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11.決着

 俺と黒狼は口論していた。議題は光の都に侵攻するかどうかについてだ。

「どういうことだよ!?」

 俺は黒狼の言い分に納得できなかった。

(言った通りだ。光の都に侵攻はせず、お前の力は抑止力として使え)


 納得できるはずがなかった。俺の中には闇の根源の力がある。だから俺は闇を抱いて死んでいったものの苦しみがある。そして今まさに光に虐げられている者たちの苦しみが伝わってきているのだ。

 だから光に対して抵抗したいと思っている者たちを探すのが容易になり、勢力拡大も進んでいる。

 しかも俺が闇の根源の力を手に入れたことで、光と闇のパワーバランスは闇の側に大きく傾いている。


 攻め込むとしたら今しかない。

(均衡の問題だ。闇に傾きすぎれば、光の側がより強く反発する。完全に滅ぼすことは出来はしない)

「だから今しかないんだ。光の側に新しい力が生まれる前に、徹底的に叩き潰さないと」


「私は、光の人たちを憎んでないよ」

 隣にいたラウラが、珍しく口を出してきた。 

「奴らから逃げ回る生活が続いてもいいのかよ!?」

 思わず語気が強くなった。一瞬ラウラはたじろいだが、意見は変えなかった。

「だからだよ。戦いを終わらせよう。光の人たちは敵かもしれないけど、でも全員殺しちゃうなんてだめだよ」

 ラウラは優しい人なのだ。こんな闇と迫害の世界で、戦う以外の選択肢を持つことができる。だから俺は、この人を守りたいと思ったのだった。

「……わかったよ。戦いは控える」

 我ながらちょろい。ラウラに言われると、あまり逆らえないのだった。

「ありがとう。タイチの力は、皆を守るために使って」


 俺は頷いたが、でもと言葉を続けた。

「ならせめて、あっち側の言質もとっておこう」


 闇の勢力と、ルクセントの会談が開かれた。

 ルクセントを出てすぐのところに席が設けられた。

 闇の側は俺を先頭に、黒狼をはじめとした魔物それぞれの種族の族長が集まった。

 ルクセント側は国王と、その後ろに聖光騎士団の面々が並んでいた。


 会談は、一触即発の雰囲気を醸しながらもそれなりに話が進んでいった。互いに尊重し合う、なんてことにはならなかったが、争いは避ける方向で話をしていった。

「最後に、これは闇の側全体というよりは俺個人の要求なんだが、停戦の前に、ユージ・ラインハルトとの決闘を申し込みたい」

 俺の要求に対して、国王は面食らったように反論した。

「なんのためにだね? 停戦しようというのになぜわざわざ戦う?」

 この国王は、俺がこの世界に来たときから変わっていない。本気で言っているとしたら、記憶がどうかしているか倫理観がどうかしているとしか思えない。

「ご存じのはずでしょう、国王? それさえ飲んでくれれば、私個人はそちらを憎む理由が無くなる」


「しかし……」

「いいでしょう。その決闘、受けます」

 国王を遮って雄二が立ち上がった。

 この決闘は、俺の個人的な復讐ではあるのだが、争いを止めるためにも意味がある。俺が最強の騎士であるユージ・ラインハルトを倒すことで、光の側の戦意を削ぐことができる。


「いいんだな?」

 雄二が問う。お前こそな、と返した。


 俺と雄二が向かい合う。ここは平原。周囲には光も闇もない。完全に五分。ここが決戦の場だ。


 俺は拳を構える。雄二の側に光の精霊が現れ、剣を構える。

 光の剣と闇の拳がぶつかり合う。一撃ごとに、衝撃波によって地面が抉られて行く。

 しかし互角ではない。雄二の方が徐々に後退していた。

 とうとう俺の打撃を受けきれず、雄二が吹っ飛ばされた。雄二は受け身すら取れず地面に落ちた。

「もう終わりか?」

「まさか……」

 雄二は強がっていたものの、息も絶え絶えだった。

「そうか」

 俺は闇の魔力で出来た槍で雄二を取り囲んだ。その数3000。

 それが一斉に雄二に襲い掛かった。

 何本かは剣で弾いた。何本かは鎧で防いだ。残りはどうにもならなかった。

 槍は雄二の体を貫き、左腕を斬り落とした。

 ようやく雄二は倒れた。

「これで俺と同じだな」

 俺は雄二に近付いて見下ろした。これで光の精霊を奪い返せればいいのだが、方法が無かった。


「まだ……だ……」

 雄二はまた立ち上がった。意識はもう無いのだろう。ほとんど力の抜けた動きで剣を構える。

 光の精霊の力と、剣が持つ力が相乗され、際限なく魔力が高まっていく。

「そうだよ、まだだ。これを越えてこそ、俺の目的が果たされる」

 俺も闇の力を高める。俺の力は最早、俺一人の力ではない。これまでの人や魔物全ての思いを受け継いだ力だ。防御は要らない。全てを拳に纏い、光に向かっていく。

 空間が歪むほどの膨大な魔力同士のぶつかり合いの中、全てを拳に込めた闇の力が、光に相殺され、削られていく。

 しかし、それ以上に光の方が削られていた。

 全てを込める。全てを乗せる。

 剣を砕き、鎧を砕き、拳は雄二の体を貫いた。


 やっと雄二は事切れた。

 光の精霊は雄二を見限ったように飛び去っていった。

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