【第三話】 勝者の日常
「モバイルバッテリー貸してくれん?」
昼休みの教室。
リナの横にいたギャルが、何でもない感じで聞いた。
「今日さ、朝から動画見すぎてんけど」
リナはスマホから目を離さず、
軽く笑った。
「あー、全然いいよ」
そう言ってから、
少しだけ首をかしげる。
「あ、でももういらんかも」
「え、なんで?」
リナは画面を見たまま、
肩をすくめた。
「今日、全然減らんし」
ギャルたちは、
「なにそれ最強やん」
って笑った。
誰も、気にしていない。
いつも通りの会話。
いつも通りの昼休み。
リナだけが、
ほんの少しだけ満足そうだった。
⸻
俺は、教室の端にいた。
話す相手もいなくて、
机に肘をついてスマホを見ている。
画面は暗い。
なのに、
なぜかずっと気になる。
電源を入れる。
バッテリー表示は、相変わらず出ない。
昨日より、
減りが早い気がした。
でも、証拠はない。
俺の気のせいかもしれない。
スマロバトル。
あの表示が、
まだ頭から離れなかった。
勝ったら、何が起きるのか。
負けたら、何を失うのか。
リナは、何を得たんやろう。
俺は、何を失ったんやろう。
スマホを裏返して、机に置く。
それだけで、
少し落ち着いた。
触らなければ、
何も起きない気がした。
その時だった。
ポケットの中で、
スマホが、ほんの一瞬だけ震えた。
通知は、来ない。
画面も、点かない。
でも、分かる。
また、来る。
俺はスマホを見つめたまま、
小さく息を吐いた。
次は、
いつや。




