十一話:保つ意地と依頼の話。
遅れてすいません! 学校だるかったと作者はいいわけを行使する。
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燦々(さんさん)と照りつける日の光。他国との輸入輸出に力をいれ、現世で言われるアメリカのように物資が溢れている、白煉瓦と木造建築が印象的な町並みの、『商業都市アケミナ』は、どうやら冬という概念がないらしい。一年中温暖な気候に包まれているらしくて、そのせいか人当たりも暖かで、治安の面から見れば遙か西にある王都とは比べものにならないほど安定している。との事を人々の会話を盗み聞きーーいや勝手に耳に入ってくるから知った。
当初は日本語を話す容姿殺伐な環境に親しめなかったが、慣れとは怖いものだ。なんかもう慣れた。
「ちょっと、聞いていますの?」
さて、眼前に迫っている彼女が大分お怒りのようなので、僕は「ふっ」とキザに笑って周囲を見渡す。
視線が集中している。なんか凄いくらい集めまくっている。対象は僕と目の前の彼女。現在進行形で僕は彼女に問いつめられているのだ。
繁華街の広間の中心で……。
人当たりがいい優しい街の方々は、僕の危険警告を包み込んで離さない。むしろほほえましいものを見るかのように口元を綻ばせていて、僕のスマイルエネルギーを信じられないペースで吸収していた。
演劇をやってたから、たくさんの視線には慣れているはずなんだけどなぁ。
はて? 慣れとは怖いものである。
「ちょっと!」
「はい」
声の振り幅が大きくなった。反射的に返事をしたせいか少しは怒りが治まったようだが安定しない。一息吸って、眉間をしかめている金髪の少女は、あの怪我の余韻を感じさせない凛とした態度でまくしたてる。
「だからわたくしの実力はあんなものではなく、たかだかイノシシに遅れをとるような失態などーー」
つまり、そういうことである。
聴覚ってどうすれば潰れるだろうかと考えている僕に、高級耳栓を用意してくる人がいたらメールからお近づきになりたい。
遅れながら訂正点をあげるとすれば、問い詰めより穴埋めのほうが表現的に遜色ないと思われたりしなかったり。お姉さんにハグを追加されるという条件のもと頂いた一日外出許可の意味がなくなっていたりと。
既に僕、涙目であった。
コートの中は孤独なのね。
「ですから、決してわたくしが未熟という訳ではないということをお分かりしまして?」
「うん、分かった」
穴があったら入りたい。
冬眠のために入りたい。
なんで僕より重傷だった彼女が退院してるのかを小一時間ほどカビの山に愚痴りたい。
まさかの親切の返答が羞恥と二日後の寂寥とは思なかった。スースーするよ、全身が。
今だ納得していないというように鼻を鳴らして、名も知らない(聞く度胸がない)少女はそっぽを向いてから顎に手を当てる。
何かを考えているのだろうか。
とりあえず相変わらずアキレス腱に頼りなさが滲んでいる体で、終わったであろうプライドの維持から遠ざかるべく僕は人波へと踵をかえす。
確か今日はフェリが『モルツォーネ』とか言う店で働いているはずだ。是非、一目でもいいから見に行こう。もしかしたらマジで可愛い制服があるかもしれないし。
僕は幸福の代償に獲得した頬の鈍い痛みを石造りの地面に放置して、スキップを開始した。訂正、ケンケンを開始した。杖の意味がナッシング。周りから見たら今の僕はいったいどのように見られるのだろうか。
「待ちなさい!」
逃亡者ですね、分かりたくありません。
僕の怪我の一切を考慮しない荒々しい手の動きが、僕の肩から伝わる全身のアクションを停止させる。彼女の頭に左右対象になるよう付けられた黒いリボンが震えて見えた。だって僕転んだもん。
背中が痛みを感知するより先に状況を見通すとは、もっと先走った未来を覗かせてくれよ。
フェリが今日の朝、わざわざ僕のために依頼を請けたという報告をしてくれたというのに、何故か殴られることになって、お姉さんに三回もだきつかれたのに、何故か彼女に絡まれて……。
あれ? 目から汗が流れるよ。
「口で言っても分からないようですので、その体に教え込ませてあげますわ!」
人を叩きつけて腰に手を当てる彼女のその動作は、理解し難いほどに決まっている。ローブのせいでお約束の物は見れなかった。
つか叫ぶな、んなこと。
この台詞だけ聞いちゃった子がいたらどうするんだってーー
「ねぇママぁ」
「しっ、見てはいけません」
僕が引きこもればいいんでしたね、そんなこと等の昔から理解していました。おい、ちょっとゴラ。「修羅場」とかふざけたこと言い募ってんじゃねぇ、全くもってその通りです。
フェリ、ごめん。
見に行けないかもしれない。
生けないかもしれない。
「そうですわね、今の時期ならミニューの討伐依頼が殺到しているでしょうし」
ああぁぁぁぁぁ。
屋根裏からこの境遇を呪いたい。
◇◆◇◆◇◆
「帰っていいスか?」
ミニュー。
持ち前の気持ちの切り替えの早さが諦め精神へとジョブチェンジしたことに気付いた僕は、この生物の名を聞いて内心喜んだ。
なんて可愛らしい名前なんだ! きっとウサギの如く内向的な生き物に違いない! 繁殖しすぎて畑を荒らすから駆除するということなんだな!
とか思っていた時期が僕にもありました。
「足が竦んでいましてよ」
鼻を鳴らすな腹が立つ。
だが怒りに回せる余力は残っていない。
町外れ、農業区域のある一角。果物の生産現場がミニューたる群れで溢れかえっていた。目を疑った。ギルドに行く前に様子見としてここに拉致られて来た訳なのだが、この世界のネーミングセンスには脱帽するしかない。ついでに毛根も脱げるかもしれん。
「いかが? 小手比べとして数匹はしとめるつもりなのですけれど」
優雅に背を向けると彼女は、細身の剣の柄で荒れ果てた土を叩きながら微笑んでみせた。しかし視線は僕を弄ぶかのように意地悪らしく、靡くローブが僕の頬に当たってかなりウザい。
「僕に被害が被らないのなら」
「……」
無視ですか。
いざという時は、僕も能力の使用を考えみないが攻撃用の発現が思いついてなかったりする。実はね。
パイロキネシスは効果が薄くて料理の役にしかたたないし、地割れに至っては足止めにしかならない。そこまで深くできないのだ。後は氷の塊を頭上から降らす……これはたった今無効となった。
なぜなら、ミニューは「名前は愛玩、見た目はゴリラ」な末恐ろしい生物なのです。白いゴリラとか雪山に帰れよ、いやマジで。
とか内心批判していると、杉の木サイズの木が折れた。犯人ゴリラ、現世のそれと寸法違わずゴリラなのに、その腕力は素晴らしすぎる。おそらく人間が殴られたらひとたまりもないだろう。
「行きますわ」
「巻き込むなよ?」
「はぁ!」
やはり無視でした。
地を蹴り救いを蹴り駆け出す彼女の頬が緩んでいたのは気のせいではない。この世界って頭こじれてる人多いなぁ、と少し思った。
フェリに出会ってティアナに出会ってお姉さんに出会って、街の噂で聞いた「勇者がこの街にくる」という言葉も含めて、まさかなぁ、と僕こと皐月静紅は嘆息する。
切り伏されていくミニューの群れを見て、まさかなぁ、と頭を捻る。
退院は明日。
現代の女子高生にとっては短いお休みだった。
とゆうわけで一章おわった、かな? なんかものすごい微妙だけど。
ようやく主人公が女ってことも書けたし、物語は軌道にのる。さぁて、どういたぶろうかと作者は睡眠不足な目をなでてみた。
PV一万越えた。ありがとうです!