そのとき俺は、まだ気付いてなかった
ありとあらゆる方向の容姿に喧嘩をふっかけていますが、創作物と思ってご寛恕ください。
俺は前世日本で普通のサラリーマンをしていた。どう死んだとかはよく覚えていないが、社会人だった記憶はある。物心ついた頃から、だんだんと記憶を思い出し、だんだんと子供の俺と記憶や経験が馴染んでいった感じだ。
だから、前世の俺は、俺じゃないけど俺で、俺だけど俺じゃない、でも俺は俺、という感じになっている。
だからこの世界にも普通に馴染んでて、色々疑問はあっても、そういうもん、って感じで流してきたし、よくも悪くも、前世の経験や知識が補って、子供の頃はとても優秀な子供という感じに育った。当然だ。大人の知識があるんだしな。
だから、気付かなかったんだ。
うちの母親、随分丸いな、とは思ってはいたんだよ。でも転生者である俺は、懸命にもそれを口にすることはなかった。親とはいえ、女性の体型に口出ししようものならどんな目に遇うかわからないだろ。ましてや姉など。姉も丸々していた。
育ちの良さそうな手入れの行き届いた風船が、丸々と屋敷の中を転がっていた。
ゴリマッチョな父親は、そんな姉と母を溺愛していた。かわいいかわいいと。この柔らかさは天使のほっぺのようだと。こんなに美しい君と出会えた私は、なんて幸運なんだろうと。
ゴリマッチョで顎の割れた毛深い父は、イケメンゴリラみたいなツラして、フリフリの服を着て、まん丸とした母を演劇のように讃えて愛を囁く。
なんだこの地獄。
前世大人だった俺の理性が顔を出して、子供心に、この世の地獄を知った。
でも、父の愛妻ぶりと、母の夫大好きっぷりを見ていると、お互いが大好きで容姿を褒め合うのは、理解の範疇である。痛々しいのはこの際置いておく。あばたもえくぼというけど、それだろう。仲いい家族で幸せだと思った。
ついでに俺のことも、お父様にそっくりで本当に凜々しくてかっこいいわと、母も姉も大絶賛である。ありがたいことである。イケメン子ゴリラを自認していた俺であるが、こんな顔でも、これだけ愛してくれる両親がいるのだから、それなりに幸せになる道もあるのだろうと、ほっとしたものだ。
そんな仲良し家族の元で育ち、そして家も立派。金持ちっぽい。
そう、俺は大貴族の子供だった。会う子供会う子供、どれも育ちの良さそうな、コロコロした風船だった。
俺も幼少期は太らされていたが、やべぇと気付いて「父上のようになりたいです!」と、鍛えてなんとか、骨太少年ぐらいでおさまっている。体格いいんだよな、俺……。子ゴリラ感マシマシだけど、まん丸子ゴリラとどっちがマシか考えて、イケメン子ゴリラを選ぶことにした。顔の作りが掘り深すぎて、眉毛濃くて、本当にゴリラ。
俺は、泣いて良いだろうか。
だが、父と同じフリフリブラウスは断固拒否した。なんで、この顔にそんなヒラヒラを着せようとするんだよ!!頭おかしいだろう!!
なんで父上、昭和のスター耽美系みたいな方向性なんだよ!!赤い薔薇持って跪いて母上に愛を囁いてんじゃねぇよ!!
毎日、心の中のツッコミが追いつかない。




