表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/69

【22話】いつ始まるねん。

目を開けた瞬間、

一番最初に思ったのは――


思ったより、普通やな。


空は明るい。

でも、眩しすぎない。


色は多いのに、

どれも喧嘩していない。


「……いや、普通ではないか」


自分でツッコむ。



声を出すと、

少し遅れて返ってくる。


反響、というより、

世界が一拍考えてから返事してきた

そんな感じ。


「ここ、どこやねん」


返事は、ない。



地面に手をつく。


冷たい。

ちゃんと冷たい。


石の硬さも、

土の湿り気も、

ごまかしがない。


ゲームっぽくない。

でも夢でもない。


「リアルすぎやろ……」



立ち上がる。


足に、ちゃんと重さがある。


変な浮遊感もない。

ジャンプ力が上がってる感じもない。


(……能力アップ系、なし)


ちょっと安心して、

ちょっとガッカリする。



反射的に、スマホを取り出す。


通信マーク、なし。

時刻表示も、出ない。


アプリは開ける。

でも、どれも反応が遅い。


ガチャ画面を一瞬開きかけて、

すぐ閉じた。


「ちゃうちゃう」


「その前にあるやろ」



周囲を見回す。


道っぽいもの。

建物っぽい影。

遠くで動く、何か。


人かもしれない。

モンスターかもしれない。


区別は、つかない。



しばらく待つ。


ほんまに、

何もせずに待つ。


(……そろそろやろ)


頭の中で、

勝手に予想が始まる。


「チュートリアルを開始します」

「操作方法を確認しますか?」


とか。



来ない。



「……え?」


もう少し待つ。


立ち止まったまま、

キョロキョロする。


UI、なし。

説明、なし。

ポップアップ、なし。



「いやいやいや」


思わず声が出る。


「異世界やろ?」


「普通、最初に説明あるやろ」


「武器とか、職業とか、

 最低限あるやろ」



何も起きない。


風が吹くだけ。


草が揺れるだけ。



頭の奥で、

半年間押し込めていたものが、

ゆっくり浮かんでくる。


ユウタ。

リナ。


あの背中。

あの笑顔。


「ぽしゅ」



(俺、戦いに来たんちゃう)


心の中で、はっきり思う。


(冒険したいとか、

 強くなりたいとか、

 そんなんちゃう)


ただ――


(会いたいかどうか)


それを、

考えに来ただけや。



足元を見る。


道っぽいものが、

一本だけ伸びている。


整ってない。

舗装もされてない。


でも、

進めと言われてる気がする。



恐る恐る、一歩踏み出す。


……何も起きない。


「……あれ?」


もう一歩。


やっぱり、

何も起きない。



「減らへんのかい」


思わず小さく呟く。


「いや、それはそれで怖いけど」



主人公は、立ち止まった。


スマホを見て、

周囲を見て、

もう一度、道を見る。


「説明」


「チュートリアル」


「どれか一個でええから来てくれや……」



世界は、

相変わらず何も言わない。


ただ、

遠くで何かが動いた気配だけが、

確かにあった。



主人公は、息を整える。


「……まだや」


小さく、独り言。


「俺、

 まだ何もしてない」



つづく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ