりじりと後退していて、俺の拳は届かない。
兵士と騎士団員計50人を倒したところで時間切れになった。
闇の根源の力が安定しなくなった。戦果は十分として、この日は撤収した。