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疾走者の不変世界(リフレインソング)  作者: 絵之色
第八章 煌めく流星の涙
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225.風邪と新年のあいさつ

「げほ、ごほっ……頭、痛いなぁ」


 リアナさんと一緒の楽しいクリスマスを過ごして一日、俺は体調不良になっていた。

 朝から咳が多くて、清掃員任務のサブ任務の帰りクリフさんから、「今日はもう休みなさい」と言われ、自宅待機を喰らった。


「……ドイツの冬、舐めてたってことかなぁ、げほ、っげほ」


 ベットに入って、冷却シートを頭に張って温かい格好をして寝ているけど、やっぱり仕事しないと落ち着かない……そういえばあの後レストランの人たちから、食事を無料で渡されたんだっけ。

 みんな優しいよなぁ。

 視界がボンヤリしていて、上手く目も開けていられない。


「……大丈夫? 青年」


 あれ? リアナさんの声が聞こえる。

 頬に、冷たい手が当たる。

 ひんやりしてて、気持ちいい。

 俺はその手にそっと触れられて、目蓋をゆっくりと閉じていった。

 ピチャンと水音が聞こえてくる。

 あの夢で聞いた水音より、なんとなく優しく感じた。


「大丈夫?」


 俺は目蓋を開けると、そこには俺の顔を覗き込むリアナさんの顔が度アップに映った。


「リアナ……さん?」

「そうよ、息苦しくない? 服は脱げる?」


 なんで、リアナさんが俺の部屋にいるんだ?

 というか、服……脱げる? え!? 脱ぐ!?

 ガバッと起き上がって、冷却シートを張っていたおでこから、白い布が落ちた。


「な、なんでリアナさんがここに!?」

「青年の様子を見てきてとクリフから頼まれたの」

「そ、そうなんですか……」

「ほら、ベットに戻って。体を拭くから」

「い、いいですよ!! 自分で拭けます!!」

「背中は難しいでしょう?」

「で、でも……!」

「変な意地を張らないで、貴方が拭けるところは貴方に任せるからゆうことを聞きなさい」

「……は、はい」


 俺はリアナさんの言うことに素直に従うことにした。

 リアナさんにシャツを脱がされて、タオルで体を拭いてもらっていた。

 本当は拒否してたけど、拒否何回もしたけども。

 女性に、リアナさんに自分の身体を拭いてもらうって、すっごく恥ずかしい……!!


「青年、前の方は自分で拭く?」

「え!? あ、え、えっと……」


 リアナさんに前の方を拭いてもらうのは、背中を拭いてもらうよりも恥ずかしい気がする。

 でも、好きな人に身体の前を拭いてもらうとか、こういう時を逃したらもう拭いてもらえなくなるんじゃないか!? あ、でもそこまで下心を見せたら、引かれる……?

 いや、引かれる可能性の方が高くないか!? リアナさんだぞ!? 生真面目なリアナさんだぞ!?

 い、一旦落ち着こう。

 冷静になれ、俺。


「……嫌じゃなければ、拭くけれど」

「え!? い、いいんですか!?」

「ええ、問題はないわ……いい?」

「あ、え、えっと」

「もう拭くわよ」


 リアナさんが強硬手段に出て、俺の前の方を拭いて行く。

 ちょっと、緊張のあまりよりリアナさんの持ってるタオルとか、彼女の顔が近くなるのを感じてもう顔が真っ赤になって行くのを感じた。


「青年、顔が赤いわよ」

「え、え、っと……その」


 好きな人の顔面国宝が近くにあって緊張しない馬鹿がどこにいるんですか!?

 と、俺は全力で心の中で叫んだ。

 気が付けば、リアナさんは自分の額を俺の額にコツン、と当てた。


「熱は、ないようね」

「ふ、ふぁい!?」


 り、リアナさん積極的すぎないか!?

 い、いや、確かに恋人レッスンは今日はする予定はなかったけど、なかったけども!!

 リアナさんは俺から離れると、再度確認する。


「大体拭き終えたから、後は着替えられる?」

「あ、は……はい」


 俺は頷くと、そう、と言って彼女は立ち上がった。


「青年、おかゆはテーブルに置いておいたから、後でゆっくり食べて」

「え? あ、はい……ありがとうございました」

「お互い様よ、青年も来年よろしくね」

「は、はい!」


 リアナさんは俺の部屋から出て、消えて行った。

 俺は服を着替えて、リアナさんが用意してくれたおかゆを堪能する。

 とっても美味しくて、でもちょっと気持ちがポカポカして、嬉しかったのだった。



 ◇ ◇ ◇



 青い世界が、目の前に広がる。

 水音がしたたり落ちる音も、繊細なミュージックのようで、落ち着く。

 また、俺はこの世界に来ていた。


「……ここ、は」


 前よりも暗さが目立ってきているのを俺は感じた。

 海の上に広がっている月も星もない夜は、やけに静かだ。

 俺は一歩、踏み出す度に波音が聞こえてくる。

 でも、なぜか泣いている彼女の声が聞こえない。


「……どこにいるんだ?」


 俺は進んで、前に進んで、ひたすら歩いた。

 それでも彼女が現れる様子はない。

 俺は歩いて行くたびに、何かの声が聞こえた。


 ――――戻りなさい。


 それは、恋人の甘さの含んだ聞き慣れた声だ。

 俺はピタッと一度止まり周囲を見る。

 やはり誰もいなくて、俺の思考は混乱した。

 気が付けば、波が両側から襲ってくる。


「――――――うわぁ!!」


 暗い闇色の波は、俺という存在を海底の奥深くまで沈ませた。



 ◇ ◇ ◇



「……っは!!」


 俺はベットから起き上がる。

 汗がびっしょりで、何を見ていたのかまた思い出せなかった。


「……何の夢、見てたんだっけ」


 ピピピ、と電子音。

 俺は慌ててスマホを手に取ると、そこにはリアナさんからだった。

 俺は慌てて通話ボタンをタップして、耳にかける。


「リアナさん、どうかしましたか?」

『青年は、体長はよくなった?』

「あ、はい。リアナさんの看病のおかげです」

『そう、ならよかったわ……安心した』


 リアナさんがホッと息を漏らしたのを聞こえて、かなり心配をかけてしまったのだなと反省した。

 次の時は、ちゃんと自分の部屋で待っていよう。


『それから……あけまして、おめでとう』

「あ、あけましておめでとうございます。リアナさん」


 そういえば、熱を出してから日数とかあんまり覚えてなかったな。

 もう年末、……年末!?


「あれ、もうそんな日でしたっけ!?」

『ええ、貴方はだいぶ疲れているようだったから、言わないでおいたの』

「そ、そうだったんですか……」

『現に、みんなに迷惑が、とか。または一緒に色々過ごしたかったと言ってまた無理をしそうでしょう> 貴方のことだもの、クリフも言っていたわ』


 あ、つまり止められたってこと、なのかな。


「リアナさん、今年もよろしくお願いします」

『ええ、よろしくお願いするわ。それじゃ、青年。私任務があるから切らせてもらうわね』

「はい」


 リアナさんとの通信が終わり、俺はベットに戻った。

 体力を完全に回復させて、仕事にも出られるようにしないと!!


「よし! 休むぞぉ!!」


 翔太は意気込みながら、体調の回復に努めるのであった。

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